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『薬剤師倫理規定の注釈』の考察。第九条。

『薬剤師倫理規定の注釈』を読んでいくカテゴリ。今回は、第九条です。

なお、第八条の注釈は、「協調するのは薬剤師同士(+医師)のみ。他は知らない」という考え方でした。

第九条の注釈は、まあ、刑法を引用しているだけなので、あんまりツッコミどころがないのですが・・・。あいかわらず、「公共の利益」を無視した「人権万歳」っぷりを発揮しているようです。

  ☆

第九条(の注釈)

薬剤師は、医療に関わることで患者の個人の秘密を知りうる立場にある。

刑法134条により、薬剤師は「故なくその業務上取り扱いたることに付き、知り得たる人の秘密を漏らしたとき」は秘密漏洩罪に処せられる。

また処方せんや薬歴簿などの取り扱いについても、十分に個人の基本的人権を擁護することに留意しなければならない。

あくまでも、個人の人権の保護、プライバシーの保護は守らなければならない。

  ☆

「注釈」の中の人は、「人権」によほどこだわりがあるんですかね。

「刑法134条により」だけだと「?」かもしれませんから、一応、刑法の第十三章を全部載せておきます。

●第十三章 秘密を侵す罪

(信書開封)
第百三十三条 正当な理由がないのに、封をしてある信書を開けた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

(秘密漏示)
第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 宗教、祈とう祷若しくは祭し祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。

(親告罪)
第百三十五条 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

・・・というわけで、秘密漏洩罪は、信書開封罪よりも軽い罪です。

宛先人の許可なく封筒を開けたら一年以下の懲役。業務で取り扱った秘密を漏らしたら半年以下の懲役。そう、通信の秘密は、とても重要なのです。

「親告罪」ですから、「被害者」が告訴しない限りは、裁判になりません。

患者さんの秘密を同僚に話したとして、その同僚が「それ、守秘義務違反で、秘密漏洩罪だよ」と言っても、そこにはまだ「被害者」が存在しないので、秘密漏洩罪には至っていない、ということでしょうか。(話を聞いた同僚が「被害者」に告げ口すると、告訴される可能性があります)

登録販売者さん=医薬品販売業者さんの場合は、守秘義務がありますね。

法律上は、医療事務さんには、守秘義務はありません。

法律上は、薬学生にも、守秘義務はありません。

つまり、薬学生が実務実習で知りえた秘密を、「被害者」の目の前かつ公共の場でベラベラ話しても、それを罰する法律はありません。「被害者」は泣き寝入りです。

こういうとき、法で裁けないなら、指導薬剤師が実習停止にして裁くしかないと思いますが、大学の先生がすっとんできて「どうか将来のある子ですから、実習停止だけは勘弁してください」とか言いそうなのが嫌ですね。

なお、個人情報保護法の成立は平成15年ごろ(←筆者は調べてないようです)なので、平成13年の文章である「注釈」には出てきません。個人情報保護法を考慮すると、「あらかじめ使用用途を明示しておく」ことで、明示しておいた用途に関しては、個人情報を使用できます。学会発表とか、薬学的管理とか、医師とのディスカッションとか、そういった用途も明示しますので・・・処方せん、薬歴簿については「基本的人権を擁護」と大きく構えなくても問題なし。

【あくまでも、個人の人権の保護、プライバシーの保護は守らなければならない。】

と、何度も「人権」と繰り返されると、困ります。プライバシーが緩やかで世間話をするような薬局は、第二条の「注釈」で書いてあったように、「良心と勇気をもった薬剤師」とかいう人たちに「断固として阻止」されてしまうのでしょうか。前文の「注釈」のように「倫理は法令以前のもので何事にも優先」するというのなら、なにをさしおいてもプライバシー保護の設備を作らなければならないのでしょうか。

「あくまでも」なんていう表現で誤魔化していますが、ようするに、「守秘義務」の根拠となる考え方は、「刑法」による罰則への恐怖だけである、という話なのでしょうか。

倫理が法令以前のものだというならば、法令を前提として、「法令が存在するから守らなければならない」という理屈は、筋が通っていません。法令以前に、どうして守秘義務を守る必要があるのかを示さず、これが第九条の「注釈」であると胸を張られても・・・ねぇ。

薬局内で不正行為・不正請求などを行っていれば、「良心と勇気をもった薬剤師」による、その「秘密」の「内部告発(公共の利益)」があるはずなのですが、「あくまでも」という「注釈」の言葉は、それさえも否定するのでしょうか。

薬剤師倫理規定第九条

薬剤師は、職務上知りえた患者の秘密を、正当な理由なく漏らさない。

・・・ほら、「正当な理由」があれば、いいんですよ、秘密を開示しても。

法律にだって、そう明記されているじゃないですか。

公共の福祉、正当な理由・・・そういった大事なことを無視するのは、酷い話です。

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