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内服薬処方せん記載。アンケートで遊ぶ。

内服処方せん記載の在り方検討会」に関しての流れをテキトーにまとめます。

前提。昭和51年から三十年以上『内服薬は、一日量で記載する』と療養担当規則で定まっている。これが基本ルール(だと、検討会の前身の研究会の人たちは主張してました)。

考察。「療養担当規則を大幅に変える」という全体に利害が及ぶ話なのに、ごく一部のアンケートを根拠にしている。→ 検討会がとったアンケートの結果検証がなんかウサンクサイ。

  ☆

『厚生労働科学研究費補助金 医療安全・医療技術評価総合研究事業 処方せんの記載方法に関する医療安全対策の検討 平成19年度 総括研究報告書』の、『処方せん記載を変更するとした場合に付随して発生する各種問題や課題の調査及び方策 分担研究者 楠岡 英雄 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター院長』より抜粋

①保険医及び保険医療機関療養担当規則現行では処方せんの記載要領として保険局の通知(診療報酬請求書等の記載要領等について:昭和51 年8 月7 日:保険発82 号)により以下のように定められている。

「処方」欄について
投薬すべき医薬品名、分量、用法及び用量を記載し、余白がある場合には、斜線等により余白である旨を表示すること。

(1)医薬品名は、原則として薬価基準に記載されている名称を記載することとするが、一般名による記載でも差し支えないこと。
なお、当該医薬品が、薬価基準上、2 以上の規格単位がある場合には、当該規格単位をも記載すること。

また、保険医療機関と保険薬局との間で約束されたいわゆる約束処方による医薬品名の省略、記号等による記載は認められないものであること。

(2)分量は、内服薬については1 日分量、内服用滴剤、注射薬及び外用薬については投与総量、屯服薬については1 回分量を記載すること。

(3)用法及び用量は、1 回当たりの服用(使用)量、1 日当たり服用(使用)回数及び服用(使用)時点(毎食後、毎食前、就寝前、疼痛時、○○時間毎等)、投与日数(回数)並びに服用(使用)に際しての留意事項等を記載すること。

従って、本研究班が提唱する標準案を実施するに際しては、当該通知との齟齬が問題となる。

  ☆

・・・と、まあ、見ての通り。

現在の通達では、

「1日分量と、1回分量(使用量)の、両方を書く」のが、正しいのです

なので、当該通知との「齟齬」というのは、「1回量だけしか書かない」という主張の場合にだけ、生じます。両方書けば、齟齬は全くありません。

「1回量しか書かない」というのは、情報を一つ減らすということですから、「医療安全」の面では「安全性が下がる」ということになります。

「1回量を書けば、正確に伝わる」という主張ならば、「1日量と1回量の両方を書けば、もっと正確に伝わる」はずなので、「1日量を書かない」ことは、彼らの主張(正確に伝えることが重要である)に反します。

ようするに、「1回量限定表記」を主張する人は、自己矛盾しているんです、最初から。

ここを踏まえないと、「1回量限定表記」議論が迷走していることをいくら説明しても、偉い人にはわかってもらえません。

で、ウサンクサイと断じたアンケート結果なんですが・・・

  ☆

診療所・歯科診療所・薬局における標準案への評価
平成19年度総括研究報告書より。

☆診療所91 歯科診療所100 薬局100

☆回答率 診療所68% 歯科診療所32% 薬局81%

☆実質 61.88診療所 32歯科診療所 81薬局

問 標準案記載ルール(内服薬)についてどのように思われますか?
            診療所 歯科診療所 薬局
(1)妥当である    19.7%   58.1%    5.0%
(2)ほぼ妥当である 24.6%   29.0%    20.0%
(3)妥当ではない   31.1%   9.7%     58.8%
(4)その他      24.6%   3.2%     16.2%

問 標準案記載ルール(内服散剤、内服液剤)についてどのように思われますか?

(1)妥当である     38.7%  54.7%  17.3%
(2)ほぼ妥当である  21.0%  32.3%  21.0%
(3)妥当ではない    22.6%  6.5%   44.4%
(4)その他        17.7%  6.5%  17.3%

問 標準案記載ルール(坐薬等)についてどのように思われますか?

(1)妥当である     50.8%  54.8%  49.4%
(2)ほぼ妥当である  23.8%  29.0%  29.6%
(3)妥当ではない    14.3%  9.7%  16.0%
(4)その他        11.1%  6.5%  5.0%

問 標準案記載ルール(外用液、軟膏等)についてどのように思われますか?

(1)妥当である     43.6%  54.8%  46.9%
(2)ほぼ妥当である  30.6%  25.8%  28.4%
(3)妥当ではない    16.1%  12.9%  19.8%
(4)その他        9.7%   6.5%   4.9%

問 処方せんの記載方法が標準案に統一された場合の問題点についてお答え下さい(複数回答可)

(1)過渡期の対応をどのようにとるかが問題である
    34.5% 39.5% 35.5%
(2)コンピュータシステムの対応が必要である
    31.0% 34.2% 26.6%
(3)コンピュータシステムの変更に費用がかかるのは困る
    19.0% 13.2% 16.8%
(4)標準案は実施すべきではない
    9.5% 5.2% 10.3%
(5)その他
    6.0% 7.9% 10.8%

  ☆

この検討会が「現場に支持されているんだ!」と主張する根拠として出てきたのが、上記のアンケート結果(☆部分は筆者補足)です。(この前の年もやってます)

見てわかるとおり、内服薬処方せん記載の変更に関して、支持しているのは、薬局においては5%のみ。「ほぼ」を含めても25%です。内閣支持率で言えば、もうコアなファン以外からは支持されていないということです

薬局側の明確な不支持である「妥当ではない」が58.8%。

一方で、支持しているのは歯科医師で、87.1%の歯科医師が妥当だとしています

この支持率は、異常です。

って、言い切ってしまいます。なにしろ・・・他の製剤への回答と比較したときに、「妥当」の数でも、「妥当」と「ほぼ妥当」を加えた数でも、「内服薬」が最も支持されているのです。

歯科医師の考えでは、内服の「妥当」が58.1%あるのに、それ以外は54.7%,54.8%,54.8%・・・横並び。

医師では、内服以外への回答において、「妥当」「ほぼ妥当」が70%以上なのに対して、内服だけは45.3%どまりです。

つまり、医師と薬剤師の両方が妥当だと判断しなかった項目について、歯科医師だけ、なぜか、妥当だと判断したようなのです。

まあ、アンケート回答率でわかるとおり、医師約62人 歯科医師32人 薬剤師81人(単位が「人」とは限らないのがコワイんですが・・・)の中での話。

そもそもの「興味」がないんですよ。だって、かかわったら、どうなるか、賢い人なら、わかるもん。

このアンケートの打診を受けたら・・・、少なくとも「妥当」と言い切りたい人は必ず参加します。「妥当」と言いたくない場合は、参加することも棄権することもできます。

歯科医師68人が参加しなかったというエピソードは、研究考察で触れていないよーな気がしますけど・・・。まあいいや。

「錠剤・カプセル剤」の項目の%を人数に換算してみます。(なんか%で計算すると小数点以下になるのが不思議・・・)

妥当:医師約12人 歯科医師約19人 薬剤師約4人

ほぼ:医師約15人 歯科医師約9人 薬剤師約16人

ダメ:医師約19人 歯科医師約3人 薬剤師約48人

他だ:医師約15人 歯科医師約1人 薬剤師約13人

ということですよね。

全体を約174人(ひとり減ってる~☆)として合計すると、

妥当:35人 約20%

ほぼ:40人 約23%

ダメ:70人 約40%

他だ:29人 約16%

というわけで、「内服薬に関しては、議論が分かれる」とはいえますけれど、推進派といえる「妥当」だけで考えると、支持されていないのも分かるはず。

なんで、このアンケートから、「1回量処方がいいんじゃい!」という結論に至るのか、全くわかりません。

アンケートには、「理由」を書く欄もありました。

でも、

妥当だとする理由は、公表されていません。

妥当でないという理由も、公表されていません。

「その他」の意見も、公表されていません。

んでもって・・・

m3.comのインタビュー(2009年7月10日)に、研究班の土屋さん(東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長。日薬副会長。医療の質・安全学会理事)は、こう答えているようです。(「m3 土屋文人 処方せん」でググるとなんとなく見つかります)

  ☆

聞き手: ――研究班のアンケートでは、標準案に対して、どのような意見が出たのでしょうか。

土屋さん: 「錠剤、カプセル剤」については、半数以上が「妥当である」「ほぼ妥当である」と回答しています。「妥当でない」と回答した人も含めて、移行に当たって関係者にいかに周知徹底するかという過渡期に対する懸念あるいは、コンピュータシステムの変更が必要、システム変更の費用負担はたまらないなどの意見が出されました。

(引用終わり)

  ☆

確かに、「バラバラに%を算出して」「歯科医師を含めると」、半数以上ですね。

(※これ、「数量ベース」の記事で外用バカ計算方法をでっちあげたときと同じ計算です)

歯科医師以外は、半数以下、薬剤師は25%ですけど。

実際の人数で考えたら、半数いませんけど。

そして「「妥当でない」と回答した人も含めて」と言っている部分ですけど・・・、

処方せんの記載方法が標準案に統一された場合の問題点についてお答え下さい(複数回答可)

という問いなんですよ、それ。「錠剤・カプセル剤」について「妥当でない」と答えたかどうかなんて無関係に回答させる設問なんです、これ。だから、「『錠剤・カプセル剤』についての設問で『妥当でない』と回答した人が含まれているかどうかは、可能性はあるけれど、わからない」んですよ。

で、土屋さんが言っている「意見が出されました」というのは、あらかじめ設問に書いてあるもので、しかも複数選択可能なもの

意見が「出された」のではなく、明らかに、設問で、そう誘導しているじゃないですか

それを、「そういう意見が自主的に出てきた」かのように言っちゃえるわけです。

「手を汚さない捏造」にもほどがある、と感じますけどね。薬剤師倫理規定第十条的には、もう薬剤師の信用低下にものすごく貢献している感じ。(まあ、筆者も信用低下の片棒の隅っこあたりを担いでいる気がするわけですが・・・もごもご)

更に言えば・・・このアンケート・・・

「仮定に基づく問題点について想像する」タイプの質問に、「標準案は実施すべきではない」という、「仮定を否定する項目」があるのは、明らかにおかしいですよね。

「複数回答可能」なのに、医師、歯科医師、薬剤師の回答率の全てで、(1)から(5)まで全部足したら100%っていうことがどーでもよくなるくらいに、「仮定を否定する項目」については、アンケートの作り方を間違えているとしか言いようがない設問なんです。

あ、どーでもよくないか。100%って。

「総回答数に対する割合」とは書いてありませんから。回答者全員の数で、項目を選択した人の数を割って、%化したものが表示されているはずなので、「複数回答可能」な場合、どう考えても、全ての項目の数値を足したら100%になるなどということは、奇跡でしかありません。で、その奇跡が、医師、歯科医師、薬剤師と、三回連続で起こっているのが、このアンケート結果です。見たら驚きますよね。

でもご安心を。同報告書の土屋さんの報告では、(1)診療所63%、歯科診療所47%、薬局89%、(2)診療所56%、歯科診療所41%、薬局67%、(3)診療所34%、歯科診療所16%、薬局42%、(4)診療所17%、歯科診療所6%、薬局26%、と書いてあります。どうやら、書いていないけれど「総回答数に対する割合」が「結果」として出ていたようです。(下記参照)

  ☆

(4) 処方せんの記載方法が標準案に統一された場合の問題点について

 処方せんの記載方法が標準案に統一された場合の問題点については、医師、歯科医師、薬剤師とも

「過渡期の対応をどのようにとるかが問題である(診療所63%、歯科診療所47%、薬局89%)」が最も多く、

次いで「コンピュータシステムの対応が必要である(診療所56%、歯科診療所41%、薬局67%)」、

「コンピュータシステムの変更に費用がかかるのは困る(診療所34%、歯科診療所16%、薬局42%)」という順番で一致していた。

また、「標準案は実施すべきではない」としたのは、診療所17%、歯科診療所6%、薬局26%であり、個別の質問に対して妥当ではないとする意見に比べると低率であった。

  ☆

はい、赤字のところに注目。

この項目は、「設問の前提の否定を設問内で行う」項目です。

通常のアンケートでは存在しない(ってゆーか、存在しちゃいけない)項目です。

従って、この項目に賛同するという行為は、「ひっかけ問題にひっかかった」か「てへっ。なにも考えなかったっす!」か「とにかく否定したくて仕方がない」か、そのあたり。

そのあたりに該当しない回答者(ふつーの人)は、この項目に回答しません

しかも、巧妙に、「全体の否定」を肯定するかどうかという設問になっていますから、「内服薬は妥当じゃないけれど、他は妥当orほぼ妥当だよね」みたいな考えの回答者は「ほぼ妥当」と回答したいわけです。(そんな選択肢は存在しませんが

「個別の質問に対して妥当ではないとする意見に比べると低率」になるのは当然です。

そうなるような設問にしているのですから。

・・・にもかかわらず、「低率であったのだから、自分たちの主張は正しいでしょ?」という結論に持ち込んでいるのですよねー。

なんか、ずるーい。

このアンケート結果に、誰も疑問を抱かないっていうのが、すごく不思議です。

このアンケート結果を踏まえて「医療安全」を語るだなんて、恐ろしくて、筆者にはできません。

アンケートをとった歯科医師・医師・薬剤師のうちわけをみたら、35人くらいが東京医科歯科大学のOBなど、研究会委員の関係者ばかりだった・・・みたいなカラクリだったら、と妄想すると・・・。こわいこわい。(注:陰謀論なので賢明な読者の方は本気にしないように。本気にしちゃダメですからねっ☆)

ちなみに、この中学生でも作れないような特別なアンケートに、厚生労働科学研究費(税金)がいくら使われたのかというと・・・。まあ、厚生労働省から資料からテキトーに引っ張っておきますので、想像してみてくださいな。(→おまけ参照)

というわけで、今回は、アンケート研究がいかに美しくないか・・・じゃない、百万円単位でお金をかけて、統計学の先生に怒られちゃうような何かを作って、国家を動かしちゃうなんてスゴイナーという、実に興味深い童話(これは夢。きっと物語の世界の出来事ですよ)をお送りしました。

日薬雑誌に連載されていた高橋信さんの統計学の記事を読み返さないとね☆

  ☆

(おまけ)

V.公募研究事業の概要等
10.地域医療基盤開発推進研究事業(仮称)

<事業概要>
労働集約型サービスである医療サービスの分野は、人口の少子・高齢化において、医療ニーズの多様化・高度化に適切に対応するため、より一層の省力化と効率化した医療提供体制の構築と良質な医療サービスの提供、また、医学・医療技術や情報通信技術の進歩等を活用し、時代の要請に応じた効率的な医療システムを構築することにより、豊かで安心できる国民生活の実現が求められている。

このため、本研究事業は、良質な医療を合理的・効率的に提供する観点から、既存医療システム等の評価研究、医療安全体制確保に関する研究、根拠に基づく医療に関する研究等を支援し、より質の高い効率的な医療サービスの提供に資することを目的としている。

<新規課題採択方針>

課題採択に当たっては、平成15年8月の「医療提供体制の改革のビジョン(厚生労働省)」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/04/h0430-3a.htmlに示された医療提供体制の将来像のイメージの実現に資するような研究及び社会保障審議会医療部会における「医療提供体制に関する意見中間まとめ」(http://www.mhlw.go/jp/singi/2005/08/s0801-2b.htmlにおいて個別論点となっている研究課題を優先的に採択する。

それぞれの公募研究課題において特に優先して採択する研究等がある場合には、該当する公募研究課題のところに示している。

研究費の規模:1課題当たり2,000千円~20,000千円程度(1年当たりの研究費)

研究期間:1~2年

[4] 医療現場の安全確保のための研究

(ア) 医療の質と安全性の向上に関する研究

イ)処方せんの標準的な記載方法の普及に関する研究 (20311601)

(留意点)
処方せんの標準的な記載方法についての検討を行うとともに、モデル的な実施を行い、処方せんの標準的な記載方法の導入に向けた提言を行う研究を優先して採択する。

  ☆

公募」→日薬が周知した形跡なし。

「モデル的な実施を行い」→やってない。

アンケートをとって、学会発表すれば、論文化しなくても、少なくとも200万円使えるようです。やる気のある人、チャレンジ☆

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