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スポーツファーマシストの基礎知識。「目的」編

スポーツファーマシストの基本的な部分、特に認定関連については前に述べました。

今回は、

「で、スポーツファーマシストっていうけれど、これまで、薬剤師はドーピング問題についてどのくらい関与して、意見発表して、運動選手を守ってきたわけ?」

という、過去の実績部分について考えます。

実績があるからこそ、胸を張って「ドーピング問題のスペシャリストだもん☆」と言えるわけですよね。

そこで、クエスチェンタイム。

2007年、川崎フロンターレ、ドーピング裁定問題』ときいて、わかる方、いますか?

ヒント。「我那覇選手の例の件」。

わかりますよね? スポーツファーマシスト希望なら。

わからないという薬剤師は、スポーツファーマシストになんてならないほうがいいと断言します。しちゃいます。もっと言うと、この事件を知らずに、スポーツファーマシストの資格、とらないでほしいです。

この事件は、日本だけでなく、世界のドーピング問題史上、最大級の事件です。

ことの顛末はググればいいので、かなり省略して書いてみると、

0.事件の前年、横浜FCでの集団ニンニク注射事件があり、『健康なのに点滴することは、ドーピング』であると、Jリーグ内で決めた。同時に、『風邪や下痢などに対する点滴は認める』と確認した。

1.2007年事件当時、Jリーグは、JADA未加入。

2.Jリーグが、川崎フロンターレに所属していた我那覇選手に対するチームドクターの『風邪による発熱に対する緊急処置としての点滴(生理食塩水とビタミンB1のみ)』処置を、ドーピングであるとして、選手に出場停止処分、チームに罰金一千万円を科した。

3.WADA、JADAは「緊急時点滴はドーピングではない」と明言。

4.日本政府は、国際条約上、国内スポーツにおいてWADAの基準を守らせる義務があり、Jリーグ(と上部組織のJFL)に行政指導をしていた。

5.Jリーグの裁定を不服とした選手個人が、名誉回復のため国内裁定を仰ごうとしたら、『(裁定に大金が必要な)CASじゃなきゃダメ。それがルール』と、Jリーグが酷い難癖をつけた。

6.それでもCASに提訴した結果、Jリーグ側が全面敗訴した。

7.JFAは2009年1月にJADAに加盟した。

8.CAS裁定によりJリーグは裁判費用の一部を支払った。出場停止処分への補償、フロンターレの「罰金」一千万円の返還については、Jリーグは行っていない。

というもの。

ワールドカップに出場しようっていう国のプロ機構が、ふだんはWADA基準を無視して活動していたっていう、とても悪い例です。しかも、選手の健康を守るために「アンチ・ドーピング」を行っているのに、選手の健康を守った行為に対して「ドーピングだ」と認定し、CAS裁定が下ってもなお、潔白の相手から得た「罰金」を返さないという、そんな事件です。

最大の問題は『現場の医師が選手の健康を守るためにWADA基準で行った治療を、JADAに加盟していない競技団体が、「内部規定で」「当初の説明とは異なる基準で」ドーピングであると主張し、処分を行った』点です。

これが許されるのなら、誰も選手の健康を守れません。

適切に治療しても、あとづけのルールで恣意的に「ドーピングだ」といわれる可能性が強いのですから。

適切に治療しても、選手に精神的な苦痛を強いて、そのうえ、チームに「罰金」一千万ですから。

そして、身の潔白を証明しようとしたら、とんでもない金額が選手個人の負担となります。

CAS(Court of Arbitration for Sport)裁定にかかった費用は、ちんすこう募金のブルティーダ沖縄FCさんのサイトによると・・・

CAS費用 合計 34,412,268円
内訳:弁護士費用12,009,375円
    申立及び事務経費4,665,173円
    翻訳・通訳等費用17,737,720円

ということです。

三千五百万円。

これを個人負担させるっていう時点で、当時のJリーグのメチャクチャさ加減がわかりますよね?

我那覇選手がCAS裁定を行ったことで、アンチ・ドーピング活動の根幹を揺るがすような事態は、良い方向へと向かいました。深く感謝。

さて、この事件に対して、薬剤師会はなにかしたかというと

なんにもしていません。

目に見える範囲では、本当に、なんにもしていません。

ドーピングの大問題ですよね?

「ドーピングの問題から、選手を守る」なら、ここで動かないはずがありません。

スポーツファーマシスト以前から、薬剤師って、ドーピングに関わってきたのですから。

なんにもしない、何の発言もないって、どういうこと?

※過去の日薬代議員会でも、全く話題になりませんでした

CAS裁定費用のうちいくらかを出してみたり・・・も、せず。

黙りこくったままで、事件が風化するのをじっと待っているという、ドーピングの専門家を養成しようという組織とは思えないへたれっぷりです。

この実績で、「ドーピングのスペシャリストだもん☆」とか言えるのは、恥知らずだけでしょう。

スポーツファーマシスト制度がウソ臭いと思うのは、この辺です。

「国体の実績」も大事です。ええ、とてもとても大事です。でもね、「現場で起きている事件に対して無視を決め込んだ実績」は、無視できません。「組織が個人をいじめたのをみても無視した」のですから。

では、「これまでは恥知らずだった。ごめんなさい。けれど、これからは違うよ!」という姿勢なのかというと、これも、どうも、違うようなんですよね。

スポーツファーマシストの「定義」を読むと、今後も「事件が起きても無視を決め込む」つもりだということがよくわかります。

【スポーツファーマシストの定義】

☆スポーツファーマシストの活動ドーピング防止活動に関する正確な情報・知識を持ち、競技者を含めた一般の人に対しドーピング防止に関する適切な情報を提供することを主な活動とする

・・・よーするに、「予防」のために「事前に」知識を伝達するのが活動であって、「ドーピング全般」の様々な事件・要請には、関与する予定がない、ということです。

『ちゃんと禁止項目については伝えたんだから、守れなかったら全部アンタの責任なんだからね!』とか言う学級委員長的な身分ですね。

情報提供と啓発だけをする存在です。「ダメ。ゼッタイ」と似ています。うっかり「やっちゃった」り「やったと決めつけられたり」した人間には、全く手を差し伸べないのですから

スポーツファーマシストの「目標及び方策」を読めば、勢力拡大以外のなにをやりたいのか、全く分からなくなります。

【スポーツファーマシストの目標及び方策】

薬剤師会とJADAとの協調により、現在の薬剤師会の活動の更なる充実。

薬剤師会とJADAとの協調により、学校薬剤師による認定資格取得を推進。

総合型地域スポーツクラブへの配置を働きかける。

フィットネスクラブ、スポーツジムへの配置を働きかける。

以上。・・・なんですか、この目標は。

『選手の健康を守ること』を目標に活動するんじゃないんですか?

こんな目標を掲げる「スポーツファーマシスト」で、いいんですかね?

みなさん、スポーツファーマシストに認定されたら、この目標に向かって突き進むんですか?

 ☆   ☆   ☆

追記。

サッカーと違って、国際大会であるWBCの優勝選手を抱えるNPB(日本プロ野球組織)は、まだJADA未加盟です。

こちらは逆に、「十数回も点滴しているが、セーフ」という、組織内判定をしています。

「スポーツファーマシスト」が、NPBに、なにか意見表明をするかどうか。四月以降が、楽しみです。

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