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2012年12月

パブコメ募集:高齢者に対する適切な医療提供の指針。まずは読んでみる。

日本老年医学会の指針がパブコメを要求しています。(というネタをアポネットさんで読んだので、面白そうだから指針を読んでみることにしました)

指針とパブコメ募集要項はこちら。

http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/member/kaikai/jgs_pcm_geriatric_care_GL.pdf

意見公募のあて先が@umin.netなので、大学病院医療情報ネットワークさんが協力しているんでしょう。

で、パブコメと書きましたが、これは「厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)」の研究班のまとめた研究指針ですから、「近所の賢いおねーさんたちが、国というパトロンのお金で、あちこちの論文の内容をつぎはぎしてまとめただけ」の指針だと思っていればよさそうです。民間研究機関の研究班がつくったマニュアルに、意見を出すというパブコメ。「近所の定食屋さんが【新しいメニューを考えたんだけど、ちょっと意見を聞かせてよ】と訊いてきたので、軽い気分で【うまい】とか【まずい】とか答える」ようなものです。もっと軽く書くなら、薬剤師倫理規定擬人化研究の同人誌の内容について「どう?」と訊くようなものです。内容がどうであれ、民間研究の提示する指針だとか研究成果だとかに、その内容を活用すべき現場が、素直に従うはずもなく。

本文が実質4ページで、参考文献の羅列が7ページ。この「指針」の立ち位置が、なんとなく透けて見えるよーな。というか、「つぎはぎ」という表現で問題なさそうですね。(この記事内で引用した内容のうち1)のような数字は、参考文献番号です。111もあります)

そのわりに、唐突にでてくる言葉についての説明や定義は、ほとんどありません。

たとえば、「予備力」「非定型的」。

予備力ってなんですか?

 →「その人が持っている体力・生理機能の最大の能力と、通常使用時の能力の差」

非定型的ってなんですか?

 →「典型的ではない」あるいは「高度な知的判断を必要とするような」

これであってますか?

こういう部分も丁寧に解説するなり言いかえるなりしておけばいいのに。

日本老年医学会のホームページにある「立場表明」みたいに、用語の定義を羅列してから書いてくれると親切なのに…。

立場表明
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tachiba/jgs-tachiba2012.pdf

あ、そうそう、この指針に「具体例」はありません。指針だからと、そのあたりは無視です。あるいは、具体例を出せないような、変な指針なのかもしれません。

では、読んでいきましょう。

  ☆

はじめに
「指針の必要性」

高齢者、特に75 歳以上の後期高齢者の増加1) に伴い、高齢者医療への需要はますます高まってきている。しかし、高齢者に対する医療提供は医療従事者にとって難しいものになっている。その原因としては、加齢に伴う生理的な変化によって疾患の表れ方も治療に対する反応も若年者とは異なること、複数の慢性疾患を持っていること2)-4)、それに伴い薬剤数が増え相互作用や薬物有害事象が起こりやすいこと5)-8)、高齢者を対象とした診療ガイドラインが十分に確立されていないこと9)、さらに若年者に対する診療ガイドラインの適用により必ずしも良好な結果が得られないこと10)-12) 等が挙げられる。

この指針は医療従事者が高齢患者に対して過少でも過剰でもない適切な医療提供13) を行えるよう支援することを目的として作成されたものである。

  ☆

 はい、質問です。

 「高齢者医療」の定義は、なんですか?

 なんだかわからないものの需要がますます高まっていると言われても、わかりません。

 たとえば「超人、特に超人年齢25歳以上のベテラン超人の増加に伴い、ドクターボンベ医療への需要はますます高まってきている」と書いたとして、納得してもらえるでしょうか。

 ドクターボンベ医療って、なんじゃそりゃーっ! と、思いますよね。

 バッファローマンの角からキン肉マンの左腕の骨をつくっちゃうとか、ウォーズマンに超人心臓をつくっちゃうとか、プリンセス・カメハメの若返りとか、そういう医療です。

 …と、説明されたって、なんじゃそりゃー! ですよね。

 説明されなかったら、どうしましょう。

 幸いにして、「高齢者に対する医療提供」のことなんじゃないかなー、と思えるように、文が続きます。

 ということは、「指針の必要性」を簡単にまとめると、

 【高齢者に対する医療提供の需要に応えられる体制は基本的にない。需要と供給のバランス点を決めて、それを適切であると言い切りたい。だから、示す】

 といったあたりでしょう。

 よーするに、(少なくとも医師の仕事の)供給量を増やす気はないので、需要があっても叩き切る、という宣言を、とっても回りくどく、まるで「需要に応えているかのように」書いたのが、「はじめに」の文章。供給量を増やそうとしたら、医療関係者がダウンしてしまいますから、供給量を増やさない点をしっかり書いておくのは大事だと思います。

 ここ、大事ですよ。

 この指針は、「需要を仕分けする」ためのものだと、はっきり言っているのですから。

 仕分けするための基準が示されているかどうか。そこが「目的にとって、大事」です。示されていないのなら、ここから先の「指針」の文章は、全部、無意味です。基準。「ここまでやればOK」「これ以上は、もうやらなくていい」という話。それらを、「医療関係者」なんていう大枠ではなく、職能別に考えた結果。

 職能別に考えていかないと、最終的に「チーム医療」とか「地域」とかいった言葉を並べることで、ありもしない余剰労働力をあてにするという展開になります。ええ、『キン肉マンには、火事場のクソ力があるから大丈夫!』みたいに言ってるのと変わりません。『スイーツは、ベツバラ』とか『本当の窮地には、諸葛亮の秘策が』とか言ってるよーな感覚。よーするに、神頼みに限りなく近いことを『指針』だと宣言することになっちゃいます。指針って、余裕・自然体でできることじゃなきゃダメなんじゃないのかな?

(必要以上に「大事」と書くと、全て大事じゃなくなるトリック)

  ☆

「指針の使い方」

本指針は、医療従事者が高齢患者に対して医療提供を行う際に考慮すべき事柄を整理し、基本的な要件を示したものである。従って、この指針は個々の疾患に対する診療ガイドラインに置き換わるものでは無いが、実際に治療する際に考慮するべき項目を示している。診療ガイドラインが高齢患者を対象としていない場合、またはガイドラインが相互に矛盾する内容を含む場合などには、本指針に示された基本的な考え方を準用して治療方針決定の一助とすることが推奨される。

  ☆

 使い方を真に受けると、「高齢者向けのガイドラインが存在しないなら、現行の疾患治療ガイドラインよりも、この指針を優先しなさい」ということです。

 「基本的な要件」とあるので、基本をこえた提案はないと考えて良いのでしょう。

 さて、「基本」は、どのあたりですか?

 基本と書く以上は、おおよそ、どの医師であっても理解している内容か、あるいは、他の医療従事者の職能を挙げての「これら専門職なら基本である」内容であるはずです。前提は、チーム医療なんです。

 これは、「医師単体では供給量を増やせない」という「はじめに」の宣言と合致します。他の職種が(お給料据え置きで)供給量をふやせばいいのよ、ということですね。研究班のメンバーは施設の経営部門か医師だけで構成されているようですから、彼らにとっては、非常に都合の良い結論です。もっとも、この研究の協力団体であるところの日本医師会さん理論だと、チーム医療の話をしているのに、他の職能からの参加者がいないような研究は、無効だと言い張れそうですね。

 この指針の仕様者として「医療従事者」と書いてありますから、医師限定ではない行動指針だと読みとれます。にもかかわらず、医師以外の医療関係者を協力団体としていないのですから、この指針、医師以外の医療関係者は守る必要がないということでよろしいでしょうか。

 では、各論も読んでいきましょう。

  ☆

1.「高齢者の多病と多様性」

・高齢者の病態と生活機能、生活環境をすべて把握する。

1.1. 老化の進行速度には大きな個人差があり、その上、老化の身体的・精神的・社会的な機能面に対する影響の大きさは個人によりそれぞれ異なっている14)。また、生活習慣病を初めとする多くの疾患は高齢になるにつれて有病率が高まるため、高齢者は複数の疾患に罹患していることが多い2)-4)。従って、高齢者に対する医療提供にあたっては、かかりつけ医としての役割を意識し、全ての病態を把握した包括的な管理を目指すことが望ましい。

1.2. 身体的・精神的・社会的な機能の多様性から高齢者では個人差が非常に大きく、症状や所見も非定型的である事が多い14)-16)。こうした多様性を念頭に置き、高齢者総合的機能評価を用いて身体的・精神的・社会的な機能を個別に評価することが重要である17)-20)。また、高齢者では疾患の経過が医学的要因のみならず、環境要因の影響を強く受けるため、居住環境や生活習慣、経済状態、家族関係、社会関係を把握し、それらを医療に反映することが重要である21)-25)。

1.3. 高齢者では多病のため、複数の医療機関から断片的かつ重複した医療提供を受ける可能性が高い10)26)-28)。一方で年齢や身体的、精神的、社会的な機能の低下などを理由に、受け入れや処置などの医療提供が制限され過少医療に陥る危険性がある29)-33)。 高齢者においても有効性が確立された医療行為が存在することを念頭に置き、ベネフィット・リスクバランスを考慮した医療提供を心がける34)35)。

  ☆

 のっけから「すべて」把握するなんていう過剰医療を宣言しているようです。

 それ、「はじめに」で、難しい=できないって書いてたじゃん。

 いくら「重要」という言葉を重ねられても、最初に「できません」と言ったことは、できないわけです。「重要だけど、できません」という話を繰り返ししているのが、この項目。なのに、まるで、「できる」かのような書きっぷり。評論家の言う「○○が重要です」というセリフ、そのまんま。あれは、「重要だと自信たっぷりに言っておけば、重要でなくても実現不可能でも、その場の議論を切り抜けられる。むしろ重要だと述べたことが実現不可能であるほど、実行しないことに対して【重要だと言ったのに実行しないほうが悪い】と自分の責任を棚上げできる」という、詐欺師のテクニックなんですけれどね。

 過少医療の定義も、わけわかんない。社会的な機能の低下って、たとえば都心には住みたくないから湖畔に住んだら、ドクターヘリを使わなければ大きな病院に搬送できないなんて話も含みそうなんですが、それって過少医療ですかね? 受入や処置って、やれる範囲のことは、みなさんやっているはずで、精一杯やってもダメなものを「過少医療」などと言われてしまうのでは、驚くしかないでしょう。

 過剰も過少も、振れ幅がおかしすぎて驚くばかりの「指針」を示しておいて、「バランスを考慮した医療提供を心掛ける」なんて言葉で締められるとは、ほんとにびっくりです。

 指針を提示している側に、バランス感覚が皆無。従ったらバランスがよくなるとは、とうてい思えないような提言を確定させようとしている様子。これは「指針」じゃなくて、「妄言」です。だって、どこにも「基準」がないじゃないですか。

 トータルで「できないだろうけど、できるふりして、てきとーにうまくやっといてね」くらいのことしか書いていないのに、それを指針だのと言い切れるのが、本当に不思議です。

 まあ、これだけ、いろんな情報が大事で、全て把握しろと言っている以上、研究した方々のカルテには経済状態に家族歴から家の間取り、住まい周辺の様子、趣味に嗜好に友人関係といったことくらいは「全て」書いてあるのでしょうし、それらの情報を用いた治療についても記載があるのでしょうから、サンプル例として、ぜひ公開してほしいものです。(それが、ひとつの基準になりますから)

  ☆

2.「QOL 維持・向上を目指したケア」

・生活機能の保持、症状緩和などによりQOL の維持・向上を目指す。

2.1. 高齢者は若年者に比べて予備力に乏しく、若年者であれば一過性に終わるような疾病、例えば腰痛や肺炎であってもそれを契機として日常生活機能低下などによりQOL 低下を生じやすい36)-38)。一度日常生活機能低下を来すと完全な回復を期待することは難しいため39)40)、転倒予防41)42) やワクチン接種43)-47) などを行いその契機となる疾病を予防すること、また疾病に罹患した場合でも早期離床を図るとともに機能回復のためのリハビリテーションを早期から行い、日常生活機能の保持をはかることが重要である48)49)。

2.2. 老年症候群と呼ばれる高齢者に頻繁に見られる諸症状(認知症、せん妄、うつ、虚弱、廃用症候群、低栄養、嚥下障害、転倒、尿失禁、便秘、褥瘡、脱水など)50) もQOL 低下や日常生活機能低下を来すことが多い51)-53)。これらの老年症候群を予防し、また発症の際には早期発見、治療するため、包括的なスクリーニング、評価が必要である。特に認知症については、専門医療機関での鑑別診断を含めて早期の対応が重要である。

2.3. 高齢者の疾患は、その多くが治癒を期待できない慢性疾患である3)。このような慢性疾患に対しては症状緩和がより重要である。保健・医療・福祉の一体的な取り組みによって療養環境の整備、メンタルケアや栄養管理を含めたヘルスケア、緩和ケア等を行い、QOL を低下させる症状の緩和と共にQOL の維持・向上に努める。

  ☆

 んー?

 これって、まず、個々の患者さんの「もともとの日常生活機能」の状態を知ってないと、できないですよね。「この人は、このくらいで、いいんじゃないの」と言えなくちゃ、ダメみたいなので。それ、通院前から頻繁に会ってないと、分からないと思いますけど。病院に通院してくる時点で「最初の契機」は終わっていますから高齢者の現在進行形の疾患についてはおおむね治療不可能であるという前提でいいんでしょうか。

 で、「一度病気にかかったら、回復しない。治療できない」と主張して、「緩和医療」へのシフトを求めているようです。【治療はできないけどQOLは維持するからいいでしょ?】という姿勢ですね。いいんじゃないでしょうか。そのように、はっきりと言ってもらえたほうがいいです。それならセルフメディケーションで貼り薬と痛み止めを薬局で買い続ければ済む人も増えますし。

 「治療ができない」とはっきり言わずに「緩和医療」を治療と錯覚させているわけですが、更に、治療以前に問題があると述べるために「予防」が大事だという話も持ってきています。病気にならなきゃ治療しなくてもいいじゃん、というシンプルな展開。ここまでをまとめると、「絶対に『治療』には問題など起こらない」というスタンスを守るためなら、なんでも他のせいにして、責任回避する姿勢のようです。「学校のせいではありません、それ以前に親のしつけが悪い、学校の外の誘惑が悪い、ネットが悪い、ゲームが悪い…」とか釈明する教育関係者に似た論調。

 でも、不思議ですね。

 すでに予防医学という概念がでてきて20年以上はたっているのにも関わらず、いまだに「高齢者に頻繁に見られる」ような症状が、どうして「予防」できると言えちゃうんでしょう。逆ですよね、「まず予防は不可能であるから、いまだに高齢者に頻繁に見られるのは当然」と言い切ったほうが、話が早いのでは?

 しかも、そういった症状=疾患の多くは「治癒を期待できない慢性疾患」だと認めているので、慢性疾患は、高齢者においては、早期発見が治療に結び…つかない場合が多いということも、わかっているはず。(この項目は予防、予防と唱えているわりに、日本予防医学会の協力は受けなかった模様)

 この項目は、「高齢者の急性疾患は予防できそうだし治療もできることがあるけれど、高齢者の慢性疾患は予防できないし治療もできない」という前提で、「だったら、(急性疾患には)予防、(慢性疾患には)緩和医療だ」と、言っているんですよね。それを、ごっちゃにして書いてあるので、まるで、急性でも慢性でも予防できるかのような文章になるわけです。

 あ、「高齢者の慢性疾患」って、「高齢者の時点で発見された」のか「高齢者になってから発症した」のか、よくわからないですね。予防も、「高齢者に予防させる」のか「高齢者になる前の年齢から予防させる」のかで、だいぶ違うような。とことん、あいまいな指針です。「基準をつくったように見せかけて、何の基準も示さない」ための「指針」なら、あいまいなのも当然ですが。

 項目の最後には、療養環境の整備、メンタルケアや栄養管理を含めたヘルスケア、緩和ケアという領域に期待をつないでいるのですが、要するに、【治療できないから、病気治療以外の要素を充実させて、治療していることにしてよ】という結論。これって、もう、医師の継続的な関与をやめて、完全に専門家(宗教家やオーグメンテーテョン科学者も含む)に任せたほうがいいんじゃないかという段階ですね。それでも何らかの関与がしたい…という気持ちをぐっと我慢して、適切なところに持って行こうという話のようですが、まだまだ「医療関係者」の中だけで終わっています。

 そう、ここでも、最後はチーム医療。なのに、どの段階で医師(や、それぞれの「医療関係者」)が手を引くべきかという基準が示されていません。これでは、指針として機能しません。医療で解決しないことがあっても、「そっちには渡さないぞ」という意識では、QOLの実現を目的としているようにはみえません。

  ☆

3.「生活の場に則した医療提供」

・患者のQOL 維持に生活の場の問題は重要であり、適切な医療提供の場を選択する

医療提供の場を変更する際に生じる問題を理解し、予防に努める

3.1. 患者本人が生活の場として快適である場所、QOL を最も高く維持できる場所で可能な限り長く過ごせるように医療、看護、介護、福祉による地域包括ケアを含めた総合的なケアを提供する54)。入院治療が必要となった場合も、生活の場に早く戻る事を目標に早期から退院支援を十分に行っていく。

医療提供の場を選択並びに変更する場合には、患者本人・家族と積極的に情報を交換してどのような場がふさわしいかを決定する支援を行う55)56)。

3.2. 医療提供の場を変更する際、医療提供者間のコミュニケーション不足から不適切な医療が行われることがある57)58)。また、医療提供の場が変わることに伴い、せん妄などの精神症状59) や廃用症候群36)-38) を生じやすい。したがってこうしたリスクを理解し、予防に努めると共に円滑な医療連携を実践するべきである60)。

3.3. 医療提供の場として入院医療や外来医療に加えて訪問看護ステーションや認知症サポート医などの地域における医療資源を活用した在宅医療や施設における医療を考慮する。

  ☆

 入院治療の目標が「早く家に戻す」でいいのかなー、と疑問。

 家族との情報交換を前提にするなら、家族が「家に帰されても困る」ときに、どうするのかも考えないと。「(本人と家族が)決定する支援を(医療関係者が)行う」と書いてありますので、医師が「退院してください」と言っても、患者本人や家族が「嫌です」と決めたら『医療提供の場』が決まってしまうように読めます。まさか、「退院支援」という言葉の意味は「退院しろと強硬にすすめて長期入院を減らしてベッドをあける」という意味? まさかね…。

 『入院し続けることが「生活の場」として最適である』場合は、想定できませんかね?

 緩和ケアって、そういう話も含みますよね?(医師が常に関与する施設に医師の指示で居続ける状態を、入院と呼びますよね? ホスピスや老健だって「入院」の一形態ですよね? そういうところを誤魔化す「指針」は良くないと思います)

 指針の示すとおりにやったら、おかしくなりませんか? 

 で、また、ここでも「予防」って言ってます。

 『医療提供者間のコミュニケーション不足』の予防って、それ、どうやってやるのか、全くわかりません。今できてないものが、指針で書かれただけで出来るようになるはずもなく。項目1で指針が書いているような「全ての情報を収集する」ことができているのなら、それを地域で共有して、申し送り・ディスカッションが可能な状況をつくるのが、コミュニケーションの構築。こうした指針をつくった方々が、情報の地域共有に励んでくれるというのなら有難いことですが、もし「俺のやり方を説明するから、おまえら集まれ」みたいなやり方を「コミュニケーション」と呼んでいるのなら、それを「円滑」だと思い込んでしまった時点で、「患者の生活の場に即した」医療ではなく、「医師の都合にあわせた」医療だといえそうです。さて、この指針では定義されていませんが、「医療提供者間のコミュニケーション」って、いったい、なんなんでしょう?

 「地域における医療資源の活用」は、危惧していた「火事場のクソ力」です。考慮も何も、最初から関与しているのが当たり前。『医師があれこれやった後で、最終的に患者を押し付ける場所』としての位置付けは、ダメでしょうね。「あれこれやってもダメだったから、あなたにあげる」と言われた側が、そんな重いものを扱える余裕などないのですから。存在しない、無限の労働力・余力・金銭を「医療資源」などと呼んでいるわけですが、それはどこかの政党が「埋蔵金」と呼んでいるものに似ていますね。「いやいや介護は成長産業だから、これから人手が増えるんですよ」なんてことを言って誤魔化すんでしょうか。甘い見積もりで「資源」の量や質を計算していませんか? 簡単に増える人手は、簡単にいなくなります。バブルです。バブルだの、存在しない労働力だのに期待を込めるような指針を推進しなければならないとしたら、現場は泣くだけです。即刻、こういった『存在しないものに頼る記述』を全て削除することをお勧めします。

  ☆

4.「高齢者に対する薬物療法の基本的な考え方」

有害作用や服薬管理、優先順位に配慮した薬物療法を理解し、実践する。

4.1. 高齢者では有害事象が起こりやすい61)62)。薬物動態や薬力学の加齢変化63)64) を理解し、原則的に少量から薬物を開始し、薬物に対する反応・副作用をモニターしながら漸増する65)66)。多剤併用(特に6 剤以上)に伴って予期せぬ相互作用や薬物有害事象の危険性は高くなるため6)67)-72)、可能な限り多剤併用は避ける。また、高齢者にとって有害事象を起こしやすい薬剤が知られており73)74)、それらの薬に関しては特に慎重に適用を考慮する75)。

4.2. 認知機能の低下、巧緻運動障害、嚥下障害、薬局までのアクセス不良、経済的事情、多剤併用など薬剤療法に対するアドヒアランスを低下させる要因は多岐に渡る76)。服薬アドヒアランスについて、本人だけでなく家族や介護者からも定期的に情報を収集し、アドヒアランスを低下させる要因を同定し、予防・改善に努める77)78)。また、合剤の使用や一包化、剤形の変更など服用が簡便になるよう工夫する79)。

4.3. 高齢者は慢性疾患や老年症候群を複数有していることが多いが、高齢者対象の診療ガイドラインは十分に確立されておらず9)、若年者対象の診療ガイドラインの適用により必ずしも良好な結果が得られないため、疾患や症状毎に薬物療法を行う考え方は必ずしも適切でない10)-12)。個々の患者の疾患や重症度、臓器機能、身体機能・認知機能・日常生活機能、家庭環境を総合的に考慮し、患者と家族の目指す治療目標に応じて薬物の適用と優先順位を判断し、必要な薬物を選択し80)、優先度が低い薬剤は中止を考慮する62)81)82)。

4.4 代替手段が存在する限り薬物療法は避け、まず非薬物療法を試みるべきである65)66)。全ての薬剤(ビタミンや漢方薬、OTC なども含む)をお薬手帳などを用いて把握し83)84)、併用薬が不明な場合、原則的に新たな処方は避ける。薬物動態や薬力学の加齢変化、生活環境の変化63)64) によって、薬物が不要になる場合がある事を理解し、定期的に必要性を見直すべきである62)85)-88)。

  ☆

 えーと、この項目は、おおむね、薬剤師がやれますし、すでにやってます。薬物動態も加齢変化も。「できるだけ少量」なんていう曖昧な話ではなく、「検査値がこのくらいで年齢がこのくらいで、過去の薬の効き方がこうだったので代謝で気をつけるのはこれとこれ。だから、このくらいの量で、この間隔で十分」という判断を(危なっかしい薬・副作用が出やすい薬に対しては)しています。断言してしまっていいものか少し悩みましたが、しています、たぶん。

 アドヒアランスの低下要因。いろいろ挙げていますが、唐突に、「薬局までのアクセス不良」とか言ってます。でも、「病院・診療所までのアクセス」という難関をすでにクリアしている方々だという点も考慮してほしいところ。山の上にあるから行くのが大変、とか、検査ばっかりされるからいきたくない、とか、年下の医者に毎回ねちねち怒られるのが嫌、とかね。アクセス不良があっても、「あの先生は腕が良いから信頼しているので行きたい」といった要素で、マイナス面をカバーできるのですから、アドヒアランスの向上要因についても羅列したほうが良さそうです。薬局の薬剤師が嫌な奴である…といった要素は、フリーアクセスを堅持している限りは、他の薬局に行けばいいので、どうでもいい要素ではありますが。医師会はフリーアクセス堅持ですよね? それとも、薬局までのアクセスが問題だから、アクセス向上のために、フリーアクセスなんかやめて、全ての薬局を病院・診療所の中に置きたいんでしょうか(当然ながら、薬剤師が常駐するわけですから、調剤は薬剤師の完全専権事項になります。医師の例外的調剤は不可です)。あるいは、既存の薬局の隣にしか病院・診療所をつくらない方向ですか? 薬局が遠いのが悪いから、お前らがうちの近所に来い…なんてことを「改善」とは、言いませんよね?

 あ、必ずしも「合剤の使用」やら「一包化」やらが良い(適切)というわけでもないってことは、書いておかないと、ダメだと思います。合剤を処方してさえいればアドヒアランスに配慮していることになるような単純化がおこっちゃいますよ。ふたつあった薬がひとつになったから薬の数が減って良かったね…みたいなアホな話で、薬剤の中止だと錯覚させる流れ。ここまでの項目で「ひとりひとりの患者に合わせた治療」を推奨しているのに、いきなり画一的に「合剤が良い」「一包化が良い」なんてことを決めるのって、変ですよね。「服用が簡便になる」ことが素晴らしいとも限りません。簡便だと思って一包化したら、自分の呑んでいる薬の把握ができなくなって、まとめた薬を二包も三包も一気に飲んでしまう人だっているわけで。「簡単には服用できない」ことだって、ときには大事なんですよ。ハードルを低くすることばかり考えるのでは、多様な相手に配慮しているとは思えません。

 そうそう、全ての薬剤を把握するためには、注射や点滴の内容もお薬手帳に書いていただかないとね。この指針を決めた方々は、当然、すでに、書いてくださっているものと思いますが。(筆者は、病院・診療所が点滴内容まで記載しているお薬手帳を見たことがありませんし、検索しても事例を見つけられませんでした)

 「(高齢者の)全ての薬剤を把握する」という文言を提唱し、それが「過剰でも過少でもない状態」だと主張するのなら、それを必ず実現できるような「指針」にすべき。他の医師が処置した薬については無頓着な時点で、「指針」のいう「全ての」という言葉の定義が危なくなってきました。全ての情報、全ての薬。はいはい、全てですか。どんな範囲を指して「全て」なんでしょうね。海賊王ゴールド・ロジャーが「この世の全てを手に入れた男」と呼ばれる程度の「全て」でしょうか。「すべては患者様のために」の「全て」でしょうか。

 範囲を決めずに「全て」と言ってのける「指針」なんて、ありえません。

 もひとつおまけに。

 この項目、チーム医療について全く言及がありませんが、「薬物治療」って、医師と薬剤師と患者のチーム医療じゃないんですかね?

 他の項目も同様ですが、果たして、これらの項目の主語となっているであろう「医療従事者」って、それぞれ、どこからどこまでの範囲を示しているのでしょうか。

 「誰が」考慮するのかを書かずに「考慮する」と言ってのける「指針」なんて、ありえません。

 考慮する「誰か」が書いてないということは、定義されていない「医療従事者」だと自分を定義した方が行っても良いという解釈が成り立ちます。それだと、項目2に書いてある「ワクチン投与」を、医療事務さんや作業療法士さんが自分で判断して行ってもいい(もちろん法的にはダメ。この指針がやってもいいかのように推奨モードで書いてあることで、間違える人がいたら、この指針の責任は大きいはず)ってことになっちゃいます。この指針を考えた方々は、それでいいのでしょうか?

 ちゃんと範囲を決めてください。

   ☆

5.「患者の意思決定を支援」

・意思決定支援の重要性を理解し、医療提供の方針に関して合意形成に努める。

5.1. 高齢者医療では想定される優先目標が立場や価値観の違いによって異なってくる。例えば、高齢者医療の優先順位に関する意識調査において、高齢者が医療に対して望むことは「病気の効果的治療」であったが、医師が優先することは「QOL(生活の質)の改善」と異なっていた89)。従って治療に関するエビデンス、予後に関する情報を提供することによって意思決定を支援し、患者本人と家族の価値観を尊重しつつ目標に関して合意形成を行う事が重要である90)。

5.2. 合意形成において最も重視するべきことは患者本人の意思・価値観である。認知機能障害等により患者本人から意思、価値観を確認することができない場合であっても、患者本人の価値観を家族や医療チームが想定し、合意形成を目指す。

  ☆

 他の項目で「治せない」って言っているのが裏付けられているわけですが…。

 「治せない」のがはっきりしているのに、「合意形成」って、どういうことなんでしょう???

 意思決定支援も何も、「治してほしい(患者)」と「治せませんから緩和医療で(医療従事者)」の合意形成点って、「緩和医療で」以外の選択肢は「医者にかからない」ことだけかと思うんですが。

 そんな状態で、『合意形成』を目指す? 

 ゴールは決まってるのに?

 「ボク、仮面ライダーウィザードのDXベルトが欲しい!」と言っている子供に「仮面ライダーウィザードのミニプラベルトで十分よ」と、出資者・親の権力丸出しで「買えない」とは言わずに説き伏せる、どこかで見たことのある光景。子供は、なにもしてもらえなくなることのほうが損だし、次の機会も消失するから、渋々従っているだけ。それを『合意形成』だとか意思決定支援だなんて思える人って、けっこう、怖い。

 逆でしょ。

 「できないものはできないんだ」という、医療従事者にとっては悔しいかもしれないけれど実際にそうなんだからどうしようもない事実を、まず、最初に提示するのが筋でしょう?

 この項目のようなノリで『合意形成』を目標にしちゃうのって、要するに、『医療従事者が「できない」とは言わずに済む方法』のすすめであって、意志決定支援なんていうのは
もちろん、嘘っぱち。

 急に引用が少なくなって、この項目はたったのふたつ。その一方で「ニーズは合わない」ことが証明されていて、もう一方が「人工的水分・栄養補給の導入を中心として」意志決定プロセスに関するガイドライン。治療全般の話ではなく、栄養補給分野に偏ったネタです。治療全般に対して「合意形成」をどうするのかについての引用は、全くないんですよ。

 エビデンス重視に見せている文章で、急にエビデンスがない項目がでてきたわけです。

 この項目、馬鹿馬鹿しいし、恥ずかしいから、ぜんぶ削ったらどうですかね?

  ☆

6.「家族などの介護者もケアの対象に」

・家族を初めとした介護者の負担を理解し、早期に適切な介入を行う。

6.1. 介護者は心身に大きな負担がかかり、QOL 低下やうつ病などの危険性が高まることが報告されている91)-94)。従って医療提供に際しては介護サービスなどの社会資源を得られるよう積極的に情報を提供し、レスパイトケアなどの介護者の負担を軽減する方策を考えることが必要である25)95)-98)。介護者の心身への負担が強い場合には医療機関への受診を勧める。

6.2. 本邦においては少子高齢化や核家族化の影響から、「独居高齢者」、高齢者が高齢者を介護するいわゆる「老老介護」、認知症患者が認知症患者を介護するいわゆる「認認介護」が社会問題化している99)。そうした介護状況には格別の注意が必要であり、早期に家族等と相談の上、介護保険サービスなどを導入し介護者の負担も考慮したうえで、在宅療養維持のための介入を行うことが望ましい。

  ☆

 この指針って、「高齢者に対する適切な医療提供の指針」だったはず。

 この項目は、「過剰医療」をこえて、「指針の範囲拡大」では?

 介護者が大変にならないような、「高齢者に対する適切な医療提供」とは何かを考えるのが、この「指針」の役割で、「介護者にはこういうケアをすればいい」なんて話は、きっちりと高齢者に対する適切な医療提供をしたにもかかわらず、介護者の心身に大きな負担がかかった場合に考えればいいこと。つまり、この指針が「介護者の心身の負担を軽くするような高齢者に対する適切な医療」の提供に失敗した場合の話です。

 どうすれば「介護者の負担が減る、高齢者に対する適切な医療」を提供できるのかを論じるべきで、そこを放棄しておいて、本題とは関係のない事項を扱い、介護分野に丸投げすることで「なにか対策をとりました」みたいな顔をするのは、ダメだと思います。

 この項目、全部削って、「介護者の負担が減る、高齢者に対する適切な医療」を提供するための指針について書いてください。

  ☆

7.「患者本人の視点に立ったチーム医療」

・患者もチームの一員であることを理解し、患者本人の視点に立った多職種協働によるチーム医療を行う。

7.1. チーム医療とは「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」100) と定義される。高齢者に対するチーム医療の適切な導入は医療の質・安全性の向上、医療スタッフの負担軽減に有効である101)-108)。医療提供者は医療、看護、介護、福祉に携わる各職種の専門性をお互いに理解、尊重し、多職種協働によるチーム医療を行う109)。

7.2. チーム医療においては、患者本人の視点に立つことが重要である109)。相談と説明を行うだけでなく、患者本人及び家族のチームミーティングへの参加を促す。患者本人及び家族が能動的に医療提供に関わることで、医療の質の向上110)、機能低下や入院の予防55)56)111) が期待できる。

  ☆

 チーム医療。はい、定義の引用がきました。

 目的と情報の共有。

 業務分担。

 連携・補完。

 …と、書くのは構いませんが、ここまでの項目で、目的は「合意形成(医師主導)」でつくると明記し、情報共有を「全て」やれと言いつつカルテ開示をやれと書かず、「誰が分担するのかわからない」「どこまでやればいいのかわからない」のを放置したり、連携補完イコール介護分野への「丸投げ」で済ませたりしているのが、この「指針」です。

 とっても、うそくさい。(結論)

  ☆

さいごに

超高齢社会を迎えるにあたって高齢者医療はますます重要性を増すが、課題は多い。医療費の膨張に伴い医療制度の崩壊も危惧されており、持続可能な高齢者医療制度を確立するために医療現場からの提言は重要性を増すであろう。また、高齢者医療にはエビデンスが乏しく、有効性と安全性の両面からエビデンスとなるべき臨床研究の充実が必要である。

高齢者医療の実践面においては、多病と多様性を抱えた高齢患者を多様なケアの場において患者側の価値観にも配慮しつつ多職種協働で医療提供を行うという高度な医療スキルが必要となっている。

従って専門知識を備え、経験を積んだ老年病専門医が高齢者医療にあたるべきであるが、増加し続ける高齢者医療のニーズを満たせる程老年病専門医は充足していない。今後、老年病専門医の育成が必要であると共に、かかりつけ医に高齢者医療の知識とスキルを啓発する体制を作ることが喫緊の課題である。

また、高齢者自身が適切な医療を選択できるように、患者および一般住民に対して支援、啓発していく取り組みが必要である。そのために、また高齢者を支える生活環境の構築のためにも、地域社会や地域行政と連携した仕組み作りが求められる。

  ☆

 誰でも分からなければならない「指針」に、何言ってるのか分からない文章を書いて、恥ずかしくないんでしょうかね。

 こういう、何言ってるのかわからない文章は、おおむね、冷静に考えたらおかしなことを言ってますから、ちょっと考えてみましょう。

1.『医療費の膨張に対して「持続可能な高齢者医療制度」を確立する』のは、制度問題であり、この指針とは無関係。この指針は、制度変更に対する「医療現場からの提言」とは全く言えない。従って、この「さいごに」で記載する必要性がない。

2.「高齢者医療にはエビデンスが乏しく」は、その通り。事実。従って、この「指針」においても高齢者医療のエビデンスが乏しく、この指針における「こういうことが良かった、悪かった」というエビデンスが確立されていない可能性があり、「こうしたほうがいいのではないか」「これが大事である」という提案が、必ずしも正しいとは限らないことを追認している。

3.多病と多様性を抱えた高齢患者を多様なケアの場において患者側の価値観にも配慮しつつ多職種協働で医療提供を行うことが高度な医療スキルである=『平均的な医療従事者には望めない、「過剰」な医療である』ことを認めている。高度なスキルを持つと定義されている「老年病専門医」の数が少ない(注:日本老年医学会の検索では、日本全国の老年病専門医を合計しても平成24年12月の時点で1535人ほどしかいません。なお、平成22年7月時点の老年病専門医の数は1475人だったようですから、二年半で60人の増加です。専門医の育成が必要という話が書いてありますが、育成が難しい高度なスキルの持ち主であるから人数が伸びないわけで、少ないのは当たり前です。今後も少ないままでしょう)ことを認めている。統計局ホームページによると、この指針で扱っている75歳以上の人口は1422万人(総人口の11.2%)であるから、老年病専門医ひとりが一万人を担当する計算。これは医療資源である老年病専門医さんを過労に追い込む担当範囲の広さ。つまり、レアな医療資源を奪い合う「過剰な医療の提供」になる。この指針の目的である「過剰でも過少でもない医療」に反する。

4.「高齢者自身が適切な医療を選択できるように、患者および一般住民に対して支援、啓発していく取り組み」「地域社会や地域行政と連携した仕組み作り」といった点は、まさしく「高齢者に対する適切な医療の提供」という、この指針のテーマに関することであり、この点をどうするのか。『仕組みづくりが求められている』のなら、仕組みづくりの指針も求められているはず。にもかかわらず、この指針には仕組みづくりの指針を全く書かないというのは、おかしい。仮に、そういった議論をしていないというのなら、この指針自体が中途半端な代物であると、自ら証言していることになる。完全パッケージとしての「指針」ではなく、β版。パブコメにかける以前の段階。

5.『個人の「高度な医療スキル」が必要にならないように、スペシャリストが集まることで、実質的に高度な医療スキルを実現する』のが、チーム医療を推進する理由であるはずで、かかりつけ医のスキルアップの提言などは、そのごく一部にすぎないはず。視界が狭い。

 とりあえず5つほど考えてみました。

 これで、「さいごに」の項目で言っていることが、なんとなく、わかりますか? 

 要らないことを削って、整理します。

A.老年病専門医は、高度なスキルを持つが、数が少ない。

B.他職種協働なのだから、全ての患者に専門医があたる必要はない。

 えーと、これだけですね。

 て、ことは、『基本的にはチーム医療であたる。ひとりの高度なスキルが絶対必要な方については、そちらにお任せする』という分担でよさそうです。なぜか、そのように書いてませんけど。どういう分担なのか、どうバトンタッチするのか、最後まで読んでもわかりません。

  ☆

 あー、長かった。

 ひととおり読んでみましたが、これ、指針じゃないです(断言)。

 よくまあ、こんな未完成どころか骨格すらないような代物にパブコメを出してねと言えたものです。これをなんとなく公費の「研究」として認めちゃっている厚労省のお役人さん的には、120%お役所の作文でできている指針というだけで「み…見たこともないほど美しい指針だ。素晴らしい」とか言ってるのかもしれませんが、フツーにみれば、現場を混乱に陥れるだけの「駄文」でしょう。

 内容を一言で言うと、「老年医学会が認定している老年病専門医制度や老年病の講習会の参加者数を増やしたいという思惑と研究班の思惑がなんとなく一致したので、お墨付きとしての『厚生労働省の出資した研究』としての価値がある立派な指針を目指したけれど、結局『多様性』と『慢性疾患の治療が見込めない』という壁が大きすぎて、挫折。様々な問題点に対する指針を示せないのに、研究成果を出さなければならないという状況に陥り、【慢性疾患は治療できません】と正直に書きつつも明記はせず、『医師以外の職種を巻き込む』と書くことで指針を示しているかのように作文をして、お茶を濁して面子を保った」という内容。

 もう一度書きますが、

目的は「合意形成(医師主導)」でつくると明記し、情報共有を「全て」やれと言いつつカルテ開示をやれと書かず、「誰が分担するのかわからない」「どこまでやればいいのかわからない」のを放置したり、連携補完イコール介護分野への「丸投げ」で済ませたりしているのが、この「指針」です。

 需要の仕分けのための指針…かと思ったら、仕分けができない仕様。

 需要を満たせないけれど仕分けもできない、じゃあ、高齢者はどうすればいいの?

 この指針によって、今までよりよくなることって、何?

 さあ、どんなパブコメを書けばいいんでしょうか。

 少なくとも、この指針を手放しで「良い」などと書くのは、ありえないわけですが、「半分以上おかしいから、全面的に直せ」っ書いて、まともに相手する気、あるんですかね?(たぶん、ない)

  ☆

【おまけ】

●今回はかなり偏った視点で指針を読んでいます。

 好意的に読めば、いいことを言っている部分は多いです。ただ、それらの行為を担保するものがないに等しいだけで。本気でやるというのなら、面白い試みです。分担と範囲をきっちり決めて、すぐさま実行してほしいことばかりです。

●日本老年医学会は、過去のOTC薬関連の評価において主張してきた様々な話の根幹になってきた『必ず専門医に見せるべきだ』『少しでも有害事象のある薬は医師が管理する』という点を、この指針によって、日本老年医学会自身で否定したと考えられます。ほら、『分担』や『範囲』の定義がない指針ですからね、これ。

 で、緩和医療に言及するなら、当然入ってくるべきセルフメディケーションとスイッチOTC薬認可の話には、この指針は、一切触れていません。

 薬事日報さんの記事を引用するなら、

老年医学会は、「合併症と併用薬に配慮し、効果と安全性に留意しながら、常に少量・少数の薬剤で治療に当たることが高齢者薬物療法の原則」と高齢者のセルフメディケーションに慎重な立場を表明した。「少しでも有害事象の危険性のある薬剤は医師の管理のもとで処方されるべき」とも指摘した。

 と言ってるのが、この指針の協力団体の、日本老年医学会さん。

●指針について、 「いやいや、あの文章は、これこれこういうことを示しているのであって…」だとか「それは基本的要件ではありませんので…」なんていうことを後付けでおっしゃる方がいるかもしれませんが、「だったら、そう書けばいいじゃん」でオシマイ。そう書かなかったんだから、欠陥でしょ? 「責任回避以外は、何も決めていないに等しい指針」なんて、欠陥商品以外のなんなんでしょうね。

 全面的な書き直しが必要だと思います。

 必要ない項目を削り、範囲・分担の明記をし、都合が悪いからわざと入れなかっただろう重要項目の検討をして、分かりやすい言葉で書くだけです。

 ここで「厚労省の研究だから年度末の締めきりが…」なんてことを真顔で言うような研究班だったら…。高齢者医療の根幹の仕上げよりも、役所の締め切りと予算の返却のほうが優先だなんて。ああ、こわいこわい。部活の予算獲得のために友人を売るようなマネを、いい歳したオトナがしているなんて…。そーゆーのは、フィクションの世界だけであってほしいものです。

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日薬総会議事録2012年6月「まとめてみた」

久々に、日本薬剤師会総会の議事録を読む遊び。

今回、2012年6月の日薬総会の議事録要旨は、最高傑作です。

最高傑作なんですが、ほとんどの答弁、世間にはお見せできません。(酷過ぎて)

  ☆

 議長を決める際の仮議長のセリフ、
「小野代議員は、福岡県選出の代議員として前期の議長を務められ、総会の円滑な運営に尽力されたことは御承知のとおりである
の段階から、ツッコミたくて仕方がないという、まさしく五秒に一度のスリルと興奮。

 たしかに、過去の議事録における小野議長の「執行部にとって都合の悪い質問を打ち切る手腕」は超一流だと感心していますが、それを円滑な運営と呼べるんだと想像した瞬間に笑いが。「円滑な運営に尽力したけれど無理だったので力技でねじふせたことは御承知のとおりである」とは言えないのもわかりますが、様式美を守ると変な感じになります。しかも、副議長候補者も、おんなじ紹介の仕方なんですよね。こういう部分には、きちんと様式美を導入するのに、自分で決めた他のルール(様式)は守らないのが、日薬クオリティ。

 そういう思考の持ち主を評して「正副議長の選出を公平に行える人」として「最適任者である」と認めた議事運営委員会の『検討』の薄っぺらさが、また、なんとも微笑ましいというか。議事運営委員会はこれまでも「反対者が起立する投票」とか「×印をつける投票」のようなトンデモな運営を押しとおしてきましたから、公平性、中立性、透明性に欠けた委員会であることは間違いないと思います。議事録があったら読みたいです。どんな人の声が大きいんでしょうか。

 議事録には、「(「異議なし」の声あり)」という文が出るのも、笑いのツボです。いえ、どうみても異議がでそうな案件ほど、そういう「声」がでるらしいので。専属ナレーターでもいるんでしょうか。いえ、こういうのって、「異議がなければ挙手をお願いします」でも、「異議のない人は起立して」でも、いいわけなんですよ。なのに、議長が、異議のある人・ない人が何をすればよいのかを伝えない進行をするから、わけのわからない「間」ができているんですよね。講演会の質疑の際の座長なんかも、よく、こういうミスをやります。「質問ある方いらっしゃいましたら、どうぞ」みたいな。手続きを円滑化するために存在する議長・座長が、手続きをすっとばして曖昧化する手助けをするなんて、役職とは正反対の行為です。まあ、こういうのも含めて、円滑な運営というのですから、「円滑」という日本語の意味がわからない子供が増えても、仕方がないところ。円滑とは、「笑点で、円楽さんの隣に座っている人が滑る」ことですと教えたら、それがスタンダードになったりして。

  ☆

 今回はあまりにもアレなので、箇条書きで。

A:日薬会館

 日薬会館は「一応条件に合致する」物件の価格交渉に入っているらしい。

 にもかかわらず、「薬害資料館を日薬会館の中に併設してはどうか」という質疑に対して「大賛成である」と七海さんが答弁。

 当初の条件(未公開)には薬害資料館のぶんについて計上されていないはずなので、当然、価格交渉物件は一旦、打ち切られるはず。薬害資料館となれば外部の研修利用も含むので大ホールが必要になるはず。

 計画に一貫性がない。リップサービスだとしたら、薬害の被害者の方々に対してどう言い訳するのか。

 建物に必要な空間を検討するのに、レゴブロックでも買ってきて、いろいろと試してみる位、簡単な仕事だと思いますが…。どうも、そういうイメージづくりをせずにあれこれやっている印象です。

B:シンクタンクつくれよ

 三浦常務理事が「慎重に検討する必要がある」を繰り返す。

 日本語に訳すと、「なにもするきはありません」。

 ほとんどの答弁が、こんな調子。

 薬価引き下げ額が5500億円で、調剤プラスが300億円という状況を他人事として発言。「手当を5万5000円引き下げるかわりに基本給を3000円上げる。ボーナスはないけど」という話でも「他の人の調査結果が出ないと、状況がわかんない」と言えて、しかも「なにもするきがありません」な人が中医協に行っているようです。中医協でなにをしているのかの報告だけだったら、傍聴席にまともな報告要員を置くだけでできちゃいますよ。

 なお、児玉会長は「シンクタンクは置かないけど政策を考える委員会を設置する予定」と言い切りましたが、もちろん、そんなものは、10月になっても、どこにも設置されていません。はいはい、やる気無いのにリップサービス。いつもの芸です。

C:J-PALS

 今後の展望「各学会の認定と連携する」と答弁。しかも日本腎臓病薬物治療学会が腎臓病薬物療法認定薬剤師認定試験の受験資格の一つに「J-PALSレベル5以上」を加えたとのこと。

 あーあ、やっちゃった。

 過渡的認定者しかレベル5がいない今やってどーするんでしょうね。

 専門を極める前に、凄いジェネラリストである必要がある…という考え方って、あとで自分の首を絞めるだけです。良い意味で薬理バカの教授に「PS項目全部できてなきゃ専門家だと認定しない」とか言えるんですかね?

 まあ、実際は、

 (3)日本医療薬学会認定薬剤師、日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師(5年以上)、日本薬剤師会生涯学習支援システムレベル5以上、薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師あるいは日本臨床薬理学会認定薬剤師のいずれかであること。

http://jsnp.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20121016114129-9966A533138927B59AB59699D5FF6E0799631F11DBBA39E2158E587FA94F1AE5.pdf

 なので、正直どーでもいいんですが。(だって、薬剤師研修センターの認定薬剤師と同レベルってことですよね、この扱いは)

 北海道の熊川代議員は「J-PALSのeラーニングは会員増強の大きな武器になる」なんてことを言ってますが、職位認定機関は、できるだけ講習会をやらないのが基本。質疑の中にある「ヒューマニズム」とか「法律」なんて、やっちゃだめです。七海副会長が答弁した「日薬にしかできないもの」だけやってればいいんですよ。eラーニングを進めるなら、そのプラットホームのシステムだけ提供して、コンテンツは各県薬や教育機関に投稿させれば済む話。日薬だけしかできないものっていったら、本来は、自分たちで制定した「薬剤師倫理規定」あたりなんですが…。外部の人である筆者でもコンテンツをつくれちゃったので、日薬は、特に何も用意しなくていいんじゃなかろーかと。

 ちなみに、J-PALSの登録数は平成24年8月28日で、7367人、過渡的認定者は3140人なのだそうです。(宮崎常務理事は、過渡的認定者を1万人にしたいのだそうで)

D:日薬功労賞

 スポンサーがつかないと表彰できないのだそうですよ

 へー、薬剤師倫理規定第四条に、「先人の業績を顕彰し」って書いてあるのにね。

 会費でやればいいじゃん。

 なんでやらないんでしょう。

 業績の顕彰は、会費の正しい使いみちじゃないんですかね。

 その理屈でいえば、業界の偉人の墓や、薬害資料館も、「スポンサーがつかないから無視」するってことですかね?

E:理事選任方法

 会員は、どうやったら、理事に立候補できますか?という問いに対して、

 「総会で代議員が動議を出せばいい」という、前代未聞でアタマのねじがやばい回答。

 誰かスクリューキッドとケンダマンを呼んできてくださいっ。

 だって、総会当日にならないと立候補者がわからない選挙なんて、成立するの?

 あと、児玉会長が、勝手に脳内で「理事は会長候補者が理事候補者を示して総会で選任することに第77回総会で了承された」と、ありもしない事実を捏造

 更に、自分たちで「理事者は総会でひとりひとり決める」定款をつくっておきながら、「誰でも理事者になりうるが、しかし今の国の情勢等に鑑み、そのような形で組織を作った場合、果たして会務運営を円滑に行うことができるのかは疑問である」と述べる始末。まあ、この方たちの言う「円滑な運営」って、議論を封じるってことですから、むしろ円滑な運営ができないほうが、正常化して良さそうですね。

 「理事の候補者を選んだのは誰か」という質問にも、児玉会長は「定款と前回総会の儀を経て、私が選ばせていただいた」と述べています。それに対して質問者が、知ってる人も知らない人も候補者にいるけど、どうやって理事としての適不適を判断すればいいの?と尋ねると、「事前に各理事候補者の簡単な履歴を書いたものを代議員にお送りしている。それともう1点申し上げるが、今まで、副会長以外の理事は会長の指名であった。今回新しい理事候補者を私が選ぶのと、同じような状況ではなかったかと思う」と答弁。

 おいおい。(中尾彬っぽく)

 あなたは、まだ、前回総会で推薦された「会長候補者」であって、会長じゃないんですよ。

 あなたの言ってる理屈はね、中西さんと児玉さんで会長選挙をしているときに、まだ候補者であるところの中西さんが「私の選ぶ理事はこの人たち!」なんていうペーパーを日薬のお金で代議員に配布して、「この人たちの中で良くないと思う人がいるなら×つけてね」と、その時点では不必要極まりない行為を迫るようなモノなんですよ。

 もし、そーゆーことされたとして、児玉さんは、何の文句も言わなかったとでも?

 なんてゆーか、ここでも、自分で決めた定款やら選挙規程やらに忠実でない。

 薬剤師倫理規定的に、第三条の遵守なんて、まるで遠い話。しかも、ルールを破る理由として倫理規定の第一条や第二条を唱えるでもなく、『これまでもそうだったじゃん』という理由を挙げる始末。

 「おまえら代議員が選んだ俺様が選んだ候補が理事として不適格なんてことはありえない」という態度全開。はいはい、民主党思考ね。

 理事の選任方法に文句を言われれば、「それは皆さん方の各ブロックから出た議事運営委員の総意でお決めになったことだということは、ご理解いただきたい」と、責任転嫁する児玉会長。

 議事運営委員が定款を逸脱しているのだから、指摘して、正しく運営させるのも、定款を守る代表者の仕事。定款を読んでないような運営委員なら、全員解任するなりすれば? へっぽこな選任方法を議事運営委員会が出してきても、そのまま認めたのですから、むしろ、おかしな選任方法だと代議員が総会で意見しなければならない状況のおかしさに気付いてほしいです。要するに、議事運営委員会の委員と、他の代議員さんたちとの間で、情報交換や意見交換がされていないってことですよね? 

F:会費の算出方法

 これまでは「県薬会員の数と厚生労働省登録開局数をもとにA・B会員賦課数を算出して計算」していたとのこと。

 今後は「県薬から報告のあった県薬会員数をもとに」計算する様子。

 うわー。すごーい。日薬って、自前の名簿をもってないんだー(棒読み)。

G:薬剤師年金

 責任準備金が250億円足りない。これは穴埋めのしようがないでしょうから、素人目に、破綻していると考えて良さそうですが、どうなんですかね。(日薬雑誌にQ&Aが載っていますのでそちらも参照してみてください。おおざっぱに要約すると、「来年のことはわからん。ダメならダメで支給額を下げて保険料を上げる」)

 で、そんな薬剤師年金を、わざわざ、日薬の事業として組み入れるのだそうですよ

 今回の議事の議案の一つは、これを定款に組み込むことなんですよねー。

 20億円の日薬会館関連で、あれだけ騒いでいた代議員さんが、その10倍の借金を背負った物件を組み入れるのに対しては、124名が賛成なんだそうで。19人しか反対してないんですよ。すごいなー。これだけのお金が動く話なのに、一般会員には、代議員の投票行動について、一切知らせてないんでしょーねー。

 20億円の家を買う「資金を用意するだけ」のことに要した議論の時間よりも、200億円の借金を背負った同居人の「保証人になる」ことに要した議論のほうが短いって、どういうことなんですかね? 定款に書いちゃって。保険業にまでなっちゃって。公益の職能団体? どこが? 資金規模で見たら、薬剤師年金維持機構以外には見えませんけど。(薬剤師年金については、これまでもあれこれ書いてきたので割愛)

 執行部は「別会計だから」の連呼。

 ああ、そうそう、定款によると、

 第39条 理事会の決議は、決議について特別な利害関係を有する理事を除く理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。

 とあります。

 この案件を総会の議題にするにあたって、理事会にて決議をしているはずなんですが、その際に、「特別の利害関係」であるはずの「薬剤師年金に理事自身が加入している」という条件に該当する人は、参加していないんですよね? そうなんですよね? 誰が薬剤師年金に加入してるのかはどーでもいいんですが、直接的な利害関係にある理事は決議に参加しないというのを決めた人たちなら、そこのところはきっちりとやってくれていると信じたいところです。(それとも、被加入者であっても特別な利害関係はないと言えるんですかね? あるいは、旧定款に基づいているから関係ないですか?) 政権が倒れる間際にトンデモ法案を連発して通す内閣を、新しい内閣を選ぶ人たちが認めちゃったわけですけれどね。

H:処方せんに病名を記載しろ?

 電子ネットワークによる病名把握の話が、なぜか処方せんに病名を記載する話にすり替わっていく様子。

 三浦常務理事(当時)が「処方せんに書かれた薬剤がその病名に合致しているかどうかのチェックも我々の仕事になってくるであろう」「適応外であった場合の保険請求上の問題等も併せて考える必要がある」などと、わけわからんことを言い始め。(病名だけで判断するような薬剤師はダメでしょ。医師側が責任を持つべき機械的な病名・適応チェックを薬剤師にやらせる発想がでてくるのが驚き)

 で、質問者の西尾代議員は民主党の桜井議員の「現在、薬剤師は病名を知らないで服薬指導をしているので抜本的な改善を要望する」との言葉を引用。

 抜本的っていうなら、「医師は患者に必ず病名を文書で伝える」「医師はカルテ内容を共有データベースにて公開するのを義務化」くらいやれば、話が早いんですが、そういう提案をしたら、桜井議員は難色を示す予感。「病名をつけた本人である医師しか病名を知らないのが問題なんですから公開したら?」といわれて、「はい、そうします」という医師がいっぱいいるとは思えないんですよね。ほどよいグレーゾーンって大事ですし。

 地元が同じ生出副会長が、桜井議員の出す例として「誤嚥性肺炎を防ぐために医師はACE阻害剤をあえて処方するケースがあるが、その時に何も知らない薬剤師は患者に『血圧が高いですか』と聞いたり『副作用で咳が出ます』等、とんでもない服薬指導をしてしまうことになる。従って、薬剤師には病名や検査値を伝えることが必要であると述べられている」と追加答弁するのですが、処方せんに「病名」として「誤嚥性肺炎の疑い」って、書けるんですかね? 保険適用がないんですから、書けませんよね。むしろ、そういうのは、処方せん内の薬剤の使用方法の欄に「誤嚥性肺炎の防止のため」と明記するのが『処方せんの正しい書き方』だと思うんですが。正しく書かれてない処方せんを出して、患者に対して誤嚥性肺炎の防止だと伝えることもなく、それでいて「病名を知らないくせに、とんでもない指導しやがって」と怒っているのだとしたら、びっくりです結論としての「薬剤師に病名や検査値を知らせるべき」に至る考え方が変です

 生出副会長が引用した中で、「血圧が高いですか」は、高血圧以外の使用方法を想定して質問しているわけですから「とんでもない」とするほうが間違いですし、「副作用で咳が出ます」は事実ですから、問題ありません。そういった情報をうまくまとめて納得してもらうのだって薬剤師の能力のひとつだと考えるなら、「とんでもない」と言う桜井議員に対して、「とんでもない? そんなことはないですよ。むしろ逆です。今できる最大限の情報収集をしているだけなのですから」と教え諭すのが、対面販売について強く強く主張している生出さんのお仕事かと。(もし仮に、『病名を知らないからダメな指導をされる』という説に賛成するなら、対面だろうがなんだろうが、適切なOTC販売なんてできるわけないじゃないですか!)

I:医薬分業の当初の目的

 竹上代議員が「医薬分業率」(日薬的には院外処方せん発行率)が低下していることをどう思うかというアバウトすぎる質問に、小田常務理事が順調だよと答え、竹上代議員が将来展望を質問。

 児玉会長が、完全分業とは医薬分業の当初の目的が十分に果たせているか、中身がきちんとしているかを意図していると回答するも、日薬がどう手立てをするのかは「課題」として先送り。

 あのー、医薬分業の当初の目的って、「医師だけが処方せんを書いて、薬剤師だけが調剤をする」ということですよね? 院外とか院内とか関係なく。だから、手立てって、単純で、「医師以外が処方せんを書くことを禁じ、薬剤師以外が調剤をすることを禁じる」ことですよ~。(ここで「いやいや、経済分業うんぬん」…と言い始める方は、『当初』=昭和だと思っているかと想像しますが、ここでの『当初』=明治ですのであしからず)

 もしかして、児玉会長、そう思ってないんですかね?

 そう思っていなかった疑惑とか、ありましたけど。どうなんでしょう。

 一般質問にて、佐々木代議員から「薬剤師法第19条」について質問されているときも、「院内処方なら、必ず薬剤師を置くようにもっていく(現実的に、医師が全部調剤できないし、例外規定にも合致しないわけだし)」とは絶対に言わないあたり、医薬分業の祖が聞いたら泣きそうな認識です。あ、19条の答弁は書けません。あまりにもひどくて。

 日薬が良く使う「完全分業」という言葉については、役員の間で定義が定まっていない様子。ちゃんと決められないのに使われても、みんな困るだけですよ。「千葉のネズミの王国」という言葉から想像するのは素敵な遊園地なんですが、同じ言葉で「どぶ川の隣の廃墟」に連れていかれるのだと想像すると、汗だくです。

J:管理薬剤師の義務範囲

 管理薬剤師は自分のスキルアップのために他の薬局で腕を磨いちゃダメなの?

 という質問。ノブさんが「ダメ」と述べておしまい。

 まあ、腕を磨くって言葉の意味がわからないので、答えようがないわけですが。

 管理者は他の店舗で保険薬剤師として調剤したらダメっていうのは基本の話で、兼務可能な状況は決められて(学校薬剤師とか卸さんとか)います。管理薬剤師といってもいろいろで、ひとり薬剤師薬局の管理者は常勤の管理代行者をおけません。

 でも、これ、「勤務時間外」=休日の話のようなんですが。

 なんか変。あ、でも、勤務時間外であっても、基準調剤加算をとっている薬局の場合は、そんなの関係ないですね。

K:薬歴を薬剤師法にいれてほしいらしい

 道明代議員の質問。薬剤師法の中に薬歴を入れてほしいんですと。

 薬歴を医師のカルテと同様に考えている模様。

 医師のカルテは薬剤師の調剤録。調剤録は内容が明白。薬歴は「内容を固定化できない」。読む人によって読解力・理解力の差がでるものは解釈の幅が変動するため、どのように書こうとも「こんな薬歴では薬歴と言えない」とギャーギャー騒ぐ人が出てくるのが落ち。「薬歴の記載を拒否する患者がいるから、法律にしてくれ」という意見にしか聞こえないので、真剣に取り合う必要はないと思います。総会質疑として出してくること自体が驚き。

 一応、児玉会長の芸風っぽく言い添えておくと、「この質問は大阪ブロック(児玉会長の地元)の総意でお決めになられたものであります」。

L:薬剤師調査のデータ利用を

 質問自体は、薬剤師全体の把握によってボトムレベルの引き上げを図りたい、地域内の連携をとりたいという、良い質問。

 それに対して、七海副会長が変なこと(危険性etc)を言ってるんですが、ちょっと書けません。県の事業について、七海副会長は知らないのかな…???

 まあ、それ以前に、日薬は自前の会員名簿を持っていない(大事なことなので繰り返し)のですから、自分の会の会員すらも把握できていないんですけれどね

M:認定資格の活用

 大阪の山本代議員が日薬独自の認定をつくれと。

 だから、職位認定組織が、それ以外の認定をしちゃ、ダメなんだってば

 そういうのは、学会なりなんなりでやればいいの。

N:日薬学術大会を学会化しろ

 静岡の松山代議員の質問。「若い薬剤師にとって魅力的にうつる」ですか?

 そっかなー。魅力的ねー。悪徳経営者とか地域薬剤師会とかとトラブルになったときに公正に助けてくれるなら魅力的ですけど、論文を載せる場所を増やして、なにか魅力的?

 職能の団体そのものが学会って?

 日本医師会って、学会でしたっけ?

 あ、学会化するなら、当然、保険業なんてやってる場合じゃありませんから、薬剤師年金の事業化に対して、松山代議員は反対投票したんでしょうね? 学会化をマニフェストに掲げた児玉会長が年金事業を選択したってことは、言葉とは反対に、学会化する気なんか全くないってことですからね。(保険業をやってる学会って…うさんくさい…)

 で、「勤務薬剤師はポリティカルな問題には興味がない」とも言ってますが、クリニカルラダーのPS項目の中には、ポリティカルな問題が結構記載されているのですが…。自己研鑽したくて勉強したい薬剤師なのにポリティカルな問題に興味がないって、すごーくバランス悪いです。そういう偏った薬剤師をもっと育てたいってことなんでしょうか。社会薬学的にはダメな感じ。

 ・・・と、日薬学術大会を「お祭り」だとしか考えていない筆者は、書いてみます。 

 日薬学術大会の発表のうち、論文化されているものがどの程度あるのかとか、査読に耐える「目的と結論が合致している」ものがどの程度あるのかとか、冷静にみてから、考えてほしいです。

 今回の学会を通して査読をやってみた後の今なら、松山代議員も、別の結論になったかもしれませんね。

 職位認定組織が学会化したらダメなのは、言うまでもなく。

O:学校薬剤師部会の部会費

 鹿児島の吉水代議員の質問。「学校薬剤師部会の部会費は、来年度からは、当然、定款にあるように、総会で承認が必要な会費規程に計上するだろうけれど、部会員ごとに徴収するんでしょうね」 といった内容。

 まあ、そうなりますよね、普通。

 曽布川常務理事は、なぜか「検討中」と返答。「これから二年かけてきちんとさせたい」のだそうです。任期切れてるじゃん。オバマさんが「これから6年かけてやります」って言うのと同じでは???

 関連で、安東代議員が質問。もう検討協議をやったのか?

 回答は、「いろいろ検討している」。めっちゃうやむや。

 どーせ、なにもしていなかったんでしょう。

 で、児玉会長が「日学薬の持っていた財産は、日薬とは関係ない」と断言。

 じゃあ、日本学校薬剤師会は解散したのだから、財産は会員に返すべきじゃん、という素直な意見がでます。

 児玉会長は、「日本学校薬剤師会のお持ちになっていたものであるから日薬は口出しできない」と言いますが、協議の中で、日学薬から、どうするのかを聞いていない様子。なんか、ずさん?

 そこへ鳥海代議員登場。「やがては日本病院薬剤師会、あるいは日本女性薬剤師会も統合され、その中で同じ事業活動ができる環境づくりを…」って、女性薬剤師会はともかくとして、病院薬剤師会って、職域の会でしょ? これも部会にする気? なんで、職能の会が、職域の会を減らす方向で進まなきゃならないんですかね? こういう、まだ日薬=職域連合会のつもりでいる人にとっては、『薬剤師の将来ビジョン(暫定版)』は、素敵なバイブルなんでしょうね…。

 あ、ちなみに、日薬学校薬剤師部会の担当副会長は藤垣さん、部会長は村松章伊さんになったようです。日薬雑誌11月号98ページ参照で。

P:役員報酬がおかしくないか

 議案5号。「日薬会長の報酬は月額120万円(年額1440万円)まであげられる」に対して、報酬を上げるってどういうことかと質問。なお、この額の中には、会長のホテル代は含まれていないとのこと。おそらく、交通費も含まれてないでしょうねー。

 4月1日からの役員報酬等規程では、会長540万円、副会長324万円、専務理事540万円、常務理事252万円が年間報酬として決められているとの説明。これでは、「外部の人を役員に招聘する」には足りないのだそうで。

 しかも、児玉会長いわく、「これからの日薬はいろいろな人材を入れなければならない。いろいろな人材を入れるということは、それなりの報酬を払わなければならない人が会長や、副会長になるかもしれない。そのことを考えて、このような幅を持たせたのが私どもの意図であって、お手盛りのようなことは考えていない」なのだそうで。

 「それなりの報酬を払わなければならない人」って、なに?

 それ、なにを基準に決めるの?

 「規程の報酬で仕事をする人」以外のことを、なんで想定しなきゃならないのでしょう。

 組織の身の丈にあったサラリーキャップ。それでいいのでは?

 人の苦境につけこんで、働く前から報酬を上げようとするよーな人が会長とか役員とかで、いいんですかね? そういう人でも、理事に立候補したら、通るシステムなんですかね?

 「民間企業と較べて…」とか「報酬が低いと誰もやらない…」とか、執行部が言いますけど、だったら一般の「理事」にも報酬を出す規程にしたら?

 理事を選挙して、理事の中で会長副会長を決める仕組みを作ったのは、児玉会長。

 四月からは540万円と決めたのも、児玉会長。

 で、昨年度はというと、900万円もらっていたと、東京都の小野代議員が確認。

 900万円は前法人の規程の「報酬の付加」によるものだと説明。四月からの新規程には、報酬の付加の項目は、無し。

 えーと。よーするに、今の定款のままだと「付加」できなくて、給料が360万円減ると踏んで、あわてて定款を変えるわけですか。ふーん。

 これだけ質疑で揉めたにもかかわらず、神田決算委員長の報告では「適正に運用されている」の一言でおしまい。なるほど、「付加」に、理由はいらないわけですか。内閣官房機密費ですか。

 まあ、今回、第五号議案に賛成した方々は、こーゆー説明に納得していて、それらの説明を地元の会員にしてみて、納得してもらえると思っているんでしょうから、ぜひ、説明してほしいものです。

  ☆

質問関連は、以上。

ここから理事の投票に移ったようです。

定款・選挙規則通りなら、ひとりひとりに「決議」を行うので、30回くらいたちあがることになりますが

「選択肢1と2から選ぶ。1は全員選任OKの意味。2は×印をつけた人以外は選任OKの意味」と、規程になさそうな選挙方法で押し通した模様。

場内の代議員数が139人、委任状と書面評決が9人。148人の過半数で、75票が当確ライン。

全面賛成の「1」が、会場88票、書面2票。

白票・無効票が5票。

「2」が、53票。

×印は、集計した様子なし。(あれ? 追加選挙の時に困らないのかな? それに、理事選挙における代議員の×って、会長を理事会で決める際の、理事にとっての重要な指針だと思いませんか? 53票全部、特定の人物に×がついている可能性だってありますよね?)

「この選挙では」、1が過半数だからという理由で、全員選任されたことになるようです。

で、審議終了の宣言をしたあと、小野議長が、こんなことを言います。

「この後、ただちに理事会を開催して、会長、副会長、専務理事、常務理事の選定を行い、理事会報告会がこの会場で行われる予定である。我々代議員(注:公益法人化する前の代議員さんたちですから、この場の代議員さんとイコールではありません)は会長候補者の推薦の決議を全会総会で行っており、理事会の結果を見守る必要がある。総会が終了しても、しばらくお待ちいただきたい」

あらら。会長を決めるだけでなく、他の役職も決めるとなると、それはそれは時間がかかりそうですね。待っていたら、大変そう。まあ、そういう仕組みにしたのは代議員さんたちですから、待つのも仕事のうちで、飛行機の時間に間に合わないからどーのという話を持ち出すなら、最初から時間のかからない方法を決めておけばよかったわけですが。

二時間くらい待つのかな…。

・・・なんてことはなく。

ええ、10分で終わったようですよ。その理事会は。

日薬雑誌九月号96ページ参照。

「定款第27条第3項により」、「第78回臨時総会の決議で会長(代表理事)候補者として推薦された児玉理事が議長となり、議事が進められた」のだそうです。

定款第27条第3項って、『3 前項の会長は、総会の決議によって推薦のあった会長候補者の中から選定することができる。』なんですけど、この中に、「最初の理事会の議長を会長候補者がやる」という条項は存在しません。

また、ここで書かれている「選定」って、どういう行為に該当するのでしょうか。誰が選定するんでしょう?

この理事会は、招集をかけられる人が存在しませんから、定款の第37条4項『前項の規定にかかわらず、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく理事会を開催することができる。』に従って開催されているはずです。総会の理事決定直後に全理事と幹事の了解をとったということですね

そこで決議、なんですが、

定款の第38条第2項に、『会長が欠けたとき又は会長が事故あるときは、出席した理事の互選により議長を選定する。』と、書いてあります。まずは、この定款に従って、理事が議長を選ぶ場面があるはずなんです。

でも、ずっと、児玉会長のターン。

まだ会長になってもいない理事のひとりが、会長であるかのように議長として進行しちゃう。

そーゆーものなんですね。

で、「俺が会長になりたいんだけど、いいよね?」と、議長が宣言したのか、誰かに推薦させたのか。

定款の第39条によれば、『理事会の決議は、決議について特別な利害関係を有する理事を除く理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う』なんですが、この場合、会長を互選するにあたって、会長立候補者は特別な利害関係だとするのかどうか。仮に理事に選ばれた全員が「俺が会長になりたいんだけど」と言ったらどうなるのか。

とっても不透明な感じです。

ここは、不透明で変な感じの決め方をしていることについて自覚しているのかどうかが肝要です。最初だからバタバタしたけど次は直す方向で、もう検討済み…とまでいけば、執行部や事務局の修正能力の高さに、会員から拍手の予感。今のところ、そういった話は表に出てきていないわけですが、さて、どうなったものやら…。

次の総会は2013年2月。代議員のみなさん、今からちゃんと予習しておいてくださいね。

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『The Pharmacists’ Haven2011』へっぽこレビュー。

浜松の日薬学術大会でとみー(碧)さんからいただいた冊子「The Pharmacists’ Haven 2011」のレビューです。10月にもらっておいて12月にレビュー。寝かせすぎな自分を反省しつつ。

The Pharmacists’ Havenって、長いので、表紙裏のブイサイン写真をイメージして、以下「ブイ本」と書きます。

  ☆

 ブイ本は、商業誌の皮をかぶった同人誌です。

 本職デザイナーの腕前が堪能できます。

 コンビニや本屋の棚に売ってたら、普通に買いそうな外見をしています。

 表紙は、デザイン文字と白黒写真。うまい。文字が写真の白いところにかぶって読めなくなっても、どうせそんなところを見ている薬剤師なんかいないよと、そのまま放置するのが職人芸。薬剤師は「情報」と書いてあるだけで手に取るんですから。三行以上の文字が並ぶと、もう読まないのが、薬剤師(←誰か否定してください)。16行も書いてあったら、誰も何を書いてあるのかなんて考えません。必然的に、二行しかない、上の空白部分に目が行きます。写真も、何かを手に取る写真を使うことで、サプリミナル効果(眉つば)をだしています。さらに、薬剤師の「造語や知らない言葉をいれると『なんだろう、これ』と考え込んで止まってしまう」性質を読んで、簡単な言葉ばかりを並べています。その言葉の選び方も考え抜いていて、「転職」「常識」「販促」「おすすめ」「海外」と、薬剤師が弱いキーワードのてんこもり状態

 想定読者である薬剤師が、どういう言葉と映像に弱いのかを知りつくした表紙です。

 そのあたり、薬剤師倫理規定擬人化本との大きな違いです。表紙に「アホ」「ヲタク」と並んでいて、ダメな萌え本っぽい絵がついていたら、薬剤師は引くだけです。薬ヲタクのくせに、そうだと絶対認めないのが薬剤師(←誰か否定してください)。

 さあ、そんなキャッチーな同人誌である「ブイ本」を読んでみましょう。

 『ためになる話も、そうでないものも。現役薬剤師+αによる、薬剤師ネタ満載の情報雑誌、創刊』

 表紙を開いて、いきなりのコピーが、これ。

 うまい。どんな内容であっても怒られない内容紹介ですよ。

 情報雑誌であるという主張が、また、薬剤師のハートにつきささりそうです。娯楽とかエンタメとか啓蒙とか研究とか論文とかいうと引いてしまうのに、情報雑誌だと「ほどほどに格調高い感じで買えるけれど、難しいことは書いてない」と判断するわけですよ。ここが大事。自分で考えなくてもいい本だと認識させるのが、薬剤師ニーズ対応のうまい手。

 たった2ページで、超絶テクニックが炸裂しています。すごい。

 巻頭は、それらを踏まえたテーマ。

 『薬剤師が知るべき77のこと』。

 きましたよ、「知るべき」!

 薬剤師(専門家)は、いつも怯えています。「自分の知識は、みんなとくらべて足りないんじゃないか」と。そういう不安につけこむのが情報誌の基本。

 獣医さんの動物用処方については『もっともくわしい動物の薬の本』(学研)あたりを参考にしている筆者。(とりあえず「猫はグルクロン酸抱合ができず、犬はアセチル抱合ができない。腎臓のNa排泄量が少ないので塩分は制限。目に輝板がある。体重当たりのカフェインに注意が必要。ねぎ(アリルプロピルジスルフィド)は貧血を起こす毒だから厳禁」とか「草食動物に抗菌薬やステロイドはきをつけろ」といった部分以外は人間の薬の薬理中心なので、具体的な細かい話はないのですが…。)

 ささっと四ページで区切り、次のネタへ。この切り替えが大事。薬剤師は6ページ(添付文書基準)以上のネタにつきあってくれません

 ハサミのネタで右ページが文字ばっかりなら、左ページはあっさりイラストのみ。こういう「さらっと描いたらPOPなデザインの人物になる」絵って、絵でキモイとか言われなくて済むので、描ける人が羨ましい…。

 薬剤師のポケットの中身というニッチな研究分野を開拓するのも、すごいところ。

 似たりよったりの中、明らかにとみー(碧)さんのコピックだけ浮いてます。

 筆者のポケットの文房具は、ほぼ自腹。四色ボールペンに赤のみのボールペンが2本、赤と黒の油性マジックに名札、大学生協で買ったミニカッターとミニハサミ、はんこ。ツムラの漢方手帳だけ貰いもの。むう。なんだかオチがつくようなものを入れておけばよかったかも。タイムマシンとかタケコプターとかビスケットとか。

 ポケットの中身を見たら、次は小説。ネタは処方せんの一回量表記。

 もはや、そんなもの推進している人を見ると、先生から言われた無理難題を、ひとりで完遂しようとする学級委員さんを見るような、微笑ましい視線をおくりたくなる、あれです。今じゃ誰も言わない「グローバルスタンダード」。先生に言われたことは何も考えずに周知するという、学級委員としては体制派すぎる生き方もまた、処世術。

 んでもって、次はカラフルに、販促グッズ。ちびまる子ちゃんのうちわを配るなら、ちびまる向ちゃんのうちわも作ってほしい。

 続いてバイアグラ小説。このあたりの、写真と文字との交互の構成が素晴らしいです。

 おすすめホームページにはPMDA、パンダさん。とりあえずここを載せておけば文句を言われないよね、という政府公認ホームページです。真面目です。筆者だったら、鮠乃薬品さんとぐり研さんとアポネットRさんと東京都薬剤師会北多摩支部まで載せたら、あとはプロレスの歴史がわかるページを紹介しそうです。

 さて、ここで、このブイ本のメイン企画、薬剤師四コマ。

 ペン線がきれいだなー。KANZ先生凄いー。ソルデムって全部に書いてあるところとか。マメさが伝わってくる良い仕事。四コマ10本だから、えーと、自分がやったら…三週間くらいかかりそうです(遅)。原作つき四コマという、ちょっと珍しい仕様。薬剤師四コマジャンプとか作れそうな勢い。KANZ&とみー(碧)先生ののマンガがサイコーとシュージンだとしたら、こちらは平○先生的な。

 残りのコーナーは実際に読んだほうが面白いと思いますので割愛。 

  ☆

 そんな「The Pharmacists’ Haven2011」をまだ読んでいない人、読むなら、今!(宣伝)

 さらに。年末には「The Pharmacists’ Haven 2012」が出そうな空気なので、「ちびまる向ちゃんE」と一緒に、お年玉を前借りしてでもゲットしたいところです。あ、うちの薬剤師倫理規定擬人化冊子をついでに買っても、合計で2500円くらいですよー(宣伝)

(これでレビューになっているのか心配です)

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