もしドラッグ

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」23

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第二十三話:アポ子は組織をつくり替えた。

 帝夏アポ子(ていか あぽこ)が大好きな【土方歳三】は、性格がひねている。

 それはそれは、もう、大変に面倒な性格だ。

 弱点と言ってもいい。

 「薄桜鬼 黎明録」を観ていても、歯がゆいことばかり。いつも、文句を口にしては黙らせられて、グッと拳を握って耐える。そこ、耐えちゃダメだってば。

 それでも、そんな弱点を克服したりはしない

 長所を、最大限に発揮し続けることで、土方歳三は土方歳三としてできることを行い、超一級品、至高の存在として、アポ子の心の中で輝き続けている。

 そう、弱点、弱みなんか、目をつぶるのだ

 経験を積ませるために不得意なことをやらせてみよう、なんてことは、言っちゃだめだ。現有メンバーが全員不得意なことだとわかっているのなら、事業化しないとか、外注するとか、そういう、素敵なフォローの判断をするのが、偉い人の仕事。誰も花のことを知らないし花なんか興味もないというスタッフたちに、花屋の現場を任せてはいけない。アニメイトの店員が漫画にもアニメにも興味のない漁師さんだったりしたら、結構大変だと思うが、麻生太郎の一日店長は大歓迎だ。一日中、ゴルゴ13とムダヅモなき改革について語って欲しい。

 うわ。また脱線した。

 何の話だっけ。えーと。

 土方歳三の話だ。

 土方歳三が何をしたかというと、一言でいえば、組織をつくりかえた

 まず、壬生浪士隊において、局長と筆頭局長による二派閥三頭体制をつくった。

 そのうちの一頭を減らして、さらにもう一頭も減らして、一派閥。副長制度をつくり、一派閥三頭体制。別派閥の四頭目がきたら、一頭減らされて、また二派閥三頭体制。別派閥が分離して、抗争の結果、一派閥二頭体制。一頭減って、実質的に一派閥一頭体制。

 内部の派閥を、ひとつの目的に対して邁進する一派閥にまとめようとする努力が、土方歳三のやっていたこと…だと思う。ちょっと違うような気もするけれど、とりあえず、そういうことだとしておいて、それはピーターの考える組織作りとしてどうかということを考えてみる。

 ピーターの示す、組織設計の基本は、「何のための組織か」という出発点から組織を組み立てることだ

 だから、「何のための組織か」が変更されるたびに、土方歳三は、組織をつくりかえている。

 「とりあえず会津藩にひろってもらうための組織」のうちは雑多な構成でも人数集めと家名と人脈に重点をおいた組織にしていた。

 「市中見廻りの治安組織」としては派閥を一本化しつつ諜報部門を独立して幹部直轄化。

 池田屋以降は「軍隊:独立遊撃隊」としての組織に編成していった。

 軍隊と言っても当初は「天皇陛下の居城を守る軍隊」。

 で、途中から「徳川家を守る軍隊」になったので、その時も編成が変わっている。

 もちろん、そういった変遷の節目節目では、多くの隊士が「ええっ? そんな目的の組織だって、きいてないよ!」という話になり、逃げ出そうとするわけで…。

 ピーターの言うとおり、「何のための組織か」を基点に組織設計をするまでは良かったのに、そのおおもととなっている「目的」がコロコロコロコロコロコロコロコロと変わるから、うまくいかない。つまり、将来ビジョンが示されないままに、現在のニーズだけで目的をつくる組織。昨日までiPhoneを専売していたのに、今日からいきなりアンドロイド専売になりますと言いきっちゃうような組織。昨日まで広島焼きの店だったのに、今日からもんじゃ焼きの店になり、明日はクレープ屋かもしれない組織。

「違うっ。土方さんは、最初から、近藤さんを大名にするという大きな目的のために動いていたんだーっ! だから、全然ブレてないんだーっ!」

 と、自分で組み立てたストーリーに水を差すアポ子。

 でも、それはあくまでも個人の目標で、組織としての目標ではない。

 「近藤さんを大名にするための組織です」と、最初から掲げていれば、試衛館一派以外は誰もついてこなかったかもしれないけれど。それは、まあ、組織の目的として掲げるにあたっては実に利己的なものなので…。ほら、あれ。それって、「近藤さんを閣僚にする会」みたいな組織だしね。しかも、年齢的に、大学生とか高校生が運営する組織。近藤さんがアイドル歌手とかイケメンライダーとかアナウンサーとかの知名度を持っていれば別だけれど、田舎のカラオケ教室の講師くらいの知名度である近藤さんを大名レースに参加させるのは、相当無謀な行為デスヨ。

 無謀なりに、近藤さんを大名にする計画を推し進めた結果として、目的は一瞬だけ達成したものの、組織はボロボロ

 つまり、土方歳三の組織設計は、組織の継続を前提としない組織設計

 ナナミがタマ子会長を国会議員とか勲章受章者とかにしようと画策していて、タマ子会長がのし上がるための捨て駒として全会員が存在するかのように組織をつくりかえる…といった怖い想像が現実化したら、新撰組のような流れで組織が潰れる気がする。それはそれで美しいのかなぁ…いやいや、土方歳三のようなカッコイイ生き様と一緒にするのは失礼だ。

 とにかく組織設計は、「何のために」から

 【薬剤師会の目的】が明確であれば、足りない部門、いらない部門がわかるはず。

「…薬剤師会の目的って、なんだっけ」

 【本会は、国民の厚生福祉の増進に寄与するため、薬剤師の倫理的及び学術的水準を高め、薬学及び薬業の進歩発展を図ることを目的とする】(旧定款より)

 1.薬剤師の倫理的水準を高める。

 2.薬剤師の学術的水準を高める。

 3.薬学の進歩発展を図る。

 4.薬業の進歩発展を図る。

 なんだか、「指導」して「導く」かのような印象。

 でも、「薬局のための組織」ではなく、「薬剤師のための組織」なのだから、「指導する」のも「導く」のも、本来の姿ではない。そういう気持ちでやっていたら、きっと、「指導が必要なのは役員のほうじゃなイカ」と、海からの侵略者から指摘される日がくるだろう。

 「理想的な姿を背中でみせ、仕事に没頭できる環境をつくる」という、憧れのリーダーであり、優秀なサポート役でもある存在。父であり、母である存在。大学が港なら、薬剤師会は海だ。様々な環境の漁場を網羅しつつ、まっとうな漁師が乗った船を守り、不埒な船を沈める、厳しく優しい大海。あ、船って、「薬局」じゃなくて、「薬剤師」ね。

 シンプルに言えば、「薬剤師が、心地よく仕事をできるようにすること」が大事。

 薬剤師が心地よく仕事をすれば、自然と、薬剤師にかかわる人々も最高級の仕事っぷりによって、幸せになる。みんなハッピー。

「…あれ? なんか、目的を、逸脱しているよーな気がするけど…」

 いいのかな。

 しばし、考える。

「これでいいのだ! なぜなら、タマ子会長が、薬舗主の会からオール薬剤師の会にするって言ってたから! 構成メンバーが変わったのだから、当然、目的も変わって、組織設計も変わるのが当たり前! …ということにしよう、うん!」

 タマ子会長のせいにして、話をすすめる。勝手に、組織設計を変え始める。

「まずは、会長室を潰すところから始めよう!」

 会長の耳に情報を入れる人間が、会長室に入れる人間だけに偏るのは、よくない。

 また、会長の言葉を聞ける人間が、会長室に入れる人間だけに偏るのも、よくない。

 会長は、正々堂々としているべきだ。

 会長は、秘密の会合なんかやってはダメだ。

 幕府転覆の秘密が隠された天地人の巻物の争奪戦が繰り広げられるような忍者でスパイな職能団体なんて、なんだか嫌だ。

 タマ子会長の事だから、別に部屋を取り上げられても、どこかの料亭で秘密会合を開きかねないわけだが、少なくとも薬剤師会の事務局とは無関係な場所でやってもらえるだけマシだろう。いい年したオトナのプライベートのことまで構ってられない。

 事務局員の集うフロアの中央の小さな円卓を、会長の基本的な居場所にした。

 役員の机を廃止。全部円卓で済ませる。役員が外出するとすぐわかる。基本的な連絡は全部電子化して記録に残す。コミュニケーションのために、役員のほうから担当部署のメンバーの机の間をうろうろさせることにした。いつなんどき役員が変わっても対応できる組織への、第一歩。

「あのー、役員の人がウロウロしてると、仕事の邪魔なんですけどー」

 優秀な職員から、苦情が来た。ごめんなさい。役員に、偉そうに監視っぽくうろつくなと、よく言って聞かせときますから。コミュニケーションが目的なのだから、監視は厳禁。役員は、基本的に偉くないんだから、むしろ積極的にお茶菓子を用意するように。

 ほら、ピーターも言っているし。

 「居心地の良い場所でこそ、真の実力を発揮できる」ってね。

   ☆

今回の言葉「円卓の騎士が30人もいた」

 役員の数が最大どの程度なのかは、大事なポイント。30人をこえる大所帯だと、円卓の広さはどのくらいか。ひとりあたり1mほどのスペースをとるとして、30人で円周30m。ということは、直径9.54mの円を描くような机が必要だ。議決は半分いればいいのだから、先着順で16名までしか座れない仕様でいいんじゃなイカ。先着順だから、下手すると会長が座れないけど、別に問題ない。小さな円卓を持ち寄って座ると、省スペースでの会合が可能なので、そっち推奨。

  ☆

たぶん、続かない。

※今回のネタは、一年前に書いてほっといたネタを、「薄桜鬼 黎明録」アニメ化記念的な形に一部修正したものです。

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第二十二話:アポ子はMMR的に想定外について考えた。

「な…なんだってーっ!」

 アポ子驚愕。想定外の事態が起こってしまった。

 アポ子が大好きな新撰組乙女ゲー、薄桜鬼の新作発売が延期。

 なんという想定外。

「ク…ククククク…そうか…そういうことだったのか…」

 想定外すぎて、頭のネジが外れた。

「つまり…最初から…ピーターは全て、予言していたんだーっ!」

 想定外の事態がおこったときにはどうしたらいいのか、ノストラダムス…じゃない、ピーターに訊いてみよう。

 ピーターは、「リスクの大小を性格で判断しろ」と言っている。

 要するに、

1.負うべきリスク

2.負えるリスク

3.負えないリスク

4.負わないリスク

 の、四つの性格。

 仕事をすると必ず出てくるリスク、失敗しても損害が少ないリスクは、どんどん背負っちゃえ。背負わずに、時間が解決すると思いこむこと自体が時間とともに負えないリスクになることもある。(例:タマ子会長が過去に実務実習関連で答弁した内容)

 負えないリスクは、無謀な挑戦。これはダメだ。

「無謀な挑戦では、人類は全滅する! だがあきらめない! 負えないリスクを避ける! それが、人類にできる唯一の戦い方なんだっ!」

 想定外の事態が起こったときは、とにかく、負えないリスク以外は、やったほうがいいということらしい。

「そうだ…これが、人類を救う唯一の方法なのかもしれないっ」

 そのうえで、ピーターは、リーダーに『事実をありのままに把握する』『客観的な情報を公開・共有する』ことを求める。できているだろうか。

 できているよ、きっと。

「だめだーっ! 我々は、とんでもない考え違いをしていたんだーっ!」

 全然できてませんでした。これまでは、客観的情報の公開・共有といいつつ、公共機関の公開情報をそのまんま流していただけでした

「だが、歴史の節目において、情報操作は必ず行われているんだ! これには…なにか途方もない、もっと巨大な力を感じる…」

 さらに、リーダーは、事態収拾後にその椅子(地位やらなんやら)を失っても、やらねばならないことがあるのだという。

 タマ子会長は、椅子を失ってまで、後進のための礎になれるだろうか。

「…それはわからない…ただイヤな予感がするんだ・・・そのことを究明しなければ人類が重大なミスを犯すような…」

 思わずつぶやく。呟きの内容は電波だが。

 リスクから、逃げて逃げて逃げまくってきたのが、タマ子会長の処世術。

 ピーターは「リーダーは真摯さがあれば良い!」と力強く言ってのけちゃったけれど、要は『そいつがいると組織が堕落する』なら、真摯さがないとみなしていいということ。

 ピーターの想定する『堕落をもたらす人』とは、こんな感じ。

1.約束を守らない

2.ねたむ

3.失敗を隠蔽

4.好き嫌いで評価を変える

5.欠点を改善しない

「こ…これはっ。ここまでくると、偶然ではない…もはや『必然』!」

 約束を守らないことや失敗を隠蔽することでは定評のあるタマ子会長。

「何もかも…何もかも遅すぎたんだ…」

 アポ子の頭の中で、さまざまなものがつながった。

「くっ…。か…神の言葉か…。時空を超えて、あなたは一体何度我々の前に立ちはだかってくるのか! ピーター・ドラッカー!」

 トップ周辺が『組織の堕落をもたらすもの』であっては、いくら「下からマネジメント」を実行してみても、無駄かもしれない。組織の滅亡はさけられないのか。

「いや…即断は禁物だ。何者かが、我々の活動を妨害しようとしているのかもしれない! どちらにしろ机上の空論…本当のところはわからない!」

 なんだか変な方向で盛り上がるアポ子。

「そうだ! だからこそ我々は、ハルマゲドンを信じて世を悲観してはいけないんだっ! それこそがやつらの思うつぼ! 組織を崩壊させてはいけないんだ!!!」

 【やつら】って誰?

「そうだ、人間の可能性は無限なんだ!!!」

 無限だから、タマ子会長やナナミも、なんかスゴイ能力を発揮してくれるに違いない。

 無限だから、乙女ゲーの新作も、そのうち発売されるに違いない。

 自分で自分を洗脳して、アポ子はとりあえずの「想定外」の衝撃を和らげた。

 運悪く事務所に寄ったばかりに、その様子を間近で見てしまった某国会議員に対して、

「まだわからないのかっ! ここに来た目的がーっ!!!」

 などとMMR脳のままで口走ってしまい、しばらく飲み屋で隣の席に座らせてもらえなくなるのは、また別の話。

(※良い子は、想定外の事が起こっても、MMRっぽいセリフは使わないようにしましょう☆ MMRがわからない方は、とりあえずググる)

  ☆

今回の言葉「『絶体絶命都市4』が、震災の影響で発売中止になったような衝撃」

 『絶体絶命都市』は、すでに発売されているシリーズ全部が、完全廃盤決定。人災の怖さ、情報隠蔽による被害拡大、災害利権、科学技術の過信への警鐘、氾濫した水や津波の恐ろしさ、火災、停電、雨、想定外の事態を切り抜ける知恵、どんなアイテムが必要なのかの体感、災害時でもできるかぎりのレスキューに励む人々の姿、助け合い、歌、ジャーナリズム。そして、少しのエロスと、必要以上にちりばめられたユーモア。災害テーマのゲームの最高峰として、全国の小学生に体験してほしい名作、過去の悲劇を風化させない良質な作品が、震災のために「世に出ない」という悲劇。グランゼーラのスタッフの方たちに、いまこそ、災害医療ゲーム制作にチャレンジしてほしい♪

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「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第二十一話:アポ子は全力で謝った

 帝夏アポ子は、リーダーたちをマネジメントするために、リーダーたちが普段どういった仕事ぶりをみせているのかを見聞することにした。

 といっても、24時間ついて回るのは面倒だったので、マイク付きのネクタイピンを秋葉原で購入して、こっそり役員にくっつけておくことにした。(※盗聴は犯罪です)

 なにかマズイ話でもして弱みを握るようなことがあったら面倒だなぁ…と変な心配をしていたが、そういった話はあってもスルー。

 三日分の音声を三倍速かつジャンプ連続活用で聴いてみた結果。

「ピ…ピーターの教え通りの問題点が…おそるべし、ピーター…」

 驚愕するアポ子with同じ部署の面々。

 ピーターのいう問題点、つまり「リーダーがしてはならないこと」とは?!

 それはっ!

 説明しないこと、である!

「正直、すまんっ!」

 同じ部署のスタッフに、いきなり謝るアポ子。

 アポ子自身も、そんなにあれこれ細かく説明するタイプではない。

 その反省を込めて謝ってみたが、周囲の半分はポカーンとした顔をしている。

 しまった。

 説明せずに謝ってしまった。

 芸人的には非常につらい環境だ。

 あれだ。『新ネタないんですか、新ネタ!』と話を振る嫌な司会者にのせられて一発ギャグをやってしまった感覚だ。

 「芸の流れの中で披露する新ネタ」と「なんの前振りもなく披露する新ネタ」との間のギャップ。

 説明は、必要なのだ。

 「正直、すまん」は、プロレスラー佐々木健介が藤田戦前にIWGPのベルトを失って…という説明というか、前知識が必要な謝り方なのだ。

 でも、説明してからネタをやるのもつらい。

 「今からやるネタはこれこれこういうことを踏まえてやりますから、面白いので笑ってくださいね」、と説明してからネタを見せるのは、地獄の環境だ。

 「嗚呼!花の応援団」を知らない人に、クエックエックエッと言ってみたらチョコボールですかと訊かれる。

 「男旗」を知らない人に、ピンホールは漢の魂だと言ってみたら古いカメラが好きなんですかと訊かれる。

 「刃牙」を知らない人に、オーガが最強生物だと言ってみたらSONYは惜しい人を亡くしたよねと返される。

 「マカロニほうれん荘」を知らない人に、キンドーさんとトシちゃんと総司君が住んでいた場所の話をしたら、それは八木さんと前川さんの家で、きんどーさんじゃなくてコンドウさんだから、と訂正される。

 観客が元ネタを知っているとは限らない。スタッフが社会情勢を把握しているとは限らない。会議のメンバーが資料を読んできているとは限らない。…最後のは、どうかと思うが。

 情報共有をしないこと、説明をしないことは、リーダーがやってはいけないことなのだ。ピーターが言うには。

 『なぜ自分がこの決定をしたのか(これからみんなにこの行動を求めるのか)がわかる説明』なしに、ネタ…じゃない、「決めたこと」だけを披露してはいけないのだ。

 仕方がないので、説明を始める。

「某役員さんの日常は、説明抜きで『決定したこと』を伝えることだけでなりたっていることがわかりましたねー。特に外部の審議会において、その傾向が強いようです。議事録によると総会においても同様です。要するに、説明が必要とされる、普段交流のない相手に対しては説明しない、という、相手が理解できない行動を繰り返していることになります。何度交渉しても何度会議を開いても物事が進展しない理由が、なんとなくわかりましたねー。では、それを踏まえて…」

 スタッフを見まわすアポ子。「某役員さんの【日常】」と言っているその口が、「背中に巨大なネジをつけた女子高生と、はかせ」から京都アニメーション経由で「となりの801ちゃん」につなげたがっているが、そんな口を力技で上手投げ。

 どうにかこうにか、家庭教師のお姉さん的な口調で、話を続ける。

「私たちのお仕事は、足りない説明部分をわかりやすく構築補完して、説明が必要とされる場所に前もって届けておくことです。リーダーが説明のできる人間だったら楽ですけれど、そうではないことのほうが多いと想定して活動するのが、リスク回避、裏方の真骨頂です。裏方パワーで、リーダーを盛りたてていこーっ。リーダーの分担する本当の仕事、『最終決断』に専念できる環境を作りましょうーっ」

 要するに、新番組を見せる前に、事前に知っていたほうがネタがしみこむような番宣をやりつつ、リサーチもしておくということ

 プチ決起集会気分で言ってみたら、なんだか好感触だったので…。

 【下から、リーダーを変えていく】作戦にうつる。

 アポ子は、少し根回しをしてから、委員会のやり方を変えてみた。

 社会実験。

 委員会の、委員集合時間と役員参加時間を、一時間半ほど、ずらす。

 たとえば、7時からの会議なら、役員は8時30分になるまで会場に入れない。理事レベルの役員も入れない。全部、委員たちと事務局に任せる。

 先に集合した委員は、資料の詳細説明質疑と議論を行い、役員以外がつとめる議長の進行で、案件選択だけを残して、まとめ。

 役員は、最終案選択を行うのみ。リテイク不可。従って、役員は、委員会に仕事を丸投げする際にはコンセプトをしっかりと説明するプレゼンを要し、そのプレゼンの前提として、常務会で「プレゼン内容の承認」を得ておかなければ委員会に指示できないという仕組み。

 まずコンセプト。それに大枠をつける「プレゼン」。

 それらを、「統率する側」から提示させる。

 テーマだけ並べて「さあ、あれこれ考えてよ」なんてことを言う役割は排除。

 司会進行役も、役員には、やらせはしない。やらせはしない。(大事なので二回言う)

 会長が会議の議長や司会進行をするような組織は腐っていく。

 大枠を決め、最終案にGOサイン(または理路整然としたNG)を出すのが、エライ人の仕事、役割だ。

 『薬剤師の将来ビジョンをテーマにして、委員会でもんで、提出してよ』なんていうセリフを平然と言うようなリーダーは、さっさと田舎に帰れと言いたいところだが、ピーターに言わせれば、「全員がリーダーシップをとる」ことこそが大事なので、現在のリーダーをガンガン『マネジメント』して、思考回路にイノベーションを起こすことにした。

 で、リーダーの考え方を変え、リーダーに「プレゼン」をさせるためのマネジメントとして、委員会のやり方を変えてみたわけだ。

 あとは、役員会の内容を変える。役員会は、報告会にしない。

 報告は、報告書を読むこと。会議に参加しないと状況把握ができないのでは、準備不足。よい案はでてこない。

 役員会は、プレゼン会でいい。「このコンセプトで、委員会に、こういうことを検討してもらう。どうだい、素敵だろう!」という提案に対して、「コンセプトがダメすぎる」とか「ナイスコンセプトだ!」とか言っていく会。会の目的に沿った、明快なコンセプトであれば良いので、詳細は委員会で! で済む。

 ところが、委員会に回す前に、大枠のコンセプトを提示しないくせに、細かい枝葉を決めてからまわしたがる役員がいる。発想の邪魔になる細かい枝葉を「説明」するために、会議に参加したがる役員が。

「俺が会議に参加してないじゃん! なんだよ、これっ」

 ナナミが、ぶーたれた。会議の場所にいても、参加しないで腕組んで寝ているか、どうでもいい基礎的な話を混ぜ返して無知をひけらかすか、枝葉を気にして本質を潰すか、人の失態を笑うくらいしかやってないのに。日薬(ひのやく)雑誌の表紙の写真が2ミリ上に印刷されたからといって発行日を二日遅らせて印刷製本をやり直させたという逸話があってもおかしくない。(※この物語はフィクションです)

「しかも、会議の結論が、『求められているコンセプトが全く分からないので、三つの案を併記した。最終的に担当副会長が決め、その責任において実行する予定』って。どの案でもいいけど、俺、常務会で通す自信がないんだけど」

 へたれ副会長のナナミらしい、誰の顔色をうかがっているのかがわかりやすいセリフ。

 このセリフは、予定通りだ。

 よし、ここからは、ずっとアポ子のターンだ。

「じゃあ、次回からは、先に常務会でコンセプトの明確なプレゼンを行って、常務会承認をとってから、委員会に話をふればいいじゃん。あんたがコンセプトを提示しないから、委員会の委員があんたの代わりに知恵を絞ったの。わかる? 明確なコンセプトを出せないあんたが会議に参加していても、会議は空転するの。出てきた案が三つもあるのに、どの案でもいいなんてありえる? 常務会っていうのは戦場でしょ! プレゼンしないってことは、一回も撃ち返さないってことよ。バッターボックスに入る権利っていう、誰もが羨むプラチナチケットをもっているのに、いざボックスに入ったら一ミリもバットを動かさないで、期待したファンの前で、平気でへらへら笑っていられるってことよ。全国民の期待を背負ったWBCの決勝でイチローがそういう無気力なことしたらどうなるか、想像できるでしょ? プレゼンしなさい。全力でバットを振りなさいっ。そしたら、ベンチだって、全力であんたを応援するんだからねっ」

 全力。ちょっと言い過ぎた気もするが、まあ、そのくらいのことを言っておかないと、ナナミの超合金ニューZ製の装甲は破れない。これまでは全力じゃなかったのかというツッコミをナナミが思いつく前に、もう少したたみかけておこう。

「あんた、もしかして、次の会長の座とか、狙ってないでしょうね?」

「な、な、なにを、俺は、タマコ会長のために頑張る所存っ。タマコ会長がやりなさいと言ってくれれば、会長でもなんでも、当然やり遂げるっ

 やる気満々だった。

「それ最悪だから。あんたは、副会長としての有能さを最大限に発揮してから、潔くタマコ会長と一緒に花道をいきなさい。バージンロードという名の花道をねっ!」

「ば…バージンロード…!」

「花道を一緒に歩いてくれるかどうかは、あんたの、これからの、常務会での男らしい態度にかかっていると言っても過言ではない! そういうことだーっ!」

「そ…そうかーっ! そういうことかーっ!」

 この一瞬で、ナナミが次期会長になる芽は完全に摘み取られた。

 失うものがないのだから、というか地位を失ったほうが楽しい毎日が待っているような気になっているのだから、これからは、バンバン常務会の場で戦ってくれることだろう。

 ナンバー2の側近を、後継者にしないこと。

 これが、ピーターがあちこちで言っている「ナンバー2がトップを引き継ぐことで組織が堕落した例」への対策。

 タマコ会長とナナミの相性は、どんな占いをやっても120%好相性のラブラブカップルという診断が出るのだが、タマコ会長が去った後の組織にとっては、そんなことは心底どうでもいい話。

 審議会に、挨拶以外の積極的な意見を発言してフル参加する大臣はいない。にもかかわらず、大臣は、答申を基にした政策について、委員会ではガンガン答弁できる。日薬のエライ人たちも、委員会レベルの会議にはノータッチでいこう。少なくとも、ナナミのようなタイプの副会長には、会議の時間中、他にやってもらうべきことがたくさんあるのだ。そっちのほうが大事に決まっている。

 ナナミの潜在能力を引き出すのだ。

 ピーターも、人の可能性を引き出せ、と言っている。育てろ、じゃなくて、可能性を引き出せば、それでいいらしい。とにかく少なくとも模範的な振る舞いくらいはさせたいけれど、タマ子会長とナナミに、それを期待するのは無理だよピーター…。

  ☆

 つづく

  ☆

今回の言葉『これは、説明という名のアジテーションである』

 扇動というと大げさ。でも、心を揺り動かして、行動を変える力があるような説明は、確かにある。一枚の写真を前にして、「これは、子供の写真です。一枚500円で、買ってください」という説明と、「これは、今朝写した、国家に捨てられた子供の写真です。隣の部屋に保護しました。ハンバーガーが食べたいと言っています。たべさせてあげたいですよね? …一枚500円で、買ってください」という説明と。

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「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第二十話:アポ子は全体の総和を大きくすることを考えた

 自分の部署が楽しい。

 他の部署は真面目で、そのままでもよさそう。

「よし、ほっておこう!」

 …あれ? これでいいのかな。

 帝夏アポ子が(前回)疑問に思ったこと。

 その答が、ここにある。謎の黄色い本の中に。

 ピーターの言葉を借りるなら

『リーダーが第一に考えることは、「全体最適」である!』

 自分が重視する分野だけに特化させる「部分最適」ではなく、「全体最適」を目指せと、ピーターは言う。

 要は、川島海荷さんが飛びぬけているけど佐武宇綺ことうっきーのほうが気になる9nine(合唱ダンス)よりも、ももクロZ(アクロバット芸人)やアイドリング!(青汁と赤タイツ)を目指せということか。それともメンバーを覚える気に全くならない制服向上委員会(脱原発の歌)までいかないとダメなのか。

 ピーターは『全体最適』の例として、バックグラウンドにこだわらないことを挙げている。

 バックグラウンドにこだわるのは『部分最適』なのだそうだ。

 ということは、所属プロダクションがバラバラのほうがいいということか。

 エイベックスのみのスーパー☆ガールズとか、765プロダクションだけのアイドル@マスターとかは、アイドル界全体からみたら部分最適で、全体の総和には役立っていないのだろうか。

 アポ子は、部署リーダーである副会長のナナミが担当する事業の一部を改革中。ナナミ担当の事業にかかわってきたメンバーだけであれこれ行うことは、全体の総和を増やすことに貢献していない…?

「うちの部署だけ楽しいということはっ、部分最適の追求になってるってことだーっ」

 まあ、もともと他の部署に多くの経営資源が投資されていて、ナナミの担当部署だけ極端に資源不足だった可能性もあるので、言いきってしまうのは、少し早い。

 トータルバランス。

 打開策は、ある。

 キーワードは、「意見交換」。

 相乗効果は、意見交換を通して生まれるのだと、ピーターが言っている。

 勤務時間を避ければ、いくらでも意見交換の場はつくれる。

 場を作ったら、次は、どうするのか。

 ミッション・インポッシブルだ。

 いや、インポッシブルはいらない。ミッションだ。

 任務・使命・目的。せっかく集まるのだから、ネタが大事。

 このときのネタには、新鮮さは必要ない。

 必要なのは、ニーズを基にした、『永遠に解けないパズル』。

 業務拡大、新しい隙間を作って埋める。

 正しい解答のない課題であり、かつ、課題に様々なアプローチができるものなら、ミッション設定はバッチリだ。

 「怪盗ルパンとシャーロックホームズが対決するならどんな展開がいい?」

 「パーティーで、もっともモテる方法とは?」

 「土方さんと原田さん、どっちをとる?」

 どれも難問だ。永遠に解けないパズルだ。

 しかし、それだけではだめなのだ。

 ピーターは、「良いミッション」にもこだわる。

1.「できる」こと
2.社会に「よい」こと

 この二つが入っていないミッションは、ダメなのだ。

 まとめると、

 『採算が合っていて、自分より優れた適任者がいないときに、どの程度開拓するのかというゴールを見据えながらつくるのが、ミッションである』

 …ミッションをつくるのって、面倒だ。

 世の中には、自分よりも優れた適任者が大盛り山盛りでいるのだから、めったなことではミッションをつくる状況にはならないはずなのだが、「適任者」を決めるのは、「その人の肩書」であることは、おさえておきたい。

 自分が「長」とつく肩書きの持ち主になったときに、「自分が最も優れた適任者である」ことを、まわりが認識するのだ。まわりは「誰が最も優れた適任者であるのか」を知っているので、頼まないとミッションをつくってくれない。

 面倒でも、やるしかない。

 「長」は、ミッション作成とセット販売なのだ。

 予算内で、社会の役に立つ仕事を作り出す。

 家庭の長たる主婦は庭を手入れし花を育てて道ゆく人を楽しませようと工夫する。社長は会社の維持と社会貢献のバランスを模索する。会長はハマちゃんと釣りに行く。参謀長は特訓を開始する。副長は隊内の規律維持に必死になる。総長は羅刹隊を操る。航海班長はワープの準備。工場長はアステロイドリングにエネルギー吸収装置をセット。獄長はカサンドラ伝説、コック長はセガール拳伝説。

 じゃあ、「長」がつかない肩書きの方たちはどうなのか。審議官,監理官,参事,主幹,主査、主任、理事。彼ら彼女らは、ミッションをつくらないのか。つくってないような印象しかないのはなんでだろう。「長」のつくったミッションを引き受けて、その実現にむけて頑張る人というイメージなら湧くのだけれど。

 まあ、とにかく、最初の疑問は、なんとなく解決しそうだ。

 「全体最適実現のために意見交換を行い、その際にミッションを提示して目的の統一をはかるほうが、部分最適(あるいは部分劣化)のままよりはピーターっぽい」という結論。

 あとは、各部署のリーダーを、どうマネジメントするか。そして、ゴールの設定を徹底させるか。

 黄色い本を片手に、アポ子はセカンドステージのゴングを鳴らすのであった。

  ☆

つづくかもしれない

  ☆

今回の言葉
 「永遠に解けないパズル」

 永遠のパズルといえば橘いずみで、橘いずみといえばポンキッキのお姉さんで「とんがり体操」の人で、とんがり体操といえば振付が鳥獣戯画で、鳥獣戯画といえばマンガ「だぶるじぇい」で、「だぶるじぇい」といえば仮面ライダーW&J(ジャッジ)で、Jといえばマッハパンチで、マッハパンチといえばサワムラーで、サワムラーといえば浅見光彦かセクスィー部長で、セクシィー部長といえば島耕作で、島耕作といえば…

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もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら19

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十九話:アポ子は過去の薬剤師会とドラッカーの本を捨てた

 それなりに月日が流れた。たぶん三カ月くらい。

 日本薬剤師会(ひのもとやくざいしかい)の専務理事を目指して、副会長のナナミから仕事の四分の一ほどを強奪した(「いえいえ、包括的指示のもとで動いているだけですから」、と言い訳するのは忘れない)帝夏アポ子は、ナナミの担当委員会の委員をハロプロばりの勘シャッフルしたり、委員会合同の一点突破プロジェクトチームをつくったり、美味しいスイーツの店を多数開拓したりして、お茶会(マーケティングだと言い張りたい)の機会を増やしまくっていた。

 で、いろいろやっているうちに、ついに、あのおばか計画が始まってしまった。

 そう、あれ。

 日薬雑誌熱血化計画。

 その一環として、薬史学会とのコラボ、薬剤師歴史SF小説の連載がスタート。

 なんか「JIN」とか流行ってたし。SFは、藤子不二雄先生いわく『すこし、ふしぎ』の略。

 挿絵には婦女子受けするプロ漫画家を起用。

 超イケメンの明治男たちが活躍する、愛と友情と戦いの韓流ドラマ仕立て。

 長与専斎が主人公で息子の又郎に主人公交代する予定…っていうライトノベルは、世界初。

 キャッチコピーは「恋も薬も匙加減」。

 松本良順先生がでてくるので、当然新撰組のネタもあり。

 マッドサイエンティストの爺様に謎の物質を投与される幼少期だけでもはじけた人生を送っている専斎。エピソードには事欠かない。

 鎌倉の海でふんどし一丁で海が好き!と宣言する長与専斎の挿絵が腐女子のハートをわしづかみ(予定)。

 掲載場所は、日薬雑誌の後ろ側。

 かつてはカラーの企業CMと編集後記で埋まっていて実質的に誰も読んでいなかったあたりに、縦書き三段組み。後ろから読む。新聞は四コマ漫画から読むという人たちは読みやすい配置。

 最終頁(裏表紙)の広告欄に掲載される薬とリンクさせて、毎回「この分野で○○という薬が○○薬品から発売されるまで、120年待たねばならなかった」といった記述が出てくる仕様。

 縦書き三段組みがOKになったので、いずれはマンガ掲載も可能だが、そこは言わぬが花だろう。

 あまりアホな記事ばかり増やすと怒られそうなので、スポファさんが涎を垂らす内容をめざして、『薬剤師がつくる【安全な少年野球】』という記事も始めてみた。

 物理学者・数学者・関節と筋肉の専門家・休息の専門家・野球部顧問・薬剤師の六人チームで、安全性をとことん追求した科学的体育系部活動を研究する。

 初回は「相手に優しいスライディングとタッチング」。

 お互いの立ち位置などから判断して、最適な「安全な行動」を作ってみる。…よく考えたらこれもかなりアホな記事かもしれないが、そこは大まじめに、『体を相手に対して○度傾けると運動方向に対して○○だから…』的な難解物理議論を図解。

 薬屋的なプラスアルファとして『このとき○○のような薬を使用していたら…』というコラムを入れて、ドーピング薬への対策が【選手の体を守るために】行われていることを視覚化。

 簡単なネタには食いつかない硬派な読者のために、『超上級者向け誌上講座』もはじめてみた。

 研究の最前線、薬剤師の50人に1人くらいしか理解できないような話を、専門用語の嵐とともに掲載。毎回2例。

 ひとつは「ものすごく細かすぎて伝わらない薬物作用機序の話」。

 もうひとつは「何の役に立つのか教えて欲しい、ウチでやってる超難しい研究の、すべりやすい話」。

 誌上だけでは「わけわからん」と言われそうなので、書き手には日薬会員用Web上においてコーナーをつくって、自由に喋りつくしてもらうことにした。会員専用なので、読んだかどうかカウント可能。読後に確認用ミニ試験をつけることも、一応考慮中。

 ファッション誌編集長経験者を日薬雑誌および広報関連担当編集長として招聘し、編集委員会に紛れ込ませておくのも忘れない。

 どんな偉い執筆者でも「面白いか面白くないか」という判断基準でリライト要請できる人材が大事。新年号恒例の議員挨拶をリテイクできそうな人材を入れてしまったので、年末は少し荒れるかもしれない。

 表紙は、予定通り、人物写真に変更。

 重要人物のときはスタイリッシュに。目力重視。

 写真表紙の初回は、ダンディなメガネ男子の副会長・センタが、ボロボロと涙を流している写真に決定。『聴け。この涙の、理由(わけ)を』と、巨大な煽りをいれてみた。

 表紙連動で、巻頭はセンタのロングインタビュー。いつも巻頭が定位置だったコラム『視点』は、編集長が『これ、論理がおかしいから、直して』とリライトを要請したのに書き手が拒否したため、誌上初の休載になった。(代わりの原稿として、有名ファッションモデルが白衣の着こなし&コーデの提案とともに薬剤師へのエールを送る写真記事が掲載された)

 ついでに、『日薬雑誌(ひのやくざっし)』の定価を、400円から1500円に値上げしておいた。

 会員外でどうしても日薬雑誌を読みたい!という方は、定価プラス送料で買える。送付の際は、入会案内とか講演会告知とかが同封される予定。『日薬雑誌』を毎号読みたい人は、会員になったほうがお得。

 日薬デジタルアーカイブ計画も着々と進行。

 日薬の通知は全部掲載。

 過去に「雑誌本体を取り置きしておく計画」で保存された雑誌も活用。こういった活動に時間と予算を割いておいた先人には頭が下がる。

 「本」は、おおむね国会図書館にもあるはずだが、デジタル化はだいぶ先だろう。ノウハウだけもらって、薬関係の書籍全部を日薬で管理するくらいの気持ちで、まずは自前。日薬雑誌の電子化。そのあとは、学術大会資料の電子化、絶版本の電子化と続けたい。

 ホームページ改革はすぐにできることなので、さっさと部署内でアイデアを出してもらって、ホームページ管理会社に平常時の100倍の仕事をふってみた。

 アイデアだしついでに全国の面白い活動をしている薬剤師のもとに取材に行った。

 懇親でお酒を飲みながら、会員ページ専用記事やら、eラーニングのふりをした講義やらを、オモシロ薬剤師たちに発注。学会の動画やデジタルアーカイブに、オモシロ薬剤師のコンテンツも加えて、初期ラインナップの充実を図る。

 全世界の薬剤師に知って欲しい内容については、演者了承のもとYouTubeを活用

 デジタルアーカイブは、各協力団体からの比較的自由なコンテンツ追加を前提にして構築していく予定。日薬は、容れものづくりと会員管理→職位認定の流れに対応できる下地づくり。慣れてもらうために、協力団体が過去に出した機関誌を全部アーカイヴに入れてもらうよう交渉中。いずれはペイ・パー・ビューなコンテンツも出したいところ。

 会員管理も、ちょっと変えてみた。

 公益法人制度改革にかこつけて、会員全員に定款を送り、定款内の【目的】に賛同するかどうか(=会員として留まるかどうか)を再確認。連絡先の更新と同時にいくつかの重要なアンケートにも答えてもらった。

 日薬雑誌は自宅に送ることで了承をとり、同一人物が複数入会していないかチェック。同時に「薬剤師会会員バッジ」「薬剤師会会員証」を作成し、配布。会員証は磁気カード化して、いずれ協力団体と連動すればそこの会員証も兼ねられるものにしてみた。県薬や地域薬と連動すれば、転勤時の入退会を廃止して、簡単な移動手続きのみでOKにできる。会員証は日薬のもの一枚で済む。念のため、地域薬や県薬が「うちに入会金払わなきゃ、移動でもいれてやんない」とか言い始めたなら、協力団体から外しちゃってもいいやという雰囲気を醸し出しておく予定。

 定款の目的に賛同しない場合は、賛同しない旨の書面、アンケートとともに、バッジ&会員証を返却してもらう。予算は若干かかったが、アンケート部分は内容(どんなアンケートをとるのか)を固定せずに予算化されていたので、怒られずに済んだ。定款の再承認と会員証配布&アンケート回収を同時にできたらいいなぁ(まだ回収期間中らしい)。

 いずれは会員証もケータイ認証で済ませる方向に向かうし、会員管理も日薬直轄で個人を管理する野望を温め中だが、今は、とりあえずの整理。使えるものは何でも使う。

 編集・出版・取材・書類電子化・会員管理。

 あれこれ言いだすのはアポ子だが、実務のプロである日薬(ひのやく)職員の底力はすごかった。

 たった数カ月で、30度くらいの変化があった。

「じゃ、今日は、観光…じゃない、取材に行ってまいりますっ!」

 週三日は取材か外回り、二日はお茶会、一日業者さんとタッグというスケジュール。残りの一日は観光だ。

 取材時は役員が地元に帰るのにくっついていって、「田舎に泊まろう!」的に、宿泊費や食費を限りなくゼロにしてみた。あまり休みはないが、かわりに有名人に会いに行く楽しみ&地方小旅行の楽しみがあるうえ70%の力でやっているので、案外疲れない。アポ子自身、無職のときのことを思えば、有難くて涙が出てくる環境。おもいっきり個人的趣味で、乙女ゲームメーカーに「広告出しませんか」と頼みに行くときのアポ子は、それはそれはキラキラと、ダメな意味で輝いていたらしい。

 まあ、そんなかんじで、粛々と、できることから手をつけた結果、ものすごい数のクレームが県薬あたりから飛んでくることを覚悟していたのだが…。

 案外、なんともなかった。

 会員アンケートの集まりも、思ったほどは悪くなかった。人間、モノをもらったうえ近所の顔役からせっつかれると、提出物を真面目に出すのだろう。おそらく、せっつかれなかったら、モノだけもらって提出物は出さなかったんだろうなぁ、という怖い予想は棚上げだ。みんなイイヒトだから、真面目に提出物を提出してくれただけ。とてもシンプルなことなのに違いない。

 アンケートが戻ってくるということは、定款に了承したということ。まだ未確定の会員が全員「退会希望!」だとしたら、ちょっと危ないのだが、最悪会員数90%減を想定していたので、とりあえずは、ひと安心。

 さて。

 自分の担当部署は、自分の手の届く範囲内で、楽しくしていったが、他の部署はどうしよう。

 なにか、手伝ったほうがいいかな。

 他の部署は、真面目な案件を扱っているし、アポ子が担当している部署よりもしっかりしているし、うまくいっているようだから、そのままでいいようにも思う。

 …そのままでいいのか。

 ピーターのマネジメントは、ここで終了なのか。

 ここが、旅の終わり、アンドロメダ終着駅なのか。

 なんとなく、違うような気がする。なんだろう。教えてメーテル。教えて、車掌さん。教えて、おじいさん。教えて、アルムのもみの木よ。

 疑問を解決するときは、いつもの、あれだ。

「ピーターの力を借りよう!」

 かくして、古本屋に向かうアポ子。こんなにお世話になっているのに定価で買う気が全くないというのもどうかと思うが。

「100円ワゴンにある、ドラッカー関連で、『マネジメント』以外の本をくださいっ」

 古本屋のおばちゃんが何か包んでくれた。以前もこんなことがあったような。なかみの確認がないまま商品を手渡すおばちゃん。傷やマジックの落書きがあっても返品を受け付けない意思表明。なかなかのやり手だ。

 家に帰り、さっそく包みを開けてみることにした。なにが入っているかはわからない。『非営利組織の経営』とか『明日を支配するもの』とか『イノベーションと企業家精神』とか、なんとなく悪の秘密結社の運営に役立ちそうな著作だったらいいなぁ。これで『もしドラ』が入ってたら、速攻で側溝に捨ててこよう。あ、でも、漫画版だったらとっておく。

 ガサガサと本を取り出して…

「こっ…これはっ!」

 MMRキバヤシ的に、力いっぱい驚くアポ子。

 その手には、黄色い本。

 本の題名は、『まんがと図解でわかる ドラッカー リーダーシップ論』。

 また宝島社だ。おばちゃん、宝島社のまわしものか何かか。

「リーダーを…マネジメント…っ。そうかっ、そうだったのかっ! この本には、人類に対する恐るべき計画が記されているかもしれん!!」

 謎の黄色い本との出会い。

 それが、アポ子(電波系)の奇妙な冒険 第二部のはじまりであった。

  ☆

 第二部へ つづいちゃうかもしれない

  ☆

今回の言葉
『聞いてない! わたし、聞いてないよーっ!』

 鳴海探偵事務所の所長の言葉。「アポ子がバカ企画を全部通してしまって日薬(ひのやく)が崩壊」という当初のエンディングのフラグを打ち消すような…宝島社がブラスバンドをモチーフにしてドラッカー本の二冊目を出す…という…状況を示す。甲子園に行った後、『マネジメント』一冊だけで優勝できるのかどうかという部分が明らかにされてしまう続編が出るような衝撃。「もしライバル校の女子マネージャーがドラッカーの『創造する経営者』を読んだら」な展開の外伝経由で、同じ経営学者の別著作からの影響を受けたふたつの学校の顧客満足対決へ向う…よーな話なら、ちょっと読んでみたい。サッカーだったら、藤枝MYFCみたいなシステムを高校野球に導入したらどうなるんだろう…みたいな。

※「もしドラッグ」は、フィクションです。

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もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら18

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十八話:アポ子は業界のゆらぎについて考えた

 事務所の床に体育座りしながら考え事をするのにも飽きたので、アポ子は帰宅することにした。

 広場では、大道芸のお兄さんが、玉乗りバランス芸を披露している。

 いまいち盛り上がっていない。拍手もまばら。

 そこに、アクシデント。

 急に、ゆらゆらと揺れる玉。

 落ちそうになると、うまく回転。バランスを取り戻す。

 ヒヤヒヤのあとの展開に、観客は拍手喝采。お兄さんは、丁寧にお辞儀。

「これだーっ!」

 アポ子は、何か閃いたらしい。

「足元が揺らいだときは、むしろ、喝采のチャンス!!!」

 ピーターいわく、『産業界が揺らぐときは、むしろチャンス』。

 変化が業界に隙間を生む。

 生まれた隙間に隙間産業ができる。

 隙間産業を「他の業界」に奪われる前に、自ら隙間を埋めていく。

 職能拡大とは、自分で隙間を作って自分で埋める作業だ。

 しかし、自分で隙間を作らなかったのに「社会の変化で」隙間ができてしまうことがある。

 そのときにどう対応するのか。アポ子なら、目の前に隙間ができたら、三途の川の外道衆が出てくる前に、侍戦隊を呼びそうだ。

 「職能組織」である日本(ひのもと)薬剤師会は、どう対応するのか。

 喝采を浴びるか、あるいはブーイングの嵐に沈むか。

 分岐点である「ゆらぎ」を発見するセンサーが動いたとき、この「ゆらぎ」をチャンスだとみなせていたのだろうか。

【ピーターのいう、三つのチャンス】

1.産業の成長がおこり、二倍の規模になったらチャンス
2.複数の技術が合体したときがチャンス
3.働き方が大きく変化したときがチャンス

 今も、ゆらぎだらけ、チャンスだらけだ。

 産業の成長。

 第二類・第一類の一般用医薬品の産業規模は毎年増えている。登録販売者さんの人数も毎年倍々ゲーム。都道府県行政は、自らが登録販売者の認定をしていることもあってか、OTC販売から薬剤師を遠ざける「おまえら調剤だけやってろ」的な通知を連発している。産業の成長は、分業の細分化、誰もが「お前だけにできることをみつけろ」と強要される世界への切符。天元突破のドリル、14歳の逃げちゃだめだ、神にも悪魔にもなれるバイク乗りなど、自分にしかできないこと自体が過労死への入り口になっている場合もありそう。どこまでを受け入れるのか。

 複数の技術の合体。

 合剤製剤の進出。企業合併で技術が合体しまくっている。技術そっちのけで販売網の合体って感じの買収もやたらとある。販売技術の合体と言えなくもない。テレビと電話が合体してテレビ電話、インターネットと通販が合体してインターネット通販、手術と通信とロボットが合体して遠距離診断&手術。遠距離対面販売だって往診移動対面販売だって、なにかとなにかを合体したらできるかもしれない。ニンテンドー3DSとiPad2とドラえもんの合体とかで。ドラえもんの調達が困難だが。

 働き方が大きく変化。

 24時間働くのは病院の夜勤だけじゃなくなった。個人商店からチェーン店を経て卸問屋の子会社になった。そのうち卸問屋は大規模ななんとか商事にTOBされそうだ。職場単位では、職能の独立よりも企業の理念が優先されるだろう。ある日突然、企業理念に『なによりも○○のために』『すべては○○のために』なんていう曖昧なことが書いてあっても平気な企業に買収されることだってありそうだ。昨日までの倫理的な敵と「今日から同じグループだから」と組まされたとしても、忍耐、我慢、すべては生活のために。なによりも給料のために。昨日までレーサーだったのに謎の組織にスカウトされて巨大ロボットのパイロットやらサイボーグやらになっちゃうくらい働き方が変わることだってある。

 チャンス、チャンス、チャンス。

 ときめきに愛をこめろ。時に流されて逆境になったとしても。

 「逆境」と書いたときも、それを「チャンス」と読むのだ。

 「逆境無頼カイジ」と書いて「チャンス☆ブライガー☆カイジ」と読むのだ。

 脅威だと感じたら負けだ。胸囲も姜維も関係ない。

 尻尾を立てろ。アンテナを高くして隙間を埋めろ。いつしか隙間が拡大して、本体になりかわるときだってあるのだ。細胞の隙間を新素材で埋めていったら、いつかは新素材だけでできた生物になっているかもしれない。それは元の生物と同じ名前で呼べるものなのだろうか。プリンが大好きなマッドサイエンティストはなんて言ってたっけ。

 いろいろ考えながら、てくてく歩いていると、景色が変化していく。

 変化。

 「社会の変化」について、ピーターは、市場の外部で起こる変化として、三つ挙げている。

1.『人口構造の変化』
2.『物事に対する社会の認識の変化』
3.『新しい知識の出現』

 ピーターは問いかける。

 問1 人口構造の変化:「地域・国内・世界人口の、一番多い年齢層はどこか」

 問2 物事に対する社会の認識の変化:「ただの水にお金を払わせるにはどうしたらいいか」

 問3 新しい知識の出現:「数年後に実用化されて出てくる知識・技術を見極めるにはどうすればいいのか」

 …と。

 ついでに、あてにならない「素晴らしいアイデア」への投資はやめておけ、とも言っている。あれか。「俺は本気出してないだけだから。でっかい夢があるんだから」と真顔で語る男に貢いじゃダメだっていう話か。でっかい夢があるというだけでは全然素晴らしいアイデアだとは思えないので、それとは違うよーな気もする。夢を吸いだしたら地球が出てくる人を除いては。

 各問を、さわり程度、考えてみる。

 答1
 日本の場合、高齢者社会っていうくらいで、若者は少ないのだろう。ということは、薬関係での若者向けの若者市場=美容で、その上の中年市場がアンチエイジングで、その上の高齢者市場が薬。ドラッカーが愛読書だ!と公言するリーダーに率いられている大企業は、『次の狙い目は、高齢者市場だ!』なんてことを言いながら、異業種の隙間にどんどん入り込んでくるだろう。っていうか、もうきてる。「最初に手をつけたところの独占」になる有料老人ホームへの薬供給市場は、超戦国時代だ。

 答2
 ただの水にお金を支払わせるためには、特定の水でなければ安全ではないという意識を植え付けるために、毎日毎日、世の中は危険にあふれているというサインを送り、お金を払ってただの水を飲むことがオシャレで賢くて美容にもよくて子供にも安全である行為だと、誰かに言わせればいい。危機感を募らせることが、消費の第一歩。そのうえで、「うちの製品は他とは違うよ」と、検証のしようがない点を主軸として広報する。マイナスイオンパワーとか天然水とか。小規模業者が言うと「あやしい」と言われるが、大企業が言うと何故だか「へー、すごいですねえ」と言われる。

 答3
 知識技術が実用化されるかどうかは、ぽややーんと見ているだけでは、見極められないと考えたほうがいい。「自分もかかわって実用化する」つもりになって考える。問題点がどんどんでてくる。何か新しい技術で解決できそうかを考える。想像力と知識のコラボレーション。でも最後はカネカネカネで買収によって一気に実用化されたものを手に入れるのが大企業というもの。

 以上。

 ピーターの想定する「三つのといかけ」は、真面目にパズルを解くことを前提に提唱されている。

 しかし、現実は、「真面目にパズルを解く時間がもったいないから、考える前にページをめくって正答を読む」とか「過去問の類似問題の答をまる写しする」といった小悪党から、「パズルの正答にたどりついた人間に大金を払って答えを教えてもらう」とか「謎のパワーでパズル自体を世の中から消す」といった大悪党まで、ルール無用の悪党だらけ。匿名のキザ兄ちゃんたちは、ランドセルを贈るついでに、正義のパンチをぶちかましといてほしい。

 薬剤師会には信用が求められるので、パズルを解くなら真面目にやるしかない。そして、アポ子が考える程度の『素晴らしいアイデア』なんか、採用してはならない。

「…てことは、やっぱり、あれこれ企画を考えても、大半は…」

 そう、没になるはずだ。それは承知の介。歯止めがきくというのは、良識のある有能な人が、組織内にそれなりにいる証拠だと考えよう。なんでも反対するくせに、ピーターの言う「素晴らしいアイデア」の採用に疑問を抱かず賛成する役員が多い組織には、乾杯でお別れだ。

 とはいえ。うっかり「素晴らしいアイデア」を採用してしまっても、うまくイノベーションにつなげていける組織なら、問題なし。優秀な官僚組織の基本は、これだ。

 問題なのは、『素晴らしいアイデアは絶対採用しない。だが、正直にパズルを解くのは嫌だ』という、自分からは絶対に動かない空気。

 そんな空気が蔓延しているかぎり、市場の外からの力で変化が起こっても、対応するイノベーションはおこらない。

 夢中になってパズルを解く空気って、どうやって作ったものか。やっぱり、マイナスイオン発生器や天然水や、1/fゆらぎ空間がお茶の間に出てくる空気清浄機が必要なのかな。

 そんなことを考えながら歩いているうちに、隣の駅についた。何かか地球に起こる時、胸のバッジが輝くように。ピエロの足元が揺らいだとき、一駅分歩いたことで、電車賃が浮いた。イッツ・ア・ピーンチか~ら~の~、チャーンス。

 アポ子の心の中は、自分自身への喝采で埋め尽くされた。

 おめでとう。おめでとう。おめでとう。おめでとう。おめでとう。めでたいな。おめでとさん。くえっ。おめでとう。おめでとう。おめでとう。おめでとう。おめでとう。

 ありがとう。

  ☆

 …つづくのかな(打ち切りっぽい終わり方だし)

  ☆

今回の言葉
『あの…。【ゆらぎ】って、そういう意味じゃないから。人を襲ったりしないから』

 どういう意味なのかは各自調べること。では解散。(ヒント:魔法少女)

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もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら17

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十七話:アポ子は労働力のニーズも満たすことにした

 おなか減った。

「誰か、ごはんを作って、もってきてくれないかなぁ…」

 呟いてみたが、周囲には誰もいない。

 ごはんを食べるためには、お米と水と炊飯器と電気と…。

 お米作りだって、きれいな水作りだって、炊飯器の製造流通だって、発電だって、人手が必要だ。ゴロゴロしていれば部屋まで食事が運ばれてくるような超ひきこもり環境にいたとしても、そこには多くの人手があり、食べ終わった後の食器の片付けから下水の処理etc、とにかく誰かの手が必要なのだ。

 ごはんがないなら、肉をお食べ。

 肉が無いなら、パンをお食べ。

 パンが無ければブリオッシュをお食べ。

 どこへ転んでも、何を食べるにしても、人手がかかる。

 とにかく、おなかいっぱいを目指すなら、人手が必要なのだ。人手。労働力。

 自力で大麦パンを作ったロビンソンクルーソーは、ひとり労働力。ものすごく大変な日々を送ったはずだ。

 ガリバーを動かした小人の国の労働力は、奈良と鎌倉の大仏を交換するくらいのものだったかもしれない。

 シンデレラのお姉さんたちや、マッチ売りの少女のお父さんは、彼らの大事な労働力を失った後、果たしてどうなったのか。

 労働力なしでは生きられない。労働力を粗末に扱ってはいけない。

 労働者ばんざい。

 そんなわけで。

 「知識」と「プロセス」のニーズを満たしたら、次は「労働力」のニーズを満たそう。

「労働者あっての企業! 団体! チーム! そう、隊士あっての隊長と副長! たった今、開眼しましたっ!」

 すべての思考が新撰組(主に乙女ゲー)につながっている帝夏アポ子(ていか あぽこ)としては、『無名隊士たちは眼中になかった日々』を反省するところである。羅刹隊の隊士ってイケメンいないし攻略できないし、どーでもいいと思っていた。攻略中のイチャイチャイベントの間も隊士が真面目に市中見回りをしてくれているからこそ、隊長のイチャイチャイベントが成立するのだ。

 日々の仕事を支えるのは、労働者。イベントを支えるのも、労働者。

 もういちど言おう。労働者ばんざい。

 隊長の存在は、隊士という労働力なしでは語れない。

 実働部隊は、部隊長だけではダメなのだ。

 そして、実働部隊は、戦闘部隊だけでもダメなのだ。

 諜報部隊がなければ、新撰組はグダグダだ。勘定方と会計方が金勘定しなければ、今日のごはんにもありつけない。そして松本良順先生がいなかったらブタ肉にありつけない。

「新撰組の隊士は、もち豚のレモン汁つき塩コショウたっぷり鉄板焼き肉とかで、白いご飯をガツガツと食べてたのかなぁ…」

 幕末の食糧事情としては、なんだか豪華な気がする。新撰組にシェフがいたという話はきかないけれど、マイリトルシェフ的には芹沢鴨と藤堂平助に任せたい。ピースメーカー鐡的には沖田総司の飼っていた豚のサイゾーを食材にして。そういえば会計方は死体処理も仕事にしていたし、豚の解体処理を担当していたかもしれない。

 おなかが減ると、思考が空回り。さっきから、労働力ばんざい、としか言ってない。

 平時にも必要な労働力は、緊急時にも必要だ。

 緊急時。そう、池田屋事件における労働力の圧倒的な少なさとか。隊士の半分が出動不能だったとか。どういうことだい山南さん。

 新撰組の場合は、組織の役員にあたる隊長たちが、まとまって突っ込んでいくことになった。

 しかし、日薬(ひのやく)の場合は、タマ子会長が突っ込んだら、危険極まりない。

 たとえばタマ子会長とナナミ(アポ子の幼馴染)がセットでどこかに視察に行ったとする。

 役員ふたりだけでできることといえば、偉い人同士の連絡網作りがメインの「現地視察」くらい。文書を取り交わして愛想良くする仕事は、代表者の真骨頂。タマ子会長は、思考の九割が今日の御飯。飲み食い大好き、宴会大好き、有名人大好き、名刺交換大好き。宴会部長を通り越して、宴会会長の降臨だ。前世は大石内蔵助か近藤勇だと思いたい。

 では、報告は、誰がするのか。タマ子会長は記者会見大好きなので報告する気まんまんだが、以前誰かが自由にやらせてみたら報告になってなかったらしく、今では誰もやらせようとしない。広報担当のナナミはタマ子会長に指示されない限り、絶対やらない。タマ子会長に指示を受けて報告するとしても、現場からの実況報告はやらない。日薬(ひのやく)の本部事務所に戻ってシャワーを浴びてからだ。

 スピードが要求される場面では、移動の車中でも視察の様子をまとめて、動画や写真入りで全国配信する補佐役の人材や、偉い人同士が会談している時間に別行動で調査取材をするチームや、バックアップ対応をするチームが、ほしいところ。

 役員が「行政や組織との協力体制構築」を急いで(前もってやっておいたはずでは?というツッコミを受けて)いる間にも、「会員への情報提供」を続けることで、自らの組織にできることの輪郭をはっきりさせていく。

 「視察の裏部隊」、別働隊。タレントとテレビカメラはセットでなんぼ。

 情報部隊。間諜。忍者。新撰組でいえば監察。『取材班』というニーズ。

 取材。「知識のニーズ」でも考えた、『自分で研究していない人間が、1.5次情報を得るための手段。2次情報の素』だ。

 東に医学会があれば現地に飛び、会員に役立ちそうな発表を発見し、発表者と交渉し、会員のために役立てる。西に面白い活動をしている人がいれば現地に飛び、一週間の密着取材を試みる。

 いたってシンプル。会員からの情報をキャッチして会員に流すシステムが大事。薬剤師の情報ネットワークプールを構築・整理していく過程で、取材すべきものは見えてくる。

 そこに「取材にいける人間(労働力)」さえ用意してあれば、あとは簡単だ。ピーター・パーカーやクラーク・ケントみたいに自作自演乙なカメラマンや取材記者も出てきそうだが、面白ければいい、面白い作品は載る、というジャンプ編集部的なノリで済まそう。

 取材したら、次は情報を分析することが大事だ。分析だって、労働力の出番。

 多くの「活動報告」を報告のまま寝かせず、その内容を分析して、次の一手を考えることが、指揮担当に求められるお仕事。ところが指揮担当ってエライ人だから自力で分析する時間なんて全くないわけで、ここは、外部入力で分析結果をエライ人の脳みそに直結してあげないと…。

 てなわけで。

 膨大な各種モニターデータを共有する仕組み。知識のニーズ。=頭。

 それらを活用する仕組み。プロセスのニーズ。=腕。

 実際に「動いて」分析をする人材。労働力のニーズ。=足。

 頭、腕、足。ロボットでいえばヘッダー・トラングー・レッガー。

 三つの力がひとつになって、ガッシンガッシン。UFO戦士ダイアポロン(歌:子門真人)。じゃない、「チックンタックン(作:石森章太郎)」でもない、「シンクタンク」だ。

 シンクタンク。それは魔法の言葉。

 シンクタンクという言葉を出した瞬間に、「そんな金のかかるもん、うちは無理!」と拒絶反応を示すエライ人が多い。

 お金はかかる。でも、役員が関与しない『分析戦略担当課』を、各部署の人間を毎日一時間だけ借りて創設するかどうかっていうレベルの「内部シンクタンクごっこ」すら拒絶してきた過去は、ホントは金の問題じゃないことの裏返し。(最近、すこしマシになったらしい)

 試しに、フルボランティアで全国の人材を集めてみようか。体は動かなくても頭脳や人脈で職能に貢献したい、お金はいらない、名誉は欲しい(ここ大事)、という情熱にあふれた御仁は、きっといっぱいいる。知恵袋の役割なら、わざわざ東京の一等地に集まって昼から会議をすることを求められずに済むので、地方在住でも安心。

 そうやって集まった有志のシンクタンクにはお金がかからないが、おそらく100%、お金がかからなくても、無視する方向にいくだろう。エライ人の拒絶反応は、なかなか手ごわい。

 まあ、仮に、拒絶反応をどーにかこーにか排除したとして。

 出した知恵をどう活用するのかは、役員の仕事。

 どれだけ斬新で高性能かつメンテナンスが簡単で壊れにくい武器を素早く渡せるかを追求するのがシンクタンクで、その武器をタイミング良く効果的に使うために頑張るのが組織のエライ人。この話二回目かな。徒手空拳で戦いたいという北斗神拳ですらやらないような戦いを求めるエライ人って、よくわからない。あれか、みんな全裸神拳(裸神活殺拳)の使い手なのか? 服を脱ぐと300kgくらいの重りが音をたてるのか?

 『そんな装備で大丈夫か?』と訊いたら、間違いなく『大丈夫だ、問題ない』と返してくれそうなエライ人たち。

 やはり、武器は、持たせないと心配だ。それも、一番いい装備を頼む。

「取材班とシンクタンクというふたつの労働力を抜きにして、デコレーション(注:イノベーションのことらしい)は、道半ば!」

 実際には、労働力にはお金がかかる。ボランティアは望めない。対価は何かと問われれば、「支払いの先送り」で騙されてくれるような層ではないし、もう、「ささやかな名誉」くらいで許してほしい。

 いまどきの労働力は、営業力を駆使して、かわいいぬいぐるみが『今すぐなんでも願いを叶えてあげる』くらい言わないと魔女と戦ってくれないようだけれど。

 プリキュアさんたちくらいの安請け合いで使命を果たしてくれる労働力、求む。

  ☆

つづく

  ☆

今回の言葉『プリキュアに同じ技は二度と効かない。これはもはや常識よ』

 伝説の戦士プリキュアになった瞬間にキュアマリンさんが言い放った一言。伝説は大事。多くの伝説がある組織・職能。その一員となることは、憧れ。伝説が、「私も、そんな伝説をつくってみたい」という目標になる。医師伝説、自衛隊伝説、漁師伝説、饅頭屋伝説、カードバトラー伝説…。伝説がイメージを生み、常識となる。へたれエピソードばかりを生み出すと、へたれ伝説になるので注意。

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「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」16

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十六話:アポ子はプロセスのニーズも満たすことにした

 日本(ひのもと)薬剤師会の事務局。

 腹ペコの帝夏アポ子は、三つのニーズについて、考えている。

 とりあえず、「知識のニーズ」について、日本薬剤師会雑誌を例にして考えてみたが、あと、二つもある。いや、海賊戦隊が探している34ものお宝に比べたら微々たるものなので、たった二つしかないと考えよう。

 ニーズによるイノベーション。

 二つ目のニーズ、「プロセスのニーズ」を満たすことを考えてみよう。

 現在行っている方法を変えてみたら、どうなるだろう、というあたり。

 たとえば、日本薬剤師会雑誌の、配布方法。

 現在、日本薬剤師会雑誌は、『会員の勤務する薬局』の住所に送られている。

 だが、よく考えてみると、これはおかしい。

 日本薬剤師会の会員は「薬局」単位で会員になるのではなく、「薬剤師」単位で会員になっているはずなのだ。

 「個人」が会員の最小単位なのに、「薬局」に機関誌を送るのはおかしい。ひとつの薬局に会員が複数いたら、何冊もの機関誌が集中する。

 いくら本が好きな人でも、観賞用・保存用・読書用・熱いラーメンを置く場所用以外の用途で使わなければならないほどのダブりには対応しきれない。いや、ほんとに、魔界水滸伝とか、同じ巻を七つも持ってたら、困るし。薄桜鬼の限定版とか移植版とかを揃えるのは苦にならないけれど、それでもまったく同じものが四つも届いたら、萎える。あ、フィギュアは別だ。土方さんが1000体くらい部屋の中にいても、困らない。

 一括で郵送するから安くなる、というわけではない。なにしろ、個々の会員番号別に管理されて、個々の会員番号に付随した「薬局の」住所に送られてくるのだ。薬局内で分配しなさいと、まとめて物資が届くわけだが、個々の会員にまともに手渡されるかどうかは不明だ。エリアマネージャーのところに数百冊が届いて、全部捨てられてしまう可能性だってある。

 個々の会員が「つまんないからゴミ箱行きね」という行動をとる場合は、内容とその会員個人のニーズの乖離があったにすぎないが、会員本人の目に全く触れることなく他人の手でゴミ箱に行くような「プロセス」は、避けておきたい。

「と、いうわけでっ!」

 本の配布方法を、「薬局へ送る」形式から「個々の自宅へ送る」形式に改める。

 会員の個人情報は、がっつり押さえておく。それが、組織の基本だ。

 組織管理、つまり人事課の人間が、社員の人間関係を知らないというのは、組織のピンチだ。ある会員の、結婚しているしていない、何人家族、子供は何人、何歳、子供が大学生なら薬学部か医学部か法学部か、本人は管理者か、学校薬剤師かetc。そういうことを把握していることが大事。

 出産入学葬式結婚といった節目に声をかける。地元と情報交換。そのうえで、薬局の状況管理も行う。老舗か、最近独立したのか、社長が交代したのかetc。昔ながらの、おせっかいなご近所づきあいが、会員管理の肝。

 緊急時・災害時には、会員の安否確認のための連絡先がほしい。薬局以外の連絡先が分からないよりは、いくつかわかっていたほうがいい。安否確認ができた会員の氏名を、日薬のホームページ(会員用)に随時掲載し、稼働できる人と薬局を把握することが、「会員管理」を担当する裏方の、大事な仕事だろう。

 配布先変更に伴う住居地等の確認作業をきっかけにして、組織会員管理を担当している部署の人と仲良く(注:強敵と書いて「とも」と読むような関係を「仲良し」という)なれば、一石二鳥。

 日薬雑誌の「プロセス」といえば、まだある。

 まず、記事に対する批判や感想などのフィードバックへの対応。

 読者からの「良く分からなかった」という感想を受けて、記事の補足などを行う。この場合の「読者」の役割を、現在は『編集委員会』が行っているが、それを廃止する。せっかくモニター制度があるのだから、モニターに感想を送ってもらうのが基本だろう。

 モニターの目があると思えば、編集委員会でも、相当真剣に記事を事前チェックするはずだ。自分のつくった雑誌を自分で批評するような難題を押し付けるのは、よくない。

 そう、編集委員会の「プロセス」を変えるのも大事だ。

 日薬雑誌は120ページから200ページくらいの間で推移する月刊誌だ。

 120ページのときの内容を見ると、そのうち、「告知欄」は厚労省のデータをコピペするだけで20ページ以上。目次・広告・毎号載せる既定のページを合わせると20ページ以上。雑誌の40%ほどは、「資料的価値はあっても、厚労省などの政府サイトで公表済み」である文章の再録か、何かの宣伝。それに依頼原稿と資料解説が20ページ、残りが会務報告とトピックス。

 この「編集」に、「編集委員会」がどのようにかかわっているのかが、現在の「プロセス」といえる。現在のプロセスの良いところを伸ばし、イマイチなところを改善するのが、「プロセスのニーズ」への対応になる。

 では、どんなプロセスなのか。

 …こればかりは、アポ子も知らない。議事録も存在しない。

 まあ、あとで幼馴染のナナミを捕まえて白状させてみよう。どうせ細かいことは覚えていないだろうから、次回からビデオカメラをまわしてもいい。

 「プロセスを、もう一度見てみる」ことから、改良型プロセスのヒントがでてきそうな予感。

 刑事ドラマで、防犯VTRをチラッと見た主人公が「そこっ! そこですっ。止めてくださいっ!」と叫ぶ、あれが大事なのだ、きっと。

 ピーターは、「プロセスのニーズ」を改善するために必要な問いを、五つ挙げている。

1.プロセス自体は完結しているか
2.問題点や欠落部分は一か所だけか
3.変革の目的は明確か
4.目的のために必要なことは明らかになっているか
5.社会に『もっとよい方法があるはず』という意識はあるか

 どんなプロセスなのかがわからなければ「完結しているかどうか」もわからない。会議の議事録がなければ、会議が会議としてまともに成り立っているのかすらわからない。

 プロセスにある複数の問題点を同時解決しようとすると、改善策のどれがはまったのかがわからない。会議の時間や場所が悪いのか資料内容が悪いのか議長の進行がダメなのか本当の有識者がいないのか…全部を同時になおすくらいなら、一度解散したほうがいいかもしれない。

 なんのために変革するのかって考えるときは、組織の定款にある『目的』を読めばいい。その目的を達成するために必要なことだと納得できるならOK。問いの3と4は、つながっている。「旅行に行く」という目的なら、必要なのは、旅行に必要な時間とお金。時間とお金をうみだすことが、変革の目的。

 ここまでは内側の話。その前に、まず「社会の空気」を確認しておけと、ピーターは言う。みんなが「今のままでいいや」と思っていたら、ウケないから、空気を読めってことらしい。

 ウケる空気が生まれるまで待っていたら百年かかる。組織は、広告代理店並みに「空気をつくる」のが大事。数年に一回、幕末ブームがくるのは、そういう空気を誰かが作っているからだ。

 組織は、会員を踊らせてなんぼ。

 踊っている間、会員は間違いなく楽しいし、組織に所属していてよかったと思うし、結束も増す。それが組織が社会的影響力を増すことにつながる。

 会員を放置したまま踊らせないような組織は傾く。会員限定イベントをやらず、会員限定特典もないようなファンクラブでは、踊れない。

 BGMなしで『ハレ晴れユカイ』を100回踊れと指示されたら泣く。

「そうか! プロセスはBGMだったんだ!」

 変な旋律がまじっていたり、急にテンポがかわったりすると踊りにくい。

 もっと踊りやすいBGMを。

 そんなことを考える、腹ぺこのアポ子の頭の中で再現されていたのは…。

 フレディ・マーキュリーのダンスだった。

  ☆

つづく

  ☆

今回の言葉

『そのプロセスをもう一度みてみよう』

 宇宙刑事ギャバンが コンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない。では蒸着プロセスをもう一度見てみよう。『蒸着!』「リョウカイ・コンバットスーツ・テンソウシマス」烈の要請を受けたギラン円盤は特殊軽合金グラニュウムを電送する。グラニュウムは烈の体温に反応して、形状記憶作用で強化服形態をとるのだ。「宇宙! 刑事! ギャバン!」決めポーズ。

 「リョウカイ、コンバットスーツ、デンソウシマス」の三言を0.05秒。宇宙テクノロジーってすごい。…と感心する前に、プロセスをもう一度みることによって、ツッコミどころや改善点を探りたいところ。でも、まあ、「けれんみ」 は大切にしたい。

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「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」15

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十五話:アポ子は知識のニーズを満たすことにした

 会員が欲しがっているものを提供する。

 それが、ニーズを見つけてイノベーションを起こすということだ。

 ニーズ。「存在しないもの」に対する要望だ。

 ピーターは、三つのニーズを満たせという。

1.プロセスのニーズ
 提供方法、集配時間、確認方法。

2.労働力のニーズ
 機械化、海外進出、専門家の一時雇用。

3.知識のニーズ
 新しい知識と、新しい組み合わせ。

 これら三つを満たすために、まず、今日からできることをやっていこう。

 顧客のニーズとして、会員が望むもの。

 最もわかりやすいのは、「知識」のニーズ。ここからとりかかる。

「・・・はっ!?」

 帝夏アポ子が気づくと、もう夕方になっていた。時間がたつのは早い。あちこち歩き回って根回し的なことをしていたような気もするが、仕事らしい仕事をした記憶がない。結局、今日も机と椅子は用意されなかった。

 おなかが減った。食欲のニーズを満たすべきだろうか。

 まあいい。とにかく、「知識」のニーズを満たすのだ。

 まずは、今日、日本薬剤師会(ひのもとやくざいしかい)の女子事務員(マネージャー)である帝夏アポ子が手に入れた(奪い取った)職権を確認しよう。

「広報編集、組織会員と会議の管理、日薬会館建設、生涯学習。で、残りはナナミがやって、あと、連盟とかそういうのもナナミがやって。うん、適材適所」

 世論では、アポ子が適材とは思えないという意見が大半を占めると予想されるが、本人が言う適材とはナナミのポジションのことだけで、自分がどうなのかは勘定に入れてないらしい。実際、午後からのナナミは、心底嬉しそうに、政治活動に力を注いでいる。さっきも、特に予定がなかったはずなのに、どこかの政治家にアポをとって、食事に呼ばれるように仕向けていた。もちろん、タマコ会長も一緒のラブラブタイム。

 アポ子の職権(あるいは解決すべき懸案事項)のうち、日薬会館建設については、なにもしなくて痛くない仕事だ。つまり、ピーターがいうところの、「する必要のない仕事」に該当する。タマコ会長が辞める時まで、放置しよう。

 放置していて、なにか文句を言われ始めたら、「今、東武ワールドスクエア的な25分の1ミニチュアに対抗した150分の1ジオラマを組んでいるところです。完成形が目に見えないのに土地売買だけ遂行して建物は後からデザインしようなんていう信じがたい状況を改善しなければ!」と言っておこう。

 150分の1。要するに「Nゲージ 23-436テナントビル(完成品模型)」を3500円で買っておいて、「日本薬剤師会」のロゴシールを自作して貼りつける予定なのだ。 ツッコミ担当の代議員に鉄ヲタがいないことを祈る。

 生涯学習に関しては、ある程度の形ができている。今すぐ変更しろといっても変わらないので、少し時間をかけよう。こういう、ちょっとアカデミックなことは、エライ人や暇な人みんながやりたがるので、アポ子があれこれやるより、他人に任せたほうがいい。とはいえ、日本で唯一の職位認定機関&国際担当機関という立ち位置だけは確保したい。

 組織会員管理は、担当部署と仲良くなりつつ、こっそり進めよう。金勘定も含むので、金庫を握るための下準備、計画が必要だ。会議管理も、担当部署と仲良くなって、なるべく残業しなくていいような方向で。これからは、平日休み、休日会議という勤務もありだ。

 さて、残るは、広報編集。一応、「広報」と「編集」に分かれている。

「広報かー。広報っていうより、営業が必要なんじゃないかなー」

 いきなり、「広報に関する特別委員会」の存在意義があやしくなることを呟き始めるアポ子。

 日薬には、学術大会などのコンテンツの図書館としての機能をもたせたい。コンテンツを活用できるかどうかは、営業力にかかっている。営業がダメなコンテンツ産業(たとえば出版社)は、売り上げが伸びない。つまり、読者の支持を広く得られないのだ。営業によって様々な意見を汲み上げ、足りない説明を補完し、支持者を増やす。どんな組織でもやっているはずだ。日薬(ひのやく)以外は。

 せっかく組織の機関誌という媒体があるのだから、これを使う。

 『日薬雑誌・熱血改造計画』の発動である。

 台割は先々まで決まっている、六か月…すくなくとも三カ月ぶんくらいは決まっていると考えて、準備期間を少なくとも四カ月とる。

 キャッチフレーズは、『熱血』だ。

 熱い魂で、少々わかりにくくてもいいから、熱く語る。それを、冷静な解説員が、コラムで解説するなどして補う。

 気持ちのこもっていない本には共感してもらえない。「薬剤師みんなの心を熱くする雑誌」をつくると、編集部全員が心に誓うところから始めよう。心に誓うだけなら一瞬だ。

 紙面改革は、時間がかかる。それまでに、できることがひとつ。

 会員向けに、日薬雑誌のバックナンバーを、読めるようにする。日薬会員になるだけで、過去の膨大な知識を、好きな時に好きなだけ読める。これが基本だ。ワンピースの50巻あたりで読者になった人に、「49巻までは読めません」という縛りがあったら、読者同士で話が合わない。

 日薬雑誌はクロニクルなので、人物に着目すると、人物の成長記としても読める。組織の歴史を物語として語れることは、意外と大事だ。過去のバックナンバーが読み放題なら、総集編的な記事や再録記事によって、あれこれ検証することもできるようになるだろう。

 また、web掲載時に、議事のカラー化や写真の高精度化、図表の詳細化、インタビューや議事録要旨の音声化・動画化もありうる。地上波放送ではボカシが入っていた部分がDVDではくっきりはっきり見えます、という手法は、見習おう。

 本誌の内容で大事なのは、まだ見ぬ強豪を知る、ということ。

 開発中の薬剤に関する情報や、海外で展開している薬剤に関する情報は、薬剤師会が注意深く見守っていきたい。アルベルト・デル・リオとか、ウェイド・バレットとか、志田光とか、新日本プロレスばかり見ていたら気づかないあたりを誰よりも早く知っていることが、専門家としては大事だ。

 現場の最先端を知る、ということも大事だ。最新機器情報。いわば、ドラえもんのポケットの中身を知る記事。どう使うのか。『メカッコイイ研究機器』の素晴らしさを秘密道具エピソード風に力説する記事なんか、読みたい。

「くすえもーん、ジャイアンが、イトカワの微粒子を解析できないなら鼻でスパゲッティ食べろっていじめるんだーっ! なにか道具出してーっ」

「はい、スプリング8のBL47XU・X線CT装置ー!(ぱかぱぱっぱぱーん)」

…とか。取材に行って、写真マンガにしたい。

 取材。

 そう、取材だ。取材に行かず、うちあわせも電話で済ませ、編集部に一日中いるような編集者は、業界裏話的なマンガを見る限り、だいたい無能キャラだ。

 編集委員会に「つくらされている」雑誌なんか、つまらない。

 編集者が「世界一の薬剤師会機関誌を目指す!」と考えていてこそ、会員がわくわくするのだ。米国薬剤師会の機関誌が平伏すような機関誌を目指そう。大丈夫、甲子園優勝よりはハードルが低い。

 突撃取材あるのみ。取材が必要だとわかっていれば、編集委員は勉強するはずだ。

 とにかく、日薬雑誌が提供するのは、『少し未来』と『過去』と『コレクション性』の三本柱。

 これは、玩具メーカー主導の特撮番組と同じ路線だ。父親が腕時計をしていたら、変身アイテムはブレスレット。父親が携帯電話をもち始めたら、変身アイテムは携帯。ジュラシックパークが流行りそうなら恐竜モチーフ。パイレーツオブカリビアンの新作がくるなら海賊モチーフ。そういった『少し未来』。

 シリーズが続く中で『過去』の資産の別展開を推進し、カードゲームやDVDレンタル、全キャラ総登場の映画などで市場を広げる。日薬雑誌だったら、過去の会長を集めての座談会や、その息子・娘たちを集めた座談会など。

 そして『コレクション性』を高めるために、玩具に『劇中と同じ、実際に使えて、集めるほど楽しいもの』を用意し、『集めた場合の実際例』を劇中で何度も見せ、『続きが気になる演出』もいれる。日薬雑誌だったら、かつての「薬局製剤」連載のようなシリーズが該当しそうだ。学術系委員会に本気を出してもらい、業務に役に立つ図表を毎月三枚ずつ封入するだけでも、毎月千円近く支払う価値がある…かもしれないし。

 外部の偉い人が好き勝手に書く巻頭言の「視点」を執筆する人物も、「少し未来の人」と「過去の人」から選んで、『現職で偉い人』は載せない。バックナンバーを読み返したくなる演出も入れる。過去の「視点」の内容に対して言及してもらう。もし意見が対立したら、決着は座談会でつける。対立軸を盛り上げることで周知させてアイコンをつくって軍団闘争を繰り返したうえで公開の場で決着という黄金パターンこそが、組織の『ありかた』を決めるためには大事なのだ。ザ・ロックのおばか…もといアティテュード路線と、ジョン・シナのおこちゃま…もといフリーダム愛国心路線と、どっちがいいんだというテーマで一年以上も抗争が続く間にシンカラとモリソンの曲芸路線の台頭…いや、WWEの話はいいんだ。

 表紙改革は必須。最初はイケメンや美人でインパクトをつけたうえで、別に偉くもなんともない、「いい顔」をしている薬剤師の写真を、毎号の表紙に載せる。偉い人の写真を使うときは、「プレジデント」の表紙が孫社長のときのように、黒バックでカッコよく撮る。メリハリが大事。表紙で読者をひきつける。基本だ。

 あおり文、キャッチコピーも大事だ。毎回「視点」のタイトルが一番大きい文字になっているようなデザインはやめよう。どうせたいしたことを言ってない。基本的には、表紙の「顔」にまつわる言葉がいい。仮にタマコ会長が表紙なら、『アタシについてこい』とか、DFホラーA Std W5 書体で書いてみる。書体的に自信なさそうで、わかりやすい。クレームがつきそうだから、実際やるならF-1ブロックライン書体にする。書体についてはググれ。

 ポップなデザインばかりでもダメだし、堅苦しい枠組みを守ってばかりでもダメだ。デザインとビジュアルを軽視する者は編集委員会にはいらない。少しくらいお金がかかっても、やれることをやる。薬学生ニュースをポップに創る能力があるのなら、毎月の会報の三分の一くらいはポップにできる。通知は速報性重視で印刷所に別入稿したいし、コレクション性を求めたいから、別冊化。新薬情報はweb掲載にすれば、本誌側の浮いたページには、いろいろ詰め込めそうだ。

 「今月のエビデンス」というコーナーをつくりたい。健康食品からOTC、器具やマスク、医療用医薬品まで、読者が気になっている品物を調査する、本気の学術だ。並列して5つくらいの案件を調査して、結果を掲載。こういうことにはお金をかけたい。

 学生が参加するコーナー、アンダー35が企画するコーナー、長老からの叱咤激励。ママさん薬剤師奮闘記、介護しながら薬剤師、実務実習質問攻め日記、などなど、紙面を華やかにしつつ、共感されそうな企画もギリギリ感漂う企画も、とりあえずやってみる。やったら、フィードバックをうける。載せる。統計の取り方という素晴らしい企画をやったなら、厚労省研究のダメ統計にガンガン反論して、企画の効果を実証してみせればいい。

 …と、思いつくままに、テキトーに並べたものを日薬の編集担当職員と共有しておいて、実際の吟味は編集委員会に任せよう。編集委員会のメンバーに、プロの編集者とデザイナーを参加させることだけは、必ずやっておく。編集委員会は、「会員が読みたくなる本」を創るための頭脳だ。頭脳には頭脳としての役割を遺憾なく発揮してもらわなければ。会合の度に、甘いものを出して、頭脳を活性化してもらおう。

編集委員会=おいしいスイーツを食べる会。

是非参加させてもらわなければと思うアポ子であった。

  ☆

つづく

  ☆

今回の言葉

『絶対無敵、元気爆発、熱血最強、完全勝利っ!!!』

 心に誓うと強くなれる言葉の例。日薬雑誌のキャッチフレーズとして使うにあたっては無敵、最強、勝利といった言葉は4649仏恥義理の雑誌っぽいので却下、雑誌の終焉を匂わせる爆発という言葉もどうかという流れで「熱血」のみ採用。

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もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら14

「もし日本薬剤師会の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

第十四話:アポ子は宣伝担当の人間を洗脳することにした

 朝。アポ子は、食パンをくわえたまま、走っていた。

 必要以上に長く読書をしたせいで、朝寝坊。

 就職するまで、11時(昼)に起きていて、早起きできない体質になっていたことを、忘れていた。

 まあ、遅刻したからといって、それを責める上司など存在しない、気楽な立場なのであるが。

 職場に着いて、床にビニールシートを敷いて、鞄からノートを取り出す。さあ、仕事を始めよう。

「…あれ?」

 何か忘れている。

 たしか、魏の荀彧は、「あらゆるものを見聞し頭の中に天下を収めて、しかもそれらをすっかり忘れて戻って参りましたあーッ!!」と言ってたけど。

 そういう状態なのかもしれない。

 だって、昨晩の読書の内容が、すっかり抜け落ちているし。

 読書しながらノートにメモしたはずが、最初から最後まで、半分意識が寝ていたらしく、ミミズの這ったような謎の言葉が並んでいるだけだ。

 ファン様、

 メッセージ、

 ヒャッハー、

 勘違いしないでね、

 薬剤師アイドル、

 がんばろう大臣

「なんだ…これ…」

 全然覚えてない。

 ノートの最後には、次のような言葉が書いてあった。

『ナナミの背中を掌底でガッツンガッツン叩きまくる』

 やけにはっきり書いてある。

 JOJO第六部ストーンオーシャンでジェイル・ハウス・ロックに攻撃されて三つしか物事を覚えられなくなったジョリーンの気持ちだ。

 今、いくつ物事を覚えているだろうか。

「・・・・・・・・・・・・・」

 思考が停止したので、考えるのはあとまわし。

 よし、ジョリーンと同じく、書いてある通りに行動しようじゃないか。

 おもむろに床から(注:アポ子の机は用意されていない)立ち上がると、幼馴染のナナミが詰めている役員机に速足で向かう。

「な、な、なんの用だっ。ちか、近寄るなっ」

 恐ろしい形相で近寄ってくるアポ子の姿に、ナナミの危険察知レーダーが反応したらしく、腰の引けた状態で牽制するナナミ。おもいっきり、汗だくだ。

「なんの用? …えーと…日本薬剤師会を、世界一の薬剤師会にするために…」

 するために…

 昨日、本を買って、マネジャーの…

「ああっ! そうだ! 思い出した!」

 ナナミに、あれこれと改革をさせなければならないのだった。

 危ない。オラオラからのドッギャーンで、危うく、改革のパートナーを、杜王町名物アンジェロ岩にするところだった。

 ピーターがいうところの「意思決定のためのステップ」を、すっとばすところだった。

 ノートの片隅に書いてある謎の言葉に踊らされて。

 今日のアポ子は、一味違うのだ。すぐに人を殴るようなことはしない。

 その証拠に、新しい外来語を覚えてきたし。

「インベーション!」

「イノベーションだろ。知ってるよ」

 幼馴染のナナミは、こういう奴だ。だいたいなんでも知っている。知っているくせに、それを活かして何かをしようという夢がない。『俺はタマコ姐さんの嫁』と公言するほどタマコ姐さんラブなので、タマコ姐さんのそばにいるためだったら、途方もない力を発揮できるらしいのだが。

「その、イナベーションだけど。ナナミ、あんた、なんかしなさい」

「いやだ」

 やけにはっきりと否定された。むう、ナナミのくせになまいきだ(ジャイアン風)。

「そう言うと思ってた。じゃあ、私が天才的なひらめきを言うから、あんたやりなさい」

「いやだ。イノベーションは、天才のひらめきで行ってはいけないんだぜ

 なんか知ったようなことを言い始めた。アポ子の言葉も受け売りの一夜漬けだが、ナナミの言葉も受け売りの浅漬けか福神漬けに違いない。ナナミの机の上に『マネジメント(エッセンシャル版)』が置いてあるのを見逃さない程度の探偵力で、気分は「体は子供頭脳は大人」。

「だったら、あんた幹部職なんだから、チームを率いて、イナバウアーやりなさい」

 イノベーションだ。

「委員会は、もう、やってるよ。答申も出しているし、その結果として動いているんだから、いまさら決まったことを壊して新しいことなんかしないよ。だいたい、タマコ姐さんがやれって言わないことを、僕がやるわけないじゃん」

 それは「答申を握りつぶしている結果として何もしない」の間違いじゃないかとかツッコミたくなる気持ちを抑えるアポ子。ナナミの自己防衛能力の高さはバビル二世がロプロスを操るパワーに匹敵するので、言葉でツッコミする前にハリセンで一発いきたいのを、ぐっとこらえる。今日だけは、暴力禁止の平和主義者を貫こう。

 タマコ姐さんがいないとトイレにも行けないようなへたれっぷりは子供のころからの腐れ縁的に仕方がないと受容するとしても、このままでは、昨晩の読書が無駄になってしまう。うまく説得しないと。

「その、タマコ姐さんが、私をマネージャーとして雇ったのよ。意味、わかるでしょ? 私の言葉は、タマコ姐さんの言葉。タマコ姐さんの言うことならなんでもきく忠実な飼い犬のあんたは、私の言ったことに従う義務があるのよ!」

 なんだか酷過ぎる理屈で、ナナミの繊細な心を壊しにかかるアポ子。

 ちょっと言い過ぎた。でも、こんなとき、強気を崩したらアウトだ。微妙にツンデレを混ぜてみよう。

「あんたに責任を負わせるのは無理だってことはわかったわ。あんたはこの世のすべての責任から逃れようとする『弱い人間』だものね。なのに、まわりがそれを判ってあげないから、できもしないことや、やりたくないことを押しつけられる。昔からそう。だから、私は、あんたに責任を負わせるようなことはしないわ。楽にしてあげる。あんたが持て余して、ビクビクしながら抱え込んで、任期切れまで手をつけたくないようなことの権限を、私に一時的に移しなさい。あんたの代理として、私が、広報編集、組織会員と会議の管理、日薬会館建設、生涯学習の領域をやってあげるから。総会で責任を問われたら、私を首にしなさい。あんたは、あんたが大好きな、医療保険、DEM、DI、農林水産を、タマコ姐さんと一緒に、地道に楽しくやれるんだから、文句ないでしょ?」

 早口で恩着せがましくまくしたてつつ、ナナミの頭をつかんで、強引に縦に振ってみた。

 だが、ナナミの強くてヨコシマな信念は、まだ抵抗し続ける。

「…タマコ姐さんがいいって言わないなら、いやだ…」

「安心しなさい。あんたがそう言うと思って、昨日のうちに、タマコ会長から、一筆もらってあるから(※)」

 魔太郎のライバル・切人風の悪魔の笑顔で、ナナミの前にサイン入りの書面を差し出すアポ子。サインに目を輝かせるナナミ。

 反論なし。よし、落ちた。

 アポ子の、マネージャー道は、今はじまったばかりだ!(打ち切り風)

  ☆

※ 昨日、朝一で、「今日の夕飯は叙々苑だなぁ、何食べようかなぁ、コラーゲンポークなんか美容にいいかなぁ」という思考に頭の能力の95%を使っているところだったタマコ会長のところに押しかけ、サインに応じさせたらしい。いままでは専務理事ががっちりチェックしていたが、今はノーガード戦法まっさかり。このままではタマコ会長がメタボでメタメタとなり、更に詐欺商法につかまってハンコを押しまくってしまうかもしれない。やはり、「マジメでキレ者の専務理事」は必要だと思うアポ子であった。って、アポ子じゃダメじゃん。

  ☆

つづくかもしれない。(とりあえず、もしドラのアニメを見る予定)

  ☆

今回の言葉

『じょおおおおおおお、たつ…んだ…じょおおおおおおおおおおおおっ』

 「上達するんだぞ」という言葉を、感極まった濁声で表現すると、こんな感じ。クロスカウンターという名のブーメランで、無茶な要求をノックアウト。薬剤師が体重別資格だったら、減量苦とかあるのだろうか。

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