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倫理の研修会に、遊びに行ってきました

横浜で、「10しす(同人誌版)」の内容をちょこっと使ったプロフェッショナル・スタンダード(PS)の講義があるときいて、遊びに(むしろ恥をかきに)行ってみました。

「倫理の研修会」なんて、はじめての体験です。

なお、ブロードウェイでとろろ汁を食べてからアストロスイッチを買って、ゆったり移動して、会場についてからも受付でモタモタしていたので、最初の二十分は参加していません。

中くらいのホールに入ってみると、会場内は、ガラガラです。

薬剤師の講習会は、席がうしろやはじから埋まっていくので、前のほうはスカスカです。

目が悪いので最前列へ。ガチャガチャと音を鳴らしながら。かなり迷惑な部外者です。

最初の講演は、「倫理・専門職の条件」というもの。

【内容(一部省略)】

 神奈川県の生涯学習について。

   県薬会員じゃなくてもOK☆
   まずはジェネラリストをめざす。
   「地域・児童生徒・倫理」がキーワード。

 ヒューマニズムといえば

   ガンディー? シュバイツァー?

 倫理;社会への態度

   企業の姿勢か?
   教育研修の不足、マニュアルの不備?

 専門職(プロフェッショナル)の定義 

 専門職の条件(?)

  1.自らの教育と訓練の基準を定める
  2.長い訓練と社会化の過程を経験している
  3.免許制度という形態で、業務を法的に認められる
  4.免許付与および入会許可は、専門職成員によって統制される
  5.影響を及ぼす大部分の法律は、その専門職によって作られる
  6.高い所得、権力、地位をもち、
    より高度の能力をもつ新入会員を求めることができる
  7.素人の評価から比較的自由である
  8.業務規範は、法的な支配より厳しいことが多い
  9.自らの職業集団との一体感をもち、帰属感が高い
 10.一生の職業であることが多い

 専門家の中心的特徴

  専門知識と長い訓練
  サービス志向
  業務独占
  自己規制

 薬剤師倫理規定 ※

 FIP

 薬剤師の誓い

 専門職の倫理が企業価値を高める。

 これからの薬剤師(?)

  「薬剤師業務のさらなる展開」

 これからの薬剤師会

  新しい公益法人制度への移行
  薬局同業団体から真の職能団体へ
  国家と国民に対して業務独占を納得させる
  倫理規定、生涯学習、規範権力(倫理委員会)、研究活動の奨励、自律…

 「専門家として期待に添えるところまで来ているかを
  判断する仕事は、他の人たちに任せる」

(内容記述、おしまい)

もうひとつの講義は「患者が望む薬剤師とは」というものですが、こちらは省略。なんで省略するかといえば、「患者が望む薬剤師とは、薬剤師倫理規定をそれなりに守っている薬剤師です」ということを、別の言葉で示しただけだから。

面白いな、と感じたのは、「後半に話した側が、前半を受けて話す」という流れが、全くなかったこと。ひとつの講演パッケージとしては完成されているのですが、『講習会』という大きなパッケージとしての構成が、全く活きていないのです。

前半の講師と後半の講師とのすり合わせもなく、お互いの主張も知らないままに、すれ違いなまま講演を行い、講演が終わってからはじめて「ああ、あちらはそういうことをしているのかー」と講師どうしがようやく納得するようなつくり。共演したことがない歌手二人でショーを組み立ててみたら、一切のコラボが存在しなかったという、組み合わせのワクワク感を全否定するイメージでした。

前半の講師が「倫理を守れ。倫理を守るためには、こういう行動をしろ」と述べた。

後半の講師が「患者の望む薬剤師になれ。そのために、こういう行動をしろ」と述べた。

その「こういう行動」の部分が、実は同じでした♪

という話なのに、講師がそれを言わないからか、会場が微妙にスイングしていないんですよ。「前半の話、つまんなかったねー」というノリで。(注:筆者にはそう見えたというだけです。食いつきの良さは、明らかに後半部分。薬剤師は「貴方はどうなんだ!」と言っても自分のことなのに無関心なままで、背中に火がついていてもポケーっとしているのに、「患者がそう思っているんだ!」という言い方をされると、急に興味を示す生き物です)

まあ、前半の話がつまらなかったとしたら、その話の20%くらいの時間を頂いてしまった【10しす】の条文解釈関係に問題があるということでもありますが。

で、最初の講義の中の、このブログに関係する部分である「薬剤師倫理規定」について、ちょっと抜き出してみます。スライドに引用されているのが「かなりマジメな解説」部分でしたので、「あ、そこは、大学の先生みたいな人たち向けの、正直、無茶苦茶なことを書き連ねて誤魔化しているコーナーだったんです。ごめんなさいごめんなさい」と土下座くらいしておいたほうがよさそうだったのですが、講演の最中に部外者が急に土下座してもなんのことやらさっぱりです。とりあえず、心の中で謝っておいて、「この解説に対して、どんな解説をかぶせてツッコミをいれてくれるのかなぁ」と期待していたのですが、読みあげただけで終わったところもあったので、残念無念。

同人誌に書いたまんまではなく、ややアレンジして引用されていました。

第一条(任務):
安全な場所から口先だけ「命は大切だ」と言うことではありません。大切な命を守るために起こす行動のことを指します。

そうだったのかーっ!

いえ、書いた自分が忘れていましたよ。

行動の内容についてはどうこう言っていませんから、第一条は、なんでもいいから行動しろという、アクティブなもの。「正しい」かどうかなんて知るものか! です。

第二条(良心と自律):
「自律」とは「律(ルール)を自ら作り、律に沿って物事を実行できる状態が、続いていること」。「律」は欲望に対して肯定的なルールではなく、「良心と愛情」が反映されたルールでなければいけません。

ここでのポイントは、「続いていること」。継続。

第三条(法令等の遵守):
薬剤師法は「国家による身分保障」です。薬剤師を名乗る限り、この法律に従うのは当然であり、従えないのなら薬剤師免許を返上するのが筋です。

ここでは、薬剤師法が、薬剤師倫理規定第二条で示される「良心と愛情」の精神のもとでつくられていることを前提にしています。専門家として「良心と愛情」がないような法律を身分法とするのなら、そんなアホな法律で専門職の身分保障をしてほしくなんかないよ!と声を挙げる場合があるということです。これは「企業の服務規定」にも通じるところ。

第四条(生涯研鑽):
研鑽には、他人がまとめた知識・技術を学ぶという受け身の姿勢だけでなく、さらに上のステップへと自らが知識・技術をまとめ上げるという姿勢も含まれます。顕彰とは、薬学・分業などに貢献してきた先人たちの功績や善行、足跡を評価し讃えること。後進の育成とは、自分の業務だけではなく、後輩や職場のレベルをあけるために行動すること。

顕彰の具体的解説として、神奈川県薬剤師会によるゲールツ氏の墓参りが挙げられていました。

第五条(最善尽力義務):
患者の利益を際限なく拡大解釈すると、職能の最善を尽くすことができません。「法律的に問題がない」「良心に従っている」が前提になります。

はい。第五条よりも、第二条や第三条のほうが優先です。ついでに言うと、「手に負えないことをやろうとするな」という点も込み。【「できないんだけれど、どうしよう」「他の人にやってもらったら?」「いえ、それはしたくないんだけれど、どうしよう」】というループは、どこに問題があるのかといえば、なんでも自分で抱え込んだままにする点ですよね。

第六条(医薬品の安全性等の確保):
有効性と安全性を担保するために、体内動態の予測、必要なデータ収集、計算や想像力で危険を回避する方策を個別につくりだす。高度な能力と訓練、準備が必要。

個別につくりだす。患者個別。そして、薬剤師個別。特に強調したいのは、「想像力」と「準備」。

第七条(地域医療への貢献):
地域医療が向上しそうであれば推進。崩壊しそうであれば反対。どちらにしても、問題を把握し意見を伝えることから始まります。

ここの解説として、TPPに触れていました。

第八条(職能間の協調):
「他の関係職種」といわれて、医師をはじめとした医療関係者や介護関係者しか思い浮かばないなら、視野が狭くなっている。

ここは、同人誌の原文では「大統領とコラボしたっていいんだ」と付け加えてあります。講習会の解説では、行政やNPOくらいまでの範囲に絞っていましたが、まだまだ地域医療の範囲です(県薬の講習だからそれでいいという意見は無視)。

第九条(秘密の保持):
守秘義務は法律。

法律なのに、第九条。つまり、それだけ、「正当な理由なくもらさない」の「正当な理由」が珍しくない業務であるということ。薬局店頭に、個人情報の取り扱いに関する文面が掲示してあると思いますが、「使用する場合があります」という内容の範囲の広いこと広いこと。後半の演者には、この部分を踏まえた上で、「プライバシーの問題」を語ってほしかったのですが…。

第十条(品位・信用等の維持):
「品位」とは、落ち着いた態度や節度、言葉遣い、他者や周囲への気配り、遠慮、謙虚さなどの内面に対する評価。「信用」とは、約束を守ることと結果の積み重ねに対する評価。濫用を助長する行為の例、ネット通販

この解釈で第十条を(それなりに)実行できれば、後半の演者が「患者が望む薬剤師の行動」として挙げていた点の大半が達成可能。

補足すると、ここで「ネット通販」と挙げたのは2009年春先あたりの話なので、技術やモラルの進歩で将来的に「濫用を助長する例としては相応しくない」ということになる可能性もあります。

  ☆

こういった条文の内容について、実際に学生さんが実務実習に行くとどういう順番で体感するかというと、

まず、第十条から。服装の乱れだのなんだのとチェックされます。

で、第九条のことを言われて、帰りの電車でうかつなことを言うなとかツイッターでつぶやくなとか。

検品ですよと第八条を学び、在宅ですよと第七条を体験し、処方箋監査で第六条、スタッフさんとのミーティングで第五条、研修会に行って第四条。

第一条から第三条については、けっこう、あとまわし。

二十歳こえてるし、大学で学んでいるよね、という気持ちで対応してしまいがちですが、第一条から第三条までを前提にしてはじめて他の条文が活きるので、「前提をしっかり踏まえているのか」という確認なしに実習をすすめる指導者がいたら、かなり怖いです。

「倫理」を教えるぞ、というと、第一条から話すのに、

実際の実習内容は、第十条から教えるところに、なにか深刻な乖離があるのかも…。

そんなことをちらっと考えた講習でした。

※注:講習の後、五時から先はへべれけでしたので、内容が本当にこういうものだったのかどうかと詰問された場合、そうですと自信を持って答えることができませんのであしからず。

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