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医薬品ネット販売:政治家さんの質問趣意書(話題になってないほう)

 参議院の質問趣意書は、なかなか楽しい質問にあふれています。

 質問をするとき、質問を読んだ相手に「ごめんなさい、あなたの論理判断力は、国政で職務遂行できる程度に大丈夫ですか…?」と心配させてしまっては、まずいですよね。

 クイズやなぞなぞ、言葉遊び、冗談なら、別にどーでもいいんですが。

店舗を拠点として薬剤師がインターネットや電話、メール等を利用して購入者との間で行うコミュニケーションでは副作用被害を防止できず、テレビ電話によって初めて副作用被害を防止できる一般用医薬品があれば、その医薬品名、その副作用の種類、発生の理由・程度・頻度を具体的に示されたい。また、そのように考える科学的根拠を示されたい。

 という質問は、

 まず『店舗を拠点として薬剤師がインターネットや電話、メール等を利用して購入者との間で行うコミュニケーション』という、薬剤師および購入者が不特定な状況を前提にして、そういった無数の状況下で『副作用被害を防止できず』という「すでになんらかの副作用が発生してしまった」状況を切り取っています。

 そんな「すでになんらかの副作用が発生してしまった」ことが証明された状態を前提として、この質問は、「テレビ電話によって初めて副作用被害が防止できる」状態を訊いています。

 あれ?

 「副作用が起こったことを確認したうえで、副作用が起こらないことを確認した事例はあるか」と訊いているのでしょうか。

 そんな、「試合開始から五分たっても相手を倒せなかったことが確認できた後で、地球を回転させて時間を五分戻し、五分たったことは忘れたふりをして、五分以内に相手を倒すという公約を守る技は存在するか」みたいな質問、ゆでたまご先生が「マグネットパワーです」と答えるくらいしか思いつきません。

 ケースによって薬剤師と購入者がバラバラですから、コミュニケーションの内容もバラバラでしょう。にもかかわらず、常に「副作用被害が防止できない状況」を前提にしろと言うのは、【薬剤師が「ここまでの話だと売るわけにはいかないな」と絶対に言わない(=専門家職務の放棄)】という前提でもない限りは、無理な相談。前提となっているのが、専門家判断を全否定する小売業者の思考っぽい。システムの中で人間が果たす役割を、質問者がどのようにとらえているのか、心配になります。

 いろいろなコミュニケーションがあって、いろいろな情報を集めた結果として「売らない」と判断するのも専門家のお仕事。

  ☆

 「対策ABCだけだと実際に事故が起こった」ことの事例はあげられそうです。でも、「事故が起こらなかった」のに、対策ABCDを同時運用した場合にABCが事故を防ぐのに全く役に立っていないと言い切れるものなんでしょうか。「どれが役に立ったかはわからないし、どれも役に立ったかもしれない」のなら、やれる範囲で全部やればいいのでは? 対策を運用する側の能力資質や事例判断の困難度など、ほかの要素も関係しそうですしね。

 「(ほかの要素はどうであれ)テレビ電話によって防止できた」なら、それも有用なツールのひとつだと考えればいいんですよね?

 なのに、なんで、テレビ電話(仮)だけを、「コミュニケーションツールから除外したい。義務化なんかとんでもない!」という論調で質問者が主張するのか、わかりません。

  ☆

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/183/meisai/m183105.htm

一 テレビ電話の義務付けについて

本年五月九日の日本経済新聞(第一面・第五面)の記事に関連して、質問をする。

1 厚生労働省は、ネット販売にテレビ電話を通じたやりとりを義務付ける方針とのことであるが、店舗を拠点として薬剤師がインターネットや電話、メール等を利用して購入者との間で行うコミュニケーションでは副作用被害を防止できず、テレビ電話によって初めて副作用被害を防止できる一般用医薬品があれば、その医薬品名、その副作用の種類、発生の理由・程度・頻度を具体的に示されたい。また、そのように考える科学的根拠を示されたい。
2 メールや電話では判断できず、テレビ電話では判断できる場合があるという前提に立つのであれば、それは実質的には薬剤師が医療行為を行うことを意味しないか。また、薬剤師は、テレビ電話によって患者の画像を確認したら、病状や治療方針あるいはその心理を判断できる専門家であるのか。それはどのような教育・試験によって獲得した能力であるのか。
3 テレビ電話とはどのような機能を満たすものを想定しているか。また、かかるテレビ電話はどの程度普及し、利用されているのか。テレビ電話を利用できない国民はネット販売という有用な手段の利用が認められないのか。ネットを利用して一般用医薬品を購入している需要者はこれにより適切に病気を治療する利益を受けているが、テレビ電話による副作用防止の利益はそれに勝るものか、政府の見解如何。実証的な根拠とともに示されたい。
4 テレビ電話を義務化するのであれば、義務化の必要性と合理性を支える立法事実が不可欠であり、テレビ電話によらなければ、事後の治療では回復が困難な副作用被害を有意的に防止することができないことを厚生労働省が証明しなければならないと考えるがいかがか。
5 本年一月十一日の最高裁判所判決によれば、現行薬事法は「文理上は郵便等販売の規制並びに店舗における販売、授与及び情報提供を対面で行うことを義務付けていないことはもとより、その必要性等について明示的に触れているわけでもなく、(中略)また、新薬事法の他の規定中にも、店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与やその際の情報提供の方法を原則として店舗における対面によるものに限るべきであるとか、郵便等販売を規制すべきであるとの趣旨を明確に示すものは存在しない。」としており、省令によってテレビ電話を義務付けることは、現行薬事法の授権の範囲を超えた違法無効なものとなると考えるが、政府(内閣法制局)の見解如何。
6 現行薬事法は第三十六条の六第四項において、「第一項の規定は、医薬品を購入し、又は譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があつた場合には、適用しない。」と定めており、これは現行薬事法が情報提供を受けるか否かを消費者の選択に委ねているものと考えるが、政府(内閣法制局)の見解如何。仮に何らかの明文にない要件を要求している趣旨と解釈する場合は、明確性の原則との関係でその根拠及び正当化される理由を明らかにされたい

  ☆

 これら以外にも楽しい質問が続きますので、興味のある方はリンク先、参議院のホームページを読んでみてください。(回答のほうは、面白い…というか、ユーモアが全くなくて怖いくらいです)

 他の方の質問内容も、いろいろ参考になります。(専門家を自称しているのに知らないのかな…的な質問もあったりして…)

 回答のほうは、基本的に「新ルール検討会においては」「指摘の「○○」についても検討が行われているところであるが、情報交換の手段を含め、一般用医薬品の購入者の利便性にも配慮しつつ、その安全な使用を確保するための方策について結論が得られていない現時点において、お尋ねについては、いずれもお答えすることは困難である」「なお、同省としては、新ルール検討会における検討の結果を踏まえて、できる限り早く適切に対応してまいりたい」というカタチになっています。

 これって、よーするに、質問者が質問したことによって、新ルール検討会において、指摘した点について、いずれは明確に結論を出さなければならなくなったということですかね。引用しなかった質問だと、代理購入禁止とか、常備目的の購入禁止とか、そういうあたりも。在宅医療の充実に伴って、そういう流れがありうるかどうかの検討もできる時代になっているのかも。新ルール検討会はどこまでやれることやら…。

 質問「5」は、薬剤師法第一条:薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする…の義務規定である「医薬品の供給」を適切に行うのに必要なツールのひとつであると専門家が考えるモノなら、薬剤師法の授権の範囲内の適法な処置になりそうですが。「個々の薬剤師が判断材料が足りないと考えた場合、売らない」ので、判断材料のひとつでしかないわけですが。

 ちなみに「6」の回答では、「医薬品の専門家」か「繰り返し同じ薬を使っている人」のみの話だと明確に定義されました。薬局開設者が、薬剤師と登録販売者に「その場合は説明をしなくてもいい(してもいい)」と言うだけのことです。購入者が「説明するな。いらない」と言ったからといって、それで絶対に説明しちゃいけないって話ではないんですよね。

 質問内容に「ネットを利用して一般用医薬品を購入している需要者はこれにより適切に病気を治療する利益を受けている」みたいな、「え、それ、どうしてわかるんだろう?」と驚く言いきりが目立ちますが、これ、質問者の方が、そう思う『科学的根拠』とかを提示しなくてもいいのかな~。

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