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明細書の発行義務について。

四月。「全員への」レセプト並み明細書発行義務が生じます。(レセコン次第ですけど)

高機能レセコンを持っている病院・診療所・薬局では、やたらと細かい明細書を、全員に、無料で発行するわけです。

希望者だけとかじゃないですよ。全員です。

もともと希望者には(一応開示希望理由を訊いてから)開示していましたから、「全員でなければ駄目」という主張は・・・わけがわかりません。中医協の議論を読んでいても、なんだか謎なんですよね。

嘉山委員は明確に「全員に」という部分に反対していましたし、診療側は現状の「希望者には明細を出す」方式の継続でいくという意見をみなさん出していました。「明細書発行自体は賛成だけれど、無料全員発行を強制するのは反対」というのが、診療側のみなさんの意見で、その二日後に、一転して、賛成した、と。(何があったのか知りませんが)

・・・あ、間違えました。薬剤師代表の三浦委員は、激論していた間は、何も言っていません。

最終決着のときに、こう言っただけです。

○三浦委員
 賛同する。もともと薬からの被害である副作用等がないように人を守るのが薬剤師の役目である。
 そのような意味では勝村委員と同じスタンスである。問題は明細書のわかりにくさであり、今後どのようにしたら患者さんが明細書を理解しやすくなるのかを検討していく必要がある。


・・・って、三浦委員、「もともと」とか、最初から賛成していたかのような口ぶりですよ

しかも、二月の段階で「今後どのようにしたら患者さんが明細書を理解しやすくなるのかを検討していく必要がある」と言っておきながら、三月末までに何の検討もしない、何の提言もしないという、現場を無視した行動をしているわけです。(困ったもんです)

診療側が賛同したため・・・、

支払い側は、「診療側が」「全員」に明細書を出すことに賛成だし

厚生労働省側(公益委員)からの提案なので、当然、会長は賛成派ということは・・・

明細書、あっさり決まりました。

個人情報保護法と折り合いをつけるなら、「明細書には個人情報を記載します」と掲示するとか、個人情報の取り扱いについての掲示に使用用途として「明細書」をくわえるとか、考えないといけませんね。

  ☆

あとから「この施策を強硬に主張したのは誰だ」と疑問に思う人のために書いておくなら、

この施策の提案責任者は、中医協の勝村久司委員(連合。患者代表支払い側委員。高校の先生。市民運動家)です。それを強力に後押ししたのが、支払い側の白川委員と、厚生労働省側の遠藤会長(公益委員。その「公益」っぷりは、以前のエントリでも確認したとおり)。んでもって、薬局の明細書発行については、三浦委員に全責任があると思っといてください

  ☆

病院や診療所の明細書については、あちこちで話題になっていそうなので、薬局の明細書の話をします。

薬局の場合、開示されている「医師の処方せん」に基づいて「薬そのもの」を渡し、「薬の情報も紙で渡す」のですから、明細と言われても、これ以上何が知りたいのか、よくわかりません

もう、十年以上、ずーっと、やってますよね。情報提供。

「お薬手帳」というツールでも、希望者には、処方せんから薬の部分を転記(すると同時に全体のチェックを)していますよね。

薬の薬価はネット検索すれば誰でも調べられます。

薬局は調剤点数表を掲示しています。

あと、なにが必要ですか?

うーん・・・。「技術料を、もっと細かく書いてね」ということなのですかねー。

企業のIR情報でも、そこまではやりませんけれどね・・・。

勝村委員が大好きな「スーパーのレシート」で喩えるなら、

「トマトやキュウリの【本当の】値段である仕入れ値と一緒に、【人件費】部分の割り当てが書いてあるレシート」が欲しいということなのでしょうか。

【例】

 トマト 二個 仕入れ値 12円 売価 30円

 キュウリ 一本 仕入れ値 5円 売価 35円

  合計金額 65円

 うち利益額 計48円
  店舗家賃高熱費充当:20円
  レジ部門人件費充当:8円
  管理部門人件費充当:12円
  その他充当:8円

・・・まあ、勝村委員は、こんなレシートが欲しいと?

で、国民全員に、こんなレシートを出してねー、という話ですよね。

それに、三浦委員は賛同した、と。

他の業種は絶対にやらないことを、医療機関にだけ強制するようです。

すごいですね。

  ☆

そういえば・・・

勝村委員は、「汚い部屋に他人が入ればきれいになる」とか「その値段(点数)に実際の行為が見あっているかどうかをみんなで考えるきっかけにしよう」みたいな話をしています。

うーん。

勝村委員は中医協を盛り上げる活発な発言が多いので、議事録好きとしては頑張ってほしいのですが、こと明細書の件になると、思い入れが強すぎて、とんがったヤンチャが出るんですよね・・・。

汚い部屋に大家が入ってきて、大家から見て不要なものを全て捨てる方向で掃除をするのが正しい」とか、

ステーキハウスの値段がお客さんから見て高かったら、団体で値下げ交渉をしにいくのが正しい」とか?

なるほど・・・

高校の先生は、そういうことを生徒に教えるんでしょうか。(注:反語。普通は教えない)

→ 大家さんと店子さんとの信頼関係を破壊し、店子さんが出て行く結末

→ 営業妨害に疲れ果てた店主が店をたたんで出ていく結末

というあたりまでは、想像してほしいのですけれど。

荒れた学校に教育委員会が派遣した武装警官が入ってきて、彼らから見て反抗的な生徒を排除するのが正しい」という理屈が通るのかどうか。

学校の授業料が父兄から見て高かったら、団体で値下げ交渉をしにいくのが正しい」という理屈が、通るのかどうか。

ほんのちょっとだけ、立場を変えて、議論できるといいのですけれどね。

  ☆

仕事内容と報酬額とを、(支払い側と国の都合で決まる、限られた財源の中で)適正であるように決めるのは、勝村委員が所属する中医協です。最終決定は公益裁定になりますから、どう議論しても、最終的には、支払い側と国の意見が通ります。

「その行為(仕事)がどうしてその点数(報酬)なのか」を知っていて、何かを根拠にしてその「行為に見合っている」報酬額に決めたのは、中医協委員です。現場の人間が金額を決めたのではありません。

自分たちで「これで見あっている」と決めたんですよ。自分たちで決めておいて、その当人が「値段に現場の行為が見あっているかを患者さんに考えてもらおう」みたいなことを言ってます。これ、ものすごく無責任です。あなたが決めたものは、「適正」じゃなかったのかと。あなたたちが考える適正と国民が考える適正が異なるなら、国民の考える適正に従う(つまり「自分たちには適正を決める能力がない」と自ら認める)のかと。

ステーキハウスで「一皿5000円」と決めたオーナーが、団体客と一緒になって「一皿1000円にしろ」と、シェフ(現場)に詰め寄るようなものです。

シェフからしたら、今すぐ辞めて田舎に帰りたくなる話です。

  ☆

保健医療は、全ての値段が国によって決められます。

はじめから、ものすごくクリアな仕組みです。

しかも、報酬の申請を行うと、審査機関(支払い側)が内容を審査する仕組みです

審査が行われ、内容が適切であるから、報酬が支払われます。

【専門家である審査機関が「適切である」として処理した内容を、専門家ではない受益者の目から見たら「不適切である」かもしれないから、受益者自身が、審査機関が審査をする前に、医療機関から無料で明細書をもらい、内容をすべて確認しなければならない】という主張ですよね、勝村委員の言っていることは。

ようするに、審査機関の、専門家の判断が信用できないと。

審査機関は、仕事をしていないと。チェック能力が低すぎると。

審査機関の審査は時間がかかり過ぎると。

審査機関改革をしないとだめだと。

レセプト開示請求ができることを啓蒙しなければならないと。

受益者は、全員、専門家以上の知識と判断力を持たなければならないと。

そういうことを、勝村委員は言っているわけですよね。

・・・それ、全部、支払い側の仕事です。

そういえば、勝村委員が座っている席(支払い側。いわゆる1号側)は、審査機関側の席ですね。

審査機関側にいて議論に出てくるのなら、まず隣に座っている人たちに改革を訴えて、審査機関改革をしてきてほしいですね。

レセプト開示請求の情報が周知されていないというのならば、それは診療側の問題ではないでしょう。支払い側の問題です。

敵の敵は味方だと思い込んで加担してみたら、真の敵?は隣の味方だった」というマンガみたいな展開なんですから、ここは『はっ。俺はなんてバカなことをしていたんだ!』的なシチュエーションからの内部改革パターンがあると、B級映画好きとしては喝采です。

  ☆

あなたのためだから』といって、一方的に、強制的に、ひとりだけ残業させたり、ひとりだけケーキを奪ったりするのは、よくないですよね。

『あなたのためだから』といって、一方的に、強制的に、ひとりだけ居残り練習させたり、ひとりだけ居残り補習を受けさせたりするのは、よくないですよね。

『患者のためだから』『国民のためだから』『あなたのためだから』といって、一方的に、強制的に、医療機関という名の「ひとりだけ」に、無料明細書全員発行を強制するのは、どうでしょうか。

  ☆

  ☆

(おまけ)記事で見る厚生労働省議事録のすごさ。

厚生労働省の議事録引用バージョン(※は筆者ツッコミ)

○勝村委員

 トヨタ記念病院から始まりナショナルセンターで明細書の無料発行を行うようになったが、すべて原則として明細書を発行し不要だと申し出る患者には出していないと思う。また私は、中医協で決める診療の単価を患者や国民に知って欲しいという考えから提案してきた。

 ※トヨタ記念病院の自動会計マシーンは「明細書が必要な方は」ボタンを押して「領収書」とは別に「明細書」をもらう形式。(診療明細書が必要な方は、画面上「診療明細発行」を押してください。診療明細書と領収書が発行されます。)つまり、勝村委員の主張とは正反対の方式のようです。

 ナショナルセンターでの実績について中医協で検証は行っていないが、1回目は多くの人が持ち帰っており、2回目でも少なく見て8割以上が持ち帰っているのではないかと考えられる報道もされている。3~5年前にも今診療側の言われるような懸念は言われていたが、その後実績が積まれて来ており、請求した患者のみに明細書を出すほうがむしろ人手がかかり、原則発行としたほうがコストがかからないという話も聞いている

 ※そんな話は聞いたことがないのですけど。原則発行だと、領収書と明細書の二枚発行ですから、かかりますよ、コスト。

 保険者からレセプト開示を受ける場合には、2から3ヶ月のラグがあり、もらう単位も1ヶ月単位であること、保険者のところに本人がわざわざ行く必要があることなど、医療機関の窓口でもらう場合とは分けて考えるべきであると思う。

 ※タイムラグは保険者(支払い)側のサービスの問題ですし、わざわざ行く必要があるのも保険者の問題です。まずは保険者の対応改善や法律の改正を求めればいいような・・・。

ロハスメディカルの記事引用 バージョン

[勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)]

 ちょっと......、(明細書発行の)イメージなんですけど、僕はまあ......、(明細書を無料で発行する病院として)6~7年前に広くテレビや新聞で報道された「トヨタ記念病院」(愛知県豊田市)というのが初めてこれをやった。

 それを国立の(ナショナル)センターが同じようにやった。それはどういうやり方かというと、「原則、発行します」。「いらない」という人には無理矢理渡さない。

それ(明細書の無料発行)をやって......、まあ、嘉山さん、僕は薬害のこともいろいろ......、薬害も気になっていることは1つなんですが、僕は中医協の委員になったことを受けてですね、患者の皆さんに単価を知ってほしい。中医協が決めている単価を知ってほしい。それが一番。(中略)

  ☆

こーゆーところで比較してみると・・・厚生労働省は、三国志演義的な「議事録」づくりに無駄な時間をかけているのが、よくわかりますよね。言ったことをそのまま書いてもらわないと、議論の流れ(特に会長がどう進行したのか)がわかりません。議事録は中医協の明細書なのですから、お役人が勝手に粉飾しては(面白いけど)ダメでしょう。勝村委員が「患者の皆さんに知ってほしい」と言っている(らしい)のを、「患者や国民に」と書き換えてしまうような議事録ですからねー(しかも傍聴人に録音禁止といってますから、情報公開ってどこにいったんだか・・・)。テープ起こしするだけでいいのにね。

※なお、このブログでは、書き換わっているだろうことは念頭に置きつつ、公開資料がそれしかないので、議事録の表現が実際と異なっていても、わざとそのままにしてツッコミをいれることが多いです。ご了承ください。

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