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スイッチOTC:よし、議事録を公開してくださいな♪

日本医師会さんが、素敵な提案をしてくれたようですので、記録しておきます。

http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20121121_1.pdf

  ☆

2012 年11 月21 日

生活習慣病分野におけるスイッチOTC 薬化のあり方について

社団法人 日本医師会

生活習慣病分野における初めてのスイッチOTC 薬化が、2012 年10月17 日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会一般用医薬品部会で了承された。

日本医師会は、国民の健康と安全を守るため、生活習慣病分野におけるスイッチOTC 薬化のあり方について、以下のとおり見解を表明する。

1.生活習慣病対策は、厚生労働省が示しているように「1 に運動 2に食事 しっかり禁煙 最後にクスリ」である。生活習慣病にともなう症状の発現を予防するためには、まず運動療法と食事療法に取り組み、医薬品を使用する場合には医師の診断と適切な治療方針の下に処方され、医師の管理下で服用すべきである。個人が容易に医薬品を購入できるようになれば、医薬品を服用しているという安心感から、運動や食事に対する配慮が疎かになり、結果として症状が発現したり、悪化したりすることが危惧される。

2.疾患の診断・治療は医師のみが行う行為であるが、医療用医薬品のスイッチOTC 薬化により、購入者の自己申告にもとづき薬剤師が服用可否を判断することになり問題である。

3.今回、スイッチOTC 薬化されたエパデールは、第1 類医薬品としてセルフチェックシートをもとに薬剤師の判断の下に販売される。
 しかし、本年1 月に厚生労働省より公表された「平成22 年度 一般用医薬品販売制度定着状況調査結果」によると、説明が義務づけられている第1 類医薬品の販売においてさえ、文書を用いた詳細な説明が十分に実施されているとは言い難い状況にある。
 さらに、セルフチェックシートに記入する中性脂肪値は自己採血キットやワンコイン検査の結果でも良いとされているが、精度管理の観点から信頼性に疑問がある。検査結果に異常値があった場合には、医療機関を受診し、信頼性のあるデータにもとづいて医師の総合的な診断を受けるべきである。
 セルフチェックシートでは、中性脂肪値が150mg/dl から300mg/dl の場合にOTC 薬化エパデールを服用可とされているが、根拠に乏しい

4.一般用医薬品部会は、委員15 名のうち薬系委員が10 名を占め偏りがある上、非公開である。10 月17 日の一般用医薬品部会では、OTC 薬化に慎重な委員の意見に十分な説明もないまま、採決に至っており、遺憾である。国民の健康と命に係わる医薬品行政の審議においては、十分に議論を尽くしたうえで納得のいく結論を出すべきである。

5.生活習慣病分野における一般用医薬品の拡大は、2002(平成14)年、一般用医薬品承認審査合理化等検討会「中間報告書」で提言されているが、その後、2008 年には特定健康診査・特定保健指導が始まり、生活習慣病予防(健康づくり)への本格的な取り組みが始まった。「中間報告書」の提言から10 年が経過しており、最近の生活習慣病予防対策の状況も踏まえて、生活習慣病のOTC 薬化について見直すべきと考える。そのための議論の場を設けることを提案したい。

  ☆

 では、提言の内容について、読んでいきます。

1.「最後に薬」は徹底されているのかな?

 主張1では、運動療法・食事療法の重要性について述べています。

 一足飛びに薬を用いることは、運動や食事に対する配慮が疎かになり、結果として症状が発現したり、悪化したりすることが危惧されるから、ダメですよという話。

 そうなると、医師に受診した場合も、まずは運動や食事に対する配慮の徹底が、医師から告げられることになると思います。個々の患者にあった運動メニューや食事メニューの目安を提示したり、そういった分野の専門職に任せたりして、まずは、運動や食事を改善することで得られる症状の改善結果を、確認するはずですよね。だって、そういうことをしないと、症状が発言したり悪化したり、するということですから。

 となると、カルテに、そういった患者さんの努力の結果をまとめた文章や記録が、必ず残っているはずです。そういった記録なしに、はじめから薬を用いるのは危険。これは、医師会が自ら主張していることですから、すくなくとも医師会の会員医師については、そうするのが当たり前であるとの認識でいいのだと思います。

 いいことですよね。受診したら、薬は出さない。まずは運動と食事を、こんな感じに変えてみましょうと指示される。詳しいことは、専門家を紹介してくれる。

 患者さんが「私、こんなに頑張ってみたんですけれど、それでも症状が改善しませんので、いよいよ薬の出番だと思います」と主張できる実績をつくって、それを証明する文書を専門家が書いて、医師が了承して、ようやく、薬の出番。

 「危惧」されるような状態をつくらなければ良いのです。

 医師と運動療法・食事療法の専門家との連携が重要ですね。

 で、医師会の主張を裏付けるためには、そういった「運動療法・食事療法」を行った記録が、どの程度あるのかということを、医師会が示さなければなりません。

 カルテに標準装備されているくらいに一般的なら、主張1に対しての反論は出ないでしょう。

 「運動しなさい」とだけ告げられて、「どの程度すればいいんですかね」と訊いたら、への字口になって黙ってしまった…なんていう笑い話にもならない医療ネタがあるくらいですから、医師が運動療法・食事療法に対してフォローして記録するという行為は、そこまで一般的ではなさそうです。

 でも、いい機会ですから、一般的になるように、専門家と協力してやっていくことも考えてみたらどうでしょうか。『生活習慣病の最初の一回は、必ず運動療法・食事療法の専門家が関与して、彼らからの報告書がなければ、原則として、初回から薬は投与しない』という基準をつくっちゃえば、専門家の関与のもとで、適切な治療方針のもと、『最後に薬』という厚労省の方針を守ることもできますよ。

2.『生活習慣病に限る』のかどうかが曖昧3cm。

 主張2は、生活習慣病領域における、「購入者の自己申告」に基づく服用可否の判断の否定ですね。

 「ちゃんと検査しなさい」ということでしょうから、これは健康診断などで検査数値をもらってきて、それをみせればOKということでよろしいでしょうか。販売基準にも、数値がでてますし。主張1を踏まえると、さらに運動療法・食事療法をすでに受けているという証明書も必要ですね。

 提言のタイトルや前文に「生活習慣病領域における」とありますので、主張2は、それ以外の疾患領域に関しては適用されないと考えてよろしいでしょうか。主張2の文章だけを読んだ人は、「全ての疾患において」医療用医薬品のスイッチOTC 薬化により、購入者の自己申告にもとづき薬剤師が服用可否を判断することになり問題であるかのように受け取りかねません。この部分については、きっちりと線引きをした文章に変えるか、意図を説明する文章を追加したほうがよさそうですね。

 文章では、OTCの話なので「薬剤師」となっていますが、もちろん、医療現場において、生活習慣病の領域で、「患者の自己申告にもとづき医師が薬の服用可否を判断」することも同様に問題であると、日本医師会は考えているはずです。糖尿病の疑いがあるのに、患者本人が「俺が糖尿であるわけがない」と、「俺のいもうとがこんなにかわいいわけがない」くらいの断言度で自己申告したら、それを受けて「じゃあ薬は飲まなくてもいいです」と服用可否の判断をすることは、問題なんですから。え、問題じゃないんですか?

 ここは、『生活習慣病領域においては、患者の自己申告にもとづき医師が薬の服用可否を判断することが問題であるように、患者の自己申告にもとづき薬剤師が薬の服用可否を判断することも問題である』というように、主張を明確化してはどうかと。

 そうすることで、医師が生活習慣病領域の薬を出す前に判断材料として必要とされるものが明確化します。明確化したものが、OTC薬を扱う薬局では決して手に入れることができない情報であるとか、薬剤師には明確化した情報を扱う権利がないとか、そういったことが誰でもわかるようになれば、議論が進展します。でも、いまのところ、よくわからないですよね。生活習慣病以外のスイッチOTC薬は、薬剤師が、フツーに売ってますから。

 よーするに、「疾患の診断・治療は医師のみが行う行為」であることと、そのあとの主張とは、全然関係ないんですけど、なんで入れたんですか?って話。

3.文書を用いてみようか

 主張3は、前半の「文書を用いた説明が義務付けられているのに十分じゃないじゃん」という話と、後半の「セルフチェックシートの値なんて信じちゃダメだ」という話に、「エパデールを服用可能な中性脂肪値の設定根拠が乏しい」の三本立て

 文書といえば、薬屋さんです。

 薬屋さんは、なにかと文書での説明を求められます。お役人さんが、文書、好きなんですよね。なんでもかんでも、文書。保管倉庫が必要な状況をつくりたいようで。

 お役人さんが、患者目線で考えた結果として、「文書を用いて説明する」という規則になったのだと思います。「文書でも説明書きを出してね」ではなく、「文書を用いて説明」なのだということに、こだわりが、相当あるようです。

 で、医師会さんも、この「文書を用いて説明」というお役人さんの考え方に大賛成なのでしょう。だからこそ、厚労省のやっている不思議な調査結果を持ち出してきたんですよね。あの調査結果って、『能力基準のない調査担当者の主観による』もので、わりとあやふやな土台の上に築かれたものです。医師会さんは「精度管理」を重要だと考えているようですから、まずは、この調査結果自体に対して、「自己採血キットやワンコイン検査」のようなものであるから「我々が精密に調査した結果」以外は信用ならん!と言うべきでしょう。

 で、調査方法に関する集合研修を受けたりしているし、研修内容もいい感じだから、「提示した厚労省調査の精度管理がきっちりしている」という結論を得たとしたら、次に考えるのは、「なんで、この実施率なんだろう」ですよね。実施していないことだけに文句を言うのは三流の仕事。実施できるシステムになっているのかどうかを検証してはじめて、でてきた数値の意味がわかるというものです。検証しないのに信頼性があるとは言いませんよね。

 「面倒だから、そんなシステムのことは考えない、そのシステムは正しいんだ!」ということを主張しているなら、では、今の「文書を用いて説明する」システムが正しいのだと、医師会さんが考えているということです。そう、説明するのに、文書を用いなければダメなのだと。なんで、三割しかやっていないんだと。もし自分たちがそういうシステムを厚労省から指示されたら、100%できるぜ、と。

 なるほど、それは良いことなんでしょう。

 それなら、患者目線で考えたとき、「医師も、病名を『文書を用いて説明』しなきゃいけない」という流れがあってもよさそうなんですが。

 『ホンタイセイコウケツアツ』と言われてもチンプンカンプン。「今回は原因がわからなかったんだけれど、とりあえず血圧が高かったってことですよー」と言っていいものかどうか、一瞬迷います。

 仮に、医師に文書を用いて(文書を渡すだけじゃ駄目で、口頭で理解できる人でも文書を使わなきゃダメなんだとさ。調査結果を鵜呑みにするなら、説明がわかりやすかったと回答している調査員は全体(6,829)の88.3%、6009名いるんですけどね)病名を十分に説明してねという義務が課されたとしたら…。

 医師会所属のお医者さんたちが、病名を、文書を用いて説明するのって、親切ですよね。とってもいいことだと思います。率先してやってもらえたら、「薬剤師は病名を知らずに調剤していてけしからん」みたいなことをいう方も、黙ってくれると思います。患者さんから訊けますから、病名を知らずに調剤せずに済みます。とても有難いです。

 あ、そうそう、この「文書を用いて説明」ですけれど、『同じ症状で毎週やってくる同じ患者に、毎回同じ薬の十分な説明を文書を用いてしてくださいね』と、お役人さんは言ってます。疾患でも、同様にやらないといけないんでしょう。きっと。

 想像するだけでも泣きそうなことですね。

 厚労省の「平成22 年度 一般用医薬品販売制度定着状況調査結果」報告書に書いてある通り、かなりの数のOTC販売に従事する薬剤師が、マジメにやってます。「○%ではない、○人だ」と「めだかボックス」でも言ってました。これは、「6829件を調査したら、すくなくとも2048人の薬剤師が、厚労省のむちゃな要求に、律義に従っていました」という結果なんです。

 医師会さんは、この結果を見て「十分に実施されているとは言い難い」のだと述べました。「不十分」だと言い切れなかったのです。だって、どういうシステムを押し付けられているのかを想像できる賢さがあれば、これを不十分だなんて言った瞬間に、全部ブーメランとして戻ってくることが、予測できちゃいますからね。

 「中性脂肪値が150mg/dl から300mg/dl の場合にOTC 薬化エパデールを服用可とされているが、根拠に乏しい」も、根拠に乏しいことが自明でないのですが、言い切っただけでおしまい。この理屈で、様々な薬の服用可能設定を検証したら、根拠に乏しい処方なんて山ほどありそうなんで、そっちにブーメランが行きそうです。「それなら処方内容の審査を厳格にし、根拠も含めて提示する方式に変えます」とか。それこそ、専門家の自律的判断が奪われる、最悪の状況。

 だから、「十分とは言えない」程度の物証を、三つも挙げたのだと思いますが…。

 十分とは言えない、不完全なものが、いくつも集まると、どうなりますかねー?

 腕が衰えて手術ができないベテラン医師と、経験が浅いが機転のきく若い医師と、手術は上手いがアドリブがきかない医師と。みんな十分とは言えませんが、力を合わせれば、良いチームになりそうなんですが。

 この項目の話だけ組み合わせてみても、「口頭説明だけでも88.3%が満足しているが、そんな薬剤師による文書での説明や判断を補完するため、チェックシートを用い、融通のきく数値目標を示した。もちろん、『医師への受診や再検査』の推奨は、常に選択肢に入っている」という状況です。

 いろいろ挙げてもらったことで、むしろ、「案外安全にできそうじゃん」と…。

 「ひとりひとりが完璧でござる」という言葉が並ぶより、「十分じゃないけど、協力して頑張る」のほうに好感を持つ筆者の中では、この項目って、「反対」の要素ではなく、「賛成」のときに出す要素に思えます。完璧超人より正義超人のほうで、どうでしょうか。

4.そうそう、公開しましょうよ。

 主張4は、素晴らしいです。

 えーと、まず、三分の二が議題に関係の深い職域の委員であることは偏っているというお話ですので、今後は、適切な割合を提示して、その割合でやる方向に、医師会さんが積極的であるということですよね。だから、是正を求めていると。

 これは、もちろん、他のすべての審議会で適用される話だと受け取ります。

 薬系とか医系とかをどのように分けているのかは知りませんが、医系が三分の二をこえるような審議会も、ダメだと。認めないと。そういうことになります。そこでの議論で得られた結論に対して、他の委員がダメだししてきたら、ダメ出しを無条件で受け入れると。

 なるほど。まあ、他の職域の委員やお役人さんたちは、そんなことはしないと思いますが、医師会さんが自らそうしたいというのでしたら、特に反対する方はいないと思います。

 次。非公開であることを重要視しています。

 そうですよね、公開すればいいんですよ。ものすごくたくさんの意見書を、この審議会がどのように扱って、どのように結論に導いたのか。きっと、面白い議事録ができますよ。

 これを機会に、公開を。もう中医協とかも、動画配信するくらいの勢いで。

 公開にするという話については、大賛成です。今後も、医系委員がいる審議会は、全て公開の方向で。

 あ、ただ、「慎重な委員の意見に十分な説明もないまま」という部分には、違和感あり。

 ほら、ここまでで「十分とは言い難い」みたいな言葉が出てきましたけれど、じゃあ「十分」って、どんな状態なのかっていう基準がないんですよね。

 国民の健康と命に係わる医薬品行政の審議においては、十分に議論を尽くしたうえで納得のいく結論を出すべきである。…という主張は素敵ですが、この文章の主語はなんでしょうか。誰にとって納得のいく結論が出れば良いのでしょうか。そこを曖昧にしたままでは、言いたいことが伝わってきません。

5.上部審議会でやれば?

 主張5。この話は、一般用医薬品部会以外に『最近の生活習慣病予防対策の状況を踏まえた生活習慣病のOTC薬化のありかた検討会』みたいな名称の部会を新しく作れという提案です。

 薬剤師による中学校での薬教育授業も始まりますし、OTC薬の分類もされましたし、様々なスイッチOTC薬が用いられていますし、生活習慣病予防の取り組みを踏まえて薬店薬局でも健康相談から受診推奨までとりくんできましたので、2002年度の報告書にくらべたら、だいぶ状況が変化しているのは、そのとおりですね。2002年よりも、OTC薬化しやすい環境がととのっていると考える人もいるでしょう。2002年を基準とするなら、そのときの検査機器の正確性・信頼性をベースに考えることもできるでしょう。今の簡易検査キットと、当時普及していた検査機械、どっちが優秀なんでしょう、とか。

 見直し。どんどんやりましょー。

 じゃあ、それ、OTC薬以外の要素がてんこもりですから、総合判断ができるところで審議したいですよね。となると、親会である薬事分科会でやればいいんじゃないでしょうか。いろいろな分野の方がいますし、現在の問題点を把握している方たちですから、すぐに意見交換を始められますよ。

 新しく作っても、ここまでの流れが見えていない方たちが一からやることになりますし、ここは現状を有効活用するのがベターかと。

  ☆

以上、読みながら感想を書く試みでした。

実行されたら楽しそうなことを見解表明されているので、今、とってもワクワクしています。

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