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『薬剤師倫理規定の注釈』の考察。第五条。

『薬剤師倫理規定の注釈』を読んでいくカテゴリ。今回は第五条です。

前回の第四条は、

『1.一般市民のため、そして技術の進歩に追い付くため、生涯学習』

『2.先人の業績を顕彰することは【謙虚】である』

『3.後進の育成はボランティア的な生きがいである』

という楽しい注釈でした。

第五条は、注釈がとても短かったので安心していたら、なんだか変な方向に向かうようです。

  ☆

第五条(の注釈)

薬剤師は平成4年の第二次医療法改正で、医師、歯科医師、看護師とともに医療の担い手の一員になった。薬局薬剤師と病院薬剤師は互いにそれぞれの職能人として敬意と理解に努め、薬-薬連携による協力態勢を深めることが必要になってきている。

さらにチーム医療の担い手である医師、歯科医師、看護師と相互に尊敬と理解を深めて協力して、患者の生活の質向上のために、薬剤師としてファーマシューティカル・ケアに最善を尽くすことが義務となる。

  ☆

・・・薬剤師倫理規定第五条の本文も、真っ先に書いておきます。

薬剤師倫理規定第五条

薬剤師は、医療の担い手として、常に同僚及び他の医療関係者と協力し、医療及び保健、福祉の向上に努め、患者の利益のため職能の最善を尽くす。

というわけで。

「薬剤師=法律的な、医療の担い手のひとつ」ではあるのですが、「同僚及び他の医療関係者」と協力するというならば、いわゆるコメディカルも、流通も、メーカーも、行政も、全て含んで「協力」するというのが、一点目。

そのうえで、医療・保健・福祉の向上でガンバれ、という二点目が続いて。

最後に、患者の利益のために職能の範囲内で最善を尽くせ、と結論付け。

薬剤師倫理規定第五条を分割すると・・・

1.薬剤師は、医療の担い手である

2.薬剤師は、常に同僚及び他の医療関係者と協力する

3.薬剤師は、医療及び保健、福祉の向上に努める

4.薬剤師は、患者の利益のため職能の最善を尽くす。

という四つになります。

「注釈」では、法律的な「医療の担い手」同士が協力することしか想定していないようです。

「協力」に関しては、このあとの条文でも第八条にでてきます。

誰かと協力する、という部分は同じで、医療側全体に関しては第五条の守備範囲。

「薬局薬剤師」「病院薬剤師」の両者が協力していないという前提で書いてあるのは気になりますが、まあ、古い文章ですからスルー。

第五条と第八条とでは、アウトプットの方向性が異なり・・・、第五条では「患者の利益」全般に向かっているのですね。

決して、「患者の生活の質向上」なんていうものだけには向かっていません。

この「注釈」、第四条の注釈でも「患者の生活の質向上」というフレーズを使ってきました。

そして、第二条の注釈に続いて「ファーマシューティカル・ケア」というフレーズも。

薬剤師としてファーマシューティカル・ケアに最善を尽くすことが義務となる。】

・・・のだそうです。

「患者の利益」≠「ファーマシューティカル・ケア」です。

「患者の利益」=「患者の生活の質(QoL)」であると定義することで、むりやりファーマシューティカル・ケアの概念と結び付けているのです。

「QoL」なんて、「患者の利益」のごく一部に過ぎません。

『世界を救うために最善を尽くせ』という話が、『白クマを救うために最善を尽くせ』にすり替わっているわけですね。白クマを救っていれば、世界を救った気分になれるように、ファーマシューティカル・ケアを実践していれば、患者の利益になると信じているのでしょう

他にも、いろいろな方法があるはずです。

いろいろな方法があって、その中から「最善」を見つける努力こそが求められているのに、「最善は、常に、ファーマシューティカル・ケア」と決めつけることから始めるのでは、薬剤師倫理規定第五条の考え方から、だいぶ遠いように感じます。

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コメント

ファーマシューティカル・ケアってなんなのかよくわからなくなりました。

投稿: 医師 | 2010年3月22日 (月) 18:43

コメント、ありがとうございます。

「ファーマシューティカル・ケア」は、「薬剤師の行動哲学である」と宣言されていますが、日本薬剤師会や「ファーマシューティカル・コミュニケーション学会」のホームページですら、全く解説されていない概念ですね。「QoL至上主義」なのかな、と思っていますけれど…。もう少し勉強しておきます。

投稿: おばか柊 | 2010年3月23日 (火) 17:22

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