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第7回自殺・うつ病等対策PT資料。なんか凄い予測。

今回は、「第7回自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム 資料」の一部を流し読み。

  ☆

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000sh9m-att/2r9852000000shcq.pdf

『自殺・うつ対策の経済的便益(自殺・うつによる社会的損失)の推計の概要』
(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部金子能宏氏・佐藤格氏)

A.自殺やうつ病がなくなった場合、経済的便益の推計額は単年で約2兆7千億円
(2009年の例)

◆単年の推計額は、その年に自殺で亡くなった方が亡くなられずに働き続けた場合に得ることが出来る生涯所得の推計額(①)と、うつ病によってその年に必要となる失業給付・医療給付等の減少額等(②から⑥)の合計

①71.0%
自殺ゼロになることによる稼働所得の増加(1兆9028億円)

②1.7%
うつ病による自殺と休業がなくなることによる労災補償給付(労災年金を含む)の減少(456億円)

③4.1%
うつ病による休業がなくなることによる賃金所得の増加(1094億円)

④0.7%
うつ病がきっかけとなって失業することがなくなることによる求職者給付の減少(187億円)

⑤11.4%
うつ病がきっかけとなって生活保護を受給することがなくなることによる給付の減少(3046億円)

⑥11.1%
うつ病なくなることによる医療費の減少(国民医療費ベース)(2971億円)


注)医療費削減額は国民医療費の精神疾患医療費総額(男女計)のうち、生活保護医療扶助の重複を除く額


B.自殺やうつ病がなくなった場合、2010年でのGDP引き上げ効果は約1兆7千億円

ケース1:現実の状態。

ケース2:2010年でのGDP引き上げ効果は6860億円
1998年以後の自殺者数(約3万1千人)が、1998年以後も、1997年以前の自殺者数(約2万2千人)と同程度の水準で推移していたと仮定

ケース3:2010年でのGDP引き上げ効果は1兆6570億円
約3万1千人で推移している自殺者数が、2010年以降、ゼロになると仮定

ケース4:2010年でのGDP引き上げ効果は2020億円
約3万1千人で推移している自殺者数が、2010年以降、
1997年以前の自殺者数(約2万2千人)と同程度の水準で推移すると仮定

左記(A)の単年の推計による、②、④~⑥はこの推計には含まれない。

  ☆

という表です。文字起こしする際に、いろいろ付け足しましたので、原本を参照してください。

なんだか夢のような話が詰まった、妄想の宝石箱といった趣の資料がでてきたわけですが、この資料をつくるのにいくらかかったのかを考えると、「そのお金で生活苦の漫画家さんやアニメ制作関係者を救ってあげたら、どれだけうつが減るか…」と嘆きたくなります。創作物は世の中を明るくするんですよ。創作者本人を暗くしてどーするんですか。

今回の資料は、「経済へ与える影響」の資料のようなのですが、大前提に、

『もしも、世の中から自殺とうつ病がなくなったら』

という、ドラえもんの「もしもボックス」で実現しろと言いたくなることを持ってきている時点で、どうしたものか、困りもの。

で、自殺がゼロになると、「自殺によって失われるはずだった労働が失われずに済み、そのぶんの所得が得られるのでGDPが1.7兆円ほど増えるはず」というネタを展開されるんですが…。

この資料の本編部分の「書き方」にトリックがあって…

『自殺予防によって、自殺でなくなられた方がなくなられることなく働くことができると仮定すれば、自殺でなくなられた方の人数だけより多くの方が労働市場に参加することになる。』

という妄想を繰り広げているのですけれど…

逆じゃないのかなー。

『自殺予防によって、自殺でなくなられた方がなくなられることなく働くことができないと仮定すれば、自殺でなくなられた方の人数だけより多くの方が労働市場に参加しないことになる。』

・・・みたいなー。

「労働可能人口は増えるけれど、就業人口が増えるわけじゃない」、という結論に、なんでならないんでしょうか。

自殺の原因はいろいろあれど、「経済的困窮」っていうのが、多くを占めているわけですよね。現在進行形で「働けない理由があるから経済的に困窮している」ことが前提なら、基本的には、「なくなられることがなくても、働くことは当面、できない」という認識から始まるのでは?

  ☆

労働市場の現実を反映した推計の手順
労働市場には、正規雇用者で働く場合、非正規雇用者で働く場合、その他の就業形態(自営業等)で働く場合がある。このため、なくなられずに働くことができると仮定した人数を、「労働力調査」にある正規雇用者の割合、非正規雇用者の割合、その他(自営業者等)の割合で案分し、就業形態別に「推計の考え方」で示した方法で求めた生涯所得にかけあわせて(次のページの青い囲みの手順)、合計することにより、2009年でみた社会全体の生涯所得(の期待値)を推計する (本編6ページより抜粋)

  ☆

すでに埋まっている席には、座っている人をどかさないと、座れない」ということが、完全に無視されているよーな気がするんですけれど・・・。

『中小企業の社長さんが、資金繰りに詰まって会社倒産、経済的困窮を原因とした自殺に追い込まれる』という事態が起こったと仮定して、その自殺を防いだら、社長さんは「確実に」再就職や再起業ができるのかどうか、将来的に借金返済できるのか、という話。

経済基盤の再構築がスイスイできるのなら、最初から、経済的困窮による自殺なんて考えませんよね。

たとえ自殺を防いでも、失った会社は戻ってきません。

新規事業を始める以外の手段では、「就職活動」が待っています。新卒の大学生でも苦労している状態なのはご存じのとおり。この統計の「前提条件」となっている、「スイスイ再就職できちゃううえに、今就職している人たちがくびにならない社会」って、日本のどこかに存在しているのでしょうか。

要するに、「なくなられずに働くことができる」という部分が、それほどカンタンなことではないのに、すごくあっさりと、「それが普通でしょ?」というノリで書かれている点が、巧妙なトリック。

  ☆

「職がない、働けない、だからお金がない、借金をした、返せないから膨らんだ、困る、困り果てる、必ずしも国が助けてくれるわけではない、結果として自殺を選ぶ」という流れの中で、「自殺を食い止めても借金は減らないし、職も見つからないのだけれど、『なくなられずにいると働けるのですか?』」という問いかけに対する答はありません。

ただ、「キミが自殺しなければ、あるいは自殺したくなるほどのうつにならなければ、国のGDPが上昇して、キミに使うはずの税金も少なくなって、国の【経済的便益】が大きくなって、それはとてもいいことなんだ」と、ありえない結果を示された上に、「その素敵な結果になっていない要因が自殺者やうつの人である」という、かなり酷いことを言われるだけ。というか、この資料は、そういうことを言っているわけですが。

この論法は、大変危険です。

『きみが●●しなければ、国のGDPが上昇して、キミに使うはずの税金も少なくなって、国の【経済的便益】が大きくなって、それはとてもいいことなんだ』

という話の「●●」には、ほとんどの状況が当てはまります。

「きみが引き籠らなければ」とか「きみが専業主婦をやめれば」とか「きみが高校・大学に行かなければ」とか「高齢者も働けば」とか「入院患者をさっさと退院させれば」とか、

ようするに、「現在仕事をしていない人が仕事をするようになれば、(「平均的就業モデル」にあわせるから、)必ずGDPは上昇し、仕事をしている分だけ社会保障費が抑制できる」という、驚きの結論。こういう資料が厚労省のマジメな検討会で「マトモな資料」として扱われるのでしょうかね・・・。

「【厚労省の考える夢の中の日本におけるGDP】を引き下げ、【厚労省の考える夢の中の日本における社会保障費】を引き上げている原因」を、今回は「自殺者・うつ患者」にスポットライトをあててつくりだしたわけですが・・・、これ、「妄想上のマイナス原因」だから、非難対象にならないんですよ。そのへんが、また、ポイントで・・・

「妄想上、お前が諸悪の根源だ。現実がそうならないように、お前を助けるための対策を私たちが行う。対策の周知に要するカネをよこせ」

と言われるわけですが、

自分は悪くないのに悪いように言われているけれど、それは妄想上の話だから名誉棄損で訴えることもできず、しかも自分たちのためだと言いながら、自分たちとは無関係なところで、知らない人たちが、自分たちに回ったかもしれないお金を懐に入れている・・・

という、誰がされても泣きそうになることを、国が率先してやっちゃって、いいんですかね。(あ、まだやってないのかな。どうなんでしょ)

  ☆

この資料、「実現できないことを実現できたら2兆円近く無駄が省けますから、実現できないことを実現するための検討のために、目先の60億円(予算請求額)くらい出せますよね?」と言うために使われそうなんですよね~・・・。

60億円っていったら、2000人に年間300万円ほど渡せる額ですが・・・、

以下に「予算説明」のコピーを載せておきます。

  ☆

第9 暮らしの安心確保
1 自殺・うつ病対策の推進 60億円(36億円)


(1)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(訪問による支援)体制の確立(新規) 16億円

 障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、未治療の者、治療を中断している重症の患者などに対し、アウトリーチ(訪問支援)により、医療・保健・福祉サービスを包括的に提供し、丁寧な支援を行うため、多職種チームによる訪問活動やこれらに従事する者への研修等を実施する。

(2)認知行動療法の普及の推進 98百万円

 うつ病の治療において有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を拡充する。
 ※認知行動療法:うつ病になりやすい考え方の偏りを、面接を通じて修正していく療法。

(3)地域での効果的な自殺対策の推進と民間団体の取組支援 4.2億円(3.5億円)

 都道府県・指定都市に設置されている「地域自殺予防情報センター」における専門相談の実施のほか、関係機関のネットワーク化等により、うつ病対策、依存症対策等の精神保健的な取組を行うとともに、地域の保健所と職域の産業医、産業保健師等との連携の強化による自殺対策の向上を図る。また、自殺未遂者や自死遺族等へのケアに当たる人材を育成するための研修を行う。さらに、先進的かつ効果的な自殺対策を行っている民間団体に対し支援を行う。

(4)自殺予防に向けた相談体制の充実と人材育成 36億円(31億円)

 うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医、小児科医、ケースワーカーなどの地域で活動する者に対するうつ病の基礎知識、診断、治療等に関する研修や地域におけるメンタルヘルスを担う従事者に対する精神保健等に関する研修を行うこと等により、地域における各種相談機関と精神保健医療体制の連携強化を図る。
 また、職場におけるメンタルヘルス対策を促進するため、メンタルヘルスに関する総合相談や事業場に対する支援体制の充実、メンタルヘルスに対応できる人材育成のための研修の拡充等を行う。

(5)うつ病等の精神疾患に関する国民の正しい理解の促進 75百万円(81百万円)

 自殺との関連が強いとされるうつ病等の精神疾患に関し、ホームページを通じ広く国民各層への普及啓発を行う。

(6)自殺予防総合対策センターにおける情報提供・調査研究等の推進 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター運営費交付金(40億円)の内数

 総合的な自殺対策を実施するため、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターに設置されている自殺予防総合対策センターにおいて、国内外の情報収集、インターネットによる情報提供、関係団体等との連絡調整を行うとともに、医療現場でパーソナリティー障害に対応する医師や地域におけるメンタルヘルスを担う心理職等に対する専門的な研修等及び自殺の実態を解明するための調査を行う。

第10 各種施策の推進
9 薬物乱用・依存症対策の推進

(2)薬物等の依存症対策の推進 87百万円(89百万円)

 地域における薬物・アルコール依存症対策を推進するため、「依存症対策推進計画」を策定し、その計画に基づいた依存症対策事業を実施するとともに、依存症者の社会復帰支援を強化するため、関係者の資質向上を図る

  ☆

てなわけで、予算は「研修」と「広報」に吸い取られてしまうわけですよ。

ホームページ中心に広報するのに7500万円も必要だと言い張る時点で、天下り団体への援助のにおいがきつすぎて卒倒しそうになります。

実効性のありそうな先進的かつ効果的な自殺対策を行っている民間団体に対し支援することへの予算額は、研修とセットで4.2億円。研修主体の人材育成が36億円。

「効果があることを現在進行形で行っている」ところへは金を回さず、「効果が劣る対策を教育する」ための金は十倍使っても良いとする・・・ということですかね。

良い取り組みは、おおむね、行政が介入しなくても、広まるんですけれどねー。

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